ナイツオブソードオンライン

双葉エレン

第28話思い出だす『守る』意味

ゴーストは、まずレクトの姿になりゆっくりと黒い剣を二本抜く


間合いからして、断然距離感がある状況だ
バトルシップの、走力アップが向こうはどれだけあるかによる


そう思った瞬間、ゴーストは目にも留まらない速さでレクトの眼前に突くように黒い剣を突き出した


レクトは、反射的にかわして
右手の剣を斜め上に向かって切り上げた
キーンっと音が鳴り響き、ゴーストは腕を頭上に向かって弾かれた


この一瞬で、ファーストは思う


ーーーカウンター・ブレイク


カウンター・ブレイクって言うのは、弾く事が可能な場合のみ使うカウンタースキル
敵本体を硬直させて、スキルブレイクと同様でスキルを一時的に放てる空間を意味する
勿論、ブレイクなので通常の倍近くダメージを与えられる


この一瞬を、レクトはどうするんだろう?


しかし、レクトはスキルを使わず左右で通常攻撃を始めた
理由は簡単、BS(ブレイクスキル)のMPが足りないからだ
BSは、上位スキルと異なるためブレイブ専用としたスロットがあり3枠のスキルを入れる事により発動が可能である


つまり、レクトが入れたスキルは全て最上位スキルって事になり、また、消費MPは...250ほど掛かる


レベルが上がると、数十程度MPが上がるが、一定のレベルからは上がらなくなる仕様のようだ


あの戦いで、MP使い過ぎた...
ここで回復して、叩き込むか?
いや、流石にMP回復率が低いか、バトルシップあげるの忘れていたせいが仇となってるな


レクトは、流れるように通常攻撃を連発し始める
激しい戦闘が模様された戦いが、ほんの僅かで終わりかけた


ーーーいける!!


しかし、向こうのゴーストはいきなりスキルをレクトに放った
レクトは尽かさず、二本の剣でガードする
だが、ガード耐久値が減り続けて
ガードブレイクされてしまう


GP(ガードブレイク)、ガード耐久値を全てなくし破壊する事。
この場合、一定の時間ヘイトと敵ブレイク可能となる
つまり、ピンチを表している


レクトの上位スキルを自身の体に刻まれて、最後に穿つように突き飛ばされた
レクトのHPがイエローゾーンに差し掛かり、生唾を吐く仕草をして、ゆっくりと体を起こしてにやりと笑う


『ラストアタックは譲らないってか?ふ、俺の分身にも...舐められちゃ困るなぁ』


レクトは、二本の剣を光らせて
地面を強く踏み込み、風を駆け抜けるように素早くゴーストへと走る
すると、再びゴーストはレクトのスキルを放とうとした瞬間ーー


ーーーバキィン!!っと鈍い鉄音が鳴り響く


スキル発動前に、武器破壊すれば容易い事だぜ


ゴーストの折れた黒い剣は、中に舞い上がり、ピュンピュンっと音を立てながら回転して、地面に突き刺さる


レクトは、そのまま回り込むように背後に周りゴーストの背中を穿つように突き刺して吹き飛ばした


地面を転がり、膝と手を付きながら体制を取り直した


丸で、人間がしてる様に動くゴーストを見てレクトは思う


コンピュータ状で、細やかな人間に近い動作なんて見たことが無い


このゲームの、固有的特徴は...このMOBやNPCの知能の高さ
本来ありもしない、予測不能動作をする
仕様(シナリオ)通りに動く、MOBは..正常
異なる場合は、何らかの形でこうなったとしか言えない


つまり今のこの、動作(モーション)は...別物だ


レクトは、左右の剣を握りながら深呼吸して、集中力を高める


ゴーストはゆっくりと起き上がり、黒い剣を光らせるようにレクトに向かって走る


レクトは、向かってくるゴーストを、ワンテンポ遅らせるようにゆっくりと動く


ゴーストと、レクトが、剣技の撃ち合いを始める
お互い譲らないが、多少レクトが押されつつある


レクトが、押し負けしてる...!
ゴーストの、剣技の精度が上がって来てる...このままじゃ...!


アリアは、歯を微かに擦らせて立ち上がるとーー


レクトがとっさに、アリアを振り向き驚いた顔で叫ぶ


ーーーアリア動くな!


アリアの背後には、もう一体のゴーストが姿を現して居たのを、気づかなかった


迫り来る刃に、アリアは体が動かなくなっていたーー


ーーーザシュッ


何かが切られる音が鳴り響く、ただ、そんな音が響いた
アリアは、その瞬時に焼き付いた光景が目に映る


レクトは、言葉を失った
何せ、目の前でゆっくりと床に倒れ込んだのは...ファーストだった


あの一瞬を、どうやって動いたかは知らない...だけどアリアを押し飛ばした事は、頭の中では理解はできた


だが、この現状に...どう理解してよいのか?
NPCなら、簡単に『死にましたね。』っと軽々しく感情がない言葉て投げ捨てるであろう
だが、俺達は...生きてる生身のユーザーだ。そんな簡単に、ついさっきまで生きていた奴を、死んだとか...認識なんて...できやしなかった


アリアは、ただ、ただ、呆然として...ファーストを眺めていた
レクトは、相手していたゴーストが再び...襲って来るのを見てーー


『お前らは...こんなことして、楽しいのかーー?』


レクトは、ゴーストの腹部に目掛けて突き刺した...
そして、素早く切り上げて、切り下ろした
真っ二つに割れた瞬間、ゴーストは煙となり消えた
レクトは、急いでファーストの元に駆け寄り、頭を抱え、口元にポーションを寄せた
しかし、頭上のHPゲージが亀裂が入り砕け散る音が鳴り響いた


『くそっ...!間に合わなかったかのか...っ!』
『レクト...もう、いいよ...。私は...役目を果たしたから...ね』
『なんでそう言いきれるんだ!俺達は...PTメンバーだろ?簡単に諦めんな...!』
『もう分かるでしょ...HPゲージが消えた地点で...ゲームオーバーだってことくらい...分かるでしょ...?』
『......っ!!』


ファーストは、ゆっくりと目を閉じながら


『レクト、君はいつもそうだね...怒ると周りが見えなくなる癖がある...例え死にそうな人でも...助けようとする...どんな手を使っても...生き伸ばせたいと...』
『そうだな...俺はあの日から、ずっと、ずっと...仲間を失いたくないって誓い続けた...。だが、実際は、どうしてこう上手くいかない理不尽が付き纏う...、いくら強くなっても..こんなんじゃ...』


レクトは、ただ、悔しさを滲ませた拳を床に向かって放つ
それを見て、ファーストは、少し笑みを浮かべながら...悔しむレクトの頬に、振れながら


『悔やむんじゃないの...君は、君を成すことをすればいいの。『今度こそ守り抜く!』ってのがレクトの好きな所よ...、お姉さんを失望させないで...ね』


ファーストの体から光を放ちながら、空中に舞い上がる破片となり砕け散った
レクトは、下を向いたまま...言葉を発することなく、近くに置いていた剣に手に取り、ゆっくりと立ち上がる


そうだ...まだ死なせていけない仲間がいるんだ...
まだ、諦めるには...早いんだ...
ファースト...ありがとう、俺もう一度...肝心なことを思い出せた!


レクトは、アリアの方を振り向き
ストレージを開き、ポーションを取り出して、アリアの手元に投げた


『れ...レクト、私は...こんなことをされる...立場じゃない...よ...?』
『いいから飲め、お前は俺が守る...。今度こそは!絶対にな!』
『ーーー!!』
『待たせたなゴースト...、お前には俺からの鉄髄を受けてもらわなきゃなーーー!!』


レクトは、地面を強く踏みつけて走り出す
ゴーストも、同様、走って向かって来る


居合い、間合い、一閃切り...
どれもこれも、基本だ
だがな、唯一、違う攻撃の仕方がある


ゴーストとレクトは交差するように駆け抜けた
お互いの、剣が一定の位置に、定まる
そして、レクトは静かに鞘に剣を収めた瞬間、ゴーストは静かに床に倒れ込み、黒い煙を放ちながら消えた


『コード:005...試作1式二千切り』
アリアは、聞いたことがないレクトの発言に戸惑いながら


『今のは...?』
『試作段階スキル、表に出るはずだった...スキルさ』
『意味がわからないんだけど...』
『後で説明する、今は...この空間から出ることが優先だな』


とは言ったものの、GM自体を呼び覚ますなんて...どう説明すればいいんだ?


あの時と、似た感覚...だ...
そしたら、ゲームシステムコマンドが山のように現れた
何がどうなってんだよ...?


『ーークト!!』
アリアはレクトの耳元で、叫ぶ
『な、なんだよいきなり?!』
『ほら、出口...』
『あー、あんな所にあるのか...よし行こうか』


すると、アリアがレクトの服を強く引っ張り寄せた
勢いの余り、胸に顔がハマる
嫌な予感センサーが働いたレクトだったが...何もされない
レクトは、アリアの顔を見上げた



『はぁ...台無しだよ、台無し。まぁ、あの時は...あ、ありがとう』


やや目線をそらし、照れくさそうな表情でそう言った
しかし、彼は『あの時』の意味が理解出来なかった
すると、アリアの顔は少しずつ赤く染まりながら


『い、何時まで、私の胸に収まる気なのよ!?』


アリアから、手痛い平手打ちを貰うレクトだった
照れ隠しにも、威力加減を知らない...アリアにレクトは少々泣き目になっていたがーー


『ほ、ほら!行くよ!』っとまたしても視線を逸らしながらレクトの手をそっと握りだす
『ちょっ、お前...どうゆ吹き回しだよ?』
『か、勘違いしないで、別に...好きだからこうゆうことした訳じゃないんだからね!』
『へっ?』
『ほ、ほら行くわよ!』
『あ、おい!そんなに引っ貼るなよ!聞いてんのか?アリア!』


いくら言っても振り向く気配を感じないのでレクトは、仕方がなくそのままで歩く事にした


まぁ、それは彼女(アリア)にとっては...嬉しいそうな顔である限りの話だった


          

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