ぷかぷか孤島になっちゃった?

睡蓮

第18話 ドワーフと酒

 ダンジョンが出来てからというものドワーフ達の顔がとっても輝いている。鉱物が手に入ってからというものドワーフ達は鍛冶をするための施設をパパっと作り上げ、そこに入り浸っている。


 「ほれ! お前の為に武器を見繕ってやったぞい!」


 そう言って手渡されたのは指輪だった。この指輪結構凄い。魔力を込めるとそこから指に沿って綺麗な青色の三本の大きな鋭い爪が伸びてくる。この爪は変幻自在に伸び縮みし、形だって変えることが出来る。切れ味は言うまでもなく最高だ。あの、マナ変換で手に入れた包丁の切れ味にも耐えるあのまな板が力を入れなくとも切断されてしまうぐらいだ。ホントに凄い!
 多分俺の耳と尻尾をみて猫を想像したからこの武器を作ってくれたのだろう。ありがたやー!


 どうやらアイネやドワーフ幼女達の装備も変わっているみたいだ。ドワーフ幼女達は槌を、アイネは杖を新調してもらったらしい。お陰でみんな10部屋目位までは行けるようになったそうだ。
 ご褒美の量が増えて子供たちもウハウハ、ドワーフ達もより質の高い鉱石を手に入れることが出来てウハウハ。俺もみんなが喜んでくれるので嬉しい。全てがいい方向に向かっている。


 あと、最近リーフィアが俺の傍から離れない。何故かは分からないが前よりも素直になった気がする。


 もう1つビッグニュースがある。マグロの定期的な捕獲が可能になった。マグロは回遊魚なので季節によって捕れないときもあるはずなのだがこの世界では違うらしい。自分の気に入った場所にずっと群れて住み続けるらしい。これは他の魚にも言えることで、1部を除くほとんどの魚はほとんど回遊しないらしい。ほんと謎だ。


 そして運良く精霊達がマグロの群れるポイントを見つけてきたという訳だ。マグロは沖合でしか群れることがなく、また群れる範囲も狭いため存在自体があまり知られてないそうだがそんなことはどうでもいい! よくやった! 精霊達! 君達のお陰でマグロの安定供給が可能になった! 思う存分マナを吸うがいいさ!


 あと、畑で育てていた野菜が収穫可能になった。トマトやナス、きゅうりなどの家庭菜園などでも簡単に作れるものばかりだったが、とても美味しかった。多分マナ変換で交換したものよりも美味しい。直にここのマナを吸って、精霊達に育てられたらそりゃ美味くなるわな。だけどリーフィアはまだ納得のいく味ではないと辛口の意見だった。アイネは何も言わずに貪っていた。


 こんだけ美味い野菜が作れるんだからお米もさぞ美味しいんだろうなぁ。とリーフィアに言ったら「任せなさい!」といってお米の栽培が始まった。収穫は約1週間に1回は行えるらしい。いくらなんでも早過ぎない?   
 というかこの島の約半分が港と農場で埋め尽くされている現状はいいのか?悪いのか?


 そんな充実した日々を過ごしていた最中事件は起こる。


 「酒がァ! 酒がキレちまったァ!」


 ドワーフたちの嘆き声が島中にこだまする。いや、あんたら毎日宴を開いてたからだろうが! そりゃ毎日酒樽を2つも開けてたら一瞬でなくなるわ!


 「頼む! この通りじゃ! 少しでいい! 酒を恵んでくれ!!」


 俺の答えは勿論NOだ。理由は簡単。ドワーフ達に酒を渡すとうるさい。特に夜。神や精霊は睡眠をとる必要などないが、アイネやドワーフ幼女達が最近寝不足気味なのはどう考えてもドワーフ達による酒盛りのせいだ。


 「静かに! 静かに!飲むから! 頼む!」


 「ダメ! 子供達の教育に悪いし、うるさくて夜眠れん!! 飲むなら防音の建物を作ってそこで飲め! その建物が出来るまでは酒は禁止!」


 「わかった! 防音設備のついた建物を建てたら酒を恵んでもらえるんじゃな!?」


 「恵むか恵まないかはダンジョンで決める。あっ、勿論いつものダンジョンじゃねぇぞ。難易度をグッと上げたダンジョンだからな!」


 「任せとけぃ! ワシらも腕っ節には自信があるんじゃ! ダンジョンぐらいお茶の子さいさいじゃ!」 


 よっしゃ、滅茶苦茶難しくしてやろう。俺は早速ダンジョンを作った。構造は最初のダンジョンと同じ。だけど、一部屋目に出てくるモンスターは最初のダンジョンのボス。そこからどんどん難しくなっていく。そんな部屋が50部屋もある。


 クリアはほぼ不可能だろう。ちなみに鉱脈はMPで購入した。5万MPもかかった。まぁ、あの精霊たちの無茶なマナ消費のせいでマナの上限も10万ほど増えたし余裕はあるけどね。


 ドワーフ達は防音対策の施された酒場を1日で作り上げた。流石だな。だけどダンジョンは一部屋目さえも1人では攻略できない有様。結局お酒を飲むのは当分お預けとなり、最初のダンジョンで修行するようになった。
 可哀想なので10部屋分の鉱石でエールと呼ばれるビールみたいな酒をひと樽出してやることにした。これなら度数も低く、次の日に響くこともないだろうというディアンヌの提案だった。


 俺が「ビールじゃダメなの?」と聞くとディアンヌは「ビールはこの世界ではまだ生み出されていません。なのでビールを出してしまうとドワーフ達はビールにどハマりし、通常の業務を疎かにしてしまうかも知れません。なのでエールなのです。」って言ってた。


 でもその心配はいらなかった。マナ変換で出るエールが美味しかったのか、ドワーフ達はダンジョンで出る鉱石の精錬などをほっぽり出してダンジョンに入り浸ってしまった。
 俺が「働かざるもの食うべからず」という言葉で脅しをかけると元に戻った。これで一件落着かと思われたその時。


 カラーンカラーン! おめでとうございます! 2等です! 2等は施設:酒蔵です! どうです? 嬉しいでしょう? そりゃあ嬉しいに決まってますよね? あっ、ドワーフの酒場の横に設置しておきますね! 


 ガラポンがやらかしやがった!!挙句の果てにドワーフの酒場の横に酒蔵を設置しやがった!!畜生!撤去だ!撤去! あのクソスキルめ!なんで俺のスキル達は面倒事ばっかり起こすんだ!!


  カラーン、カラーン! ん? 今クソスキルっていいました? それ、私に向けて言ってます?


 少しだけ怒気を孕んだ声が聞こえてきた。さっきも聞いた声だ。あっ、これディアンヌの時と同じやつや。 嫌だ! 剣で滅多打ちにされるのは嫌だ!!


 カラーンカラーン オメデトウゴザイマス。 ガラポンガシンカシテ、オミクジニナリマシタ


 あっ、あかん。声が死んでる。ガラポンスキルに顔があったら目からハイライトが抜けてるヤンデレの様な表情をしているに違いない!


 カラーンカラーン オメデトウゴザイマス。オミクジスキルハ ウンメイシンルージュ ニシンカシマシタ


 「ご主人様? 初めまして。私、運命神ルージュと申します。さてと。今から何が起こるかは分かっていますよね?」


 俺は目の前に現れたルージュの姿を見る前に土下座の構えに入っていた。


 「すんませんでしたぁ!」


 俺の渾身の土下座。しかし、それは意味をなさなかった。


 「極大魔法第77番ラッキーチェイン


 流石に硬い鎖でなかったのは手加減してくれたのだろうか。俺は無数のムチのような魔力の鎖に叩かれ続ける。滅茶苦茶痛い。最後には鎖で縛り付けられ腹パンを連発される始末。途中でディアンヌが駆けつけてくれなかったら俺は胃酸を全て吐ききっていたと思う。いいパンチだ。


 「ご主人様、これからよろしくお願いしますね?」




 


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