ナイツオブソードオンライン

双葉エレン

第68話《魔石》と帝国軍

『さぁどうした?!まさかその程度、とは言わんな?』


たった一撃、されど一撃。
単純な言葉だが、これだけの威力を喰らえば普通なら逃げ出すのだろう。
しかしだ、彼の瞳に宿る光は消えること無く輝き、ウィンドウを開き右側に白い剣をスライドして装備を終えて、ウィンドウを閉じる。
深く息を吸い、止めて、神経を研ぎ澄ませ、再び瞼を開く。


レクトは、パァンっと弾く音を放ち
地面を雷速の速さで、駆け抜けベルガモットの頭上に目掛けて剣を降ろす。


バチバチっと音が鳴り、振り降ろした剣の刃から火花を散らせる。
ベルガモットは、動く気配すら感じない視線でレクトを眺めるだけ。


やがて、パァンっと弾く音が鳴り
クルクルと回転するレクトは、着地後素早く地面を蹴飛ばして間合いを詰め寄る。


『威勢がいい奴だな、気に入った。その不屈の精神を砕いてやる』


ベルガモットの右手にレクトの左手に握る剣が、衝突し風圧が吹き荒れる
回転するレクトは右手で、振り抜く剣は真っ直ぐにベルガモットの顔を垂直に通り過ぎる。


反れた体制で、ベルガモットの左手は拳を作り上げてレクトの腹部に食い込ませて空高く突き放つ。


ドンっと打ち上げ花火の音に近い音が鳴り、レクトはくの字で空高く飛ばされる。


速やければ、桁違いの動き...!
一撃を入れる事すら出来ねぇ...。
クソっ...どうしたらいいんだ...!


Gが物凄く感じる体全体は、とうとう空上エリア外付近の高度まで達する
システムアナウンスが警報音を鳴らす
レクトは、意識がギリギリな状態で背に黒い羽を広げて緊急停止をする。


上空3000mに到達、あと数センチ後ろにさがって居たら確実に機能停止されて、1500m付近まで滑落される所だった。雲が若干であるが低く見える、両手に持つ二刀を見つめ直して再びベルガモットのいる場所に目掛けて飛ぶ。


『生きているか?そう来なきゃ、楽しくねぇよな。久々な猛者だが、少々見込み違いだったか...』


レクトは、ベルガモットの頭上から再び攻撃を仕掛ける。


『何度やっても同じだ』


再びベルガモットに現れる無透明のシールドが展開し、レクトの攻撃を遮断する体制に入る。


レクトは、ゆっくりと右手の持つ剣を前に差し出して、赤いフェクトを光らせてベルガモットの頭上から空中突進


無透明のシールドに、レクトの右手の刃が突き刺さり火花は吹き荒れる。


バチバチっと電光石火を放つ


『同じパターンだとはなーーいい加減分からんか』


分かってはいるさーーでも、これはゲームだ攻略が出来ないってのは経験状はない。



握る右手剣に、さらに強く握りしめて
スキルを放つーー。
すると、レクトの突き刺した部分が徐々に、無透明のシールドに食い込み始める。
視覚では、見えないシールドがレクトの握る右手剣の矛先から吹き上がる電光石火のお陰で、視覚化する。


どんどん食い込み始める事態に、ベルガモットの笑が消え始める。


いっけぇぇぇぇぇーーー!!


パリィンっとシールドは、砕け散り
ベルガモットに向かって、レクトの握りしめる右手剣の矛先が視界に飛び込む。


轟音が鳴り響き、爆風が吹き荒れる
砂煙が舞い上がり、瞬時に砂煙は吹き飛ばされた。


レクトの右手の剣は地面を突き刺し、ベルガモットの左足で踏まれており、左手の剣はベルガモットの右腕に刃が収まり擦り合う。


『やるな、それでこそ我が宿敵に等しい者よ』
『冗談キツイぜ、あんたの方が格上だ...。勝てそうに見えねぇんだよ』
『シールドを破壊した奴が、言う台詞ではないーー雑魚吐くセリフだ。強者には強者が対等だろうが』


ギャンっと擦れた音を鳴らし、レクトは回転しながら再び振る。
レクトが振り抜いた剣はベルガモットの頬を掠り、そのまま赤いフェクトを真っ赤に染め上げて、振り回し始める


《ナイツ・オブ・ブレイブストリーム》


手早い連撃を、ベルガモットに叩き出して怯み始める。
止まらない攻撃に、ベルガモットは歯を軋ませながら、腰に滞納していた斧を引き抜き勢いよく振り抜く。


地面は捲り上がり、削れた石破片は凶器と化しレクトに襲いかかる


『これぞ、大地砕き。躱せまいーー』


迫り来る石破片を、レクトは動揺もせずに空に飛び上がりひらりと躱す。
そして、目のも止まらない速さで、左右の高速連鎖が炸裂。
巻き上がる様に、ベルガモットの巨体な体は中に浮き...レクトは背後からこう告げる。


『俺が知る猛者って奴は、お前以上にもっと強いーー!!』


パープルフェクトが、ベルガモットの背後を強く切りつけ、二双の剣を揃えながら頭上から叩き切り落とす。


ベルガモットは、勢いを落とさずに地面に向かって滑落。
轟音を馳せた。


レクトは、左肩に剣を乗せて滑落したベルガモットを眺める
砂煙が舞い上がり、よく見えないが...
高笑いだけが響き渡る。


『今のは効いたぞ...!長年求める猛者と巡り会えた、これだけ、これだけ嬉しいことは他にはない。だが、一つだけ見落としてる部分があるな』


すると、レクトの体が何かに引き寄せられるかのように、体がベルガモットの方に引き寄せられ始める。


砂煙をなぎ払いベルガモットら叫ぶ


『我が肉体は、死期が近ければ近いほど...能力が強化される。今回は、貴様を引き寄せて我が、快進撃を喰らって終わらせてもらうーー』


斧を右手軸に回転させ、パシィッっと音を弾ませ手に取り、高く飛び上がり
勢いよく地面を斧で叩く。


バキバキと地面は音を馳せ、亀裂はベルガモットのが振り降ろした先から真っ二つに引き分かれ始める。


そして、レクトがベルガモットと同じ視線まで落ちた瞬間ーーー


『地獄の火炎よ、吹き荒れろーー!』


割れた地面の狭間から、マグマが勢いよく吹き荒れる。
レクトの全身に受けてしまう


『プレート砕き、何十年ぶりか...。がはっ!!』


ベルガモットの、口から小さい宝石が出てくる。それを眺めながら
『魔力が...尽きるのか...』っと呟きゆっくりと膝を地面に付いて倒れた。


吹き荒れるマグマを、復活カウントダウンが画面の目の前で表示されてる
レクトは、躱す事が出来ずに喰らってしまい。ユーザーデットアウト、詰まり...戦闘不能になっていたのだ。


残りカウント30秒を切ろうしていた


死んでしまったが、また生き返れるのが...《ゲーム》なんだよな。
また1から開始か...ここまで来たのに最悪だな...。


ーーーっと思ってた瞬間、『復活しました』っと画面内に表示されてる。


割れた地面の真上に浮いている自分に気付き微かに驚く。


『もぅ、これで2度目よ、浪費するからむやみに死なないでよ...』っと頭の中から出てきたシャルネット。


あっ、存在忘れていた...。


そして、改まった感じで話す


『ところでさ、レクト...』
『なんだよ、改まってさ』
『今さ、足場ないじゃん?』
『そうだな』
『足場がないと、飛行中ってどんなカウントされると思う?』
『そーいや、考えたことないな...』
『飛んでるmと、穴が空いた深さのm...これって加算されるんだよ』
『へー、知らなかったぜ...。ん?加算される...?』
『うん、詰まり...今の状態ってかなりやばいんじゃないかな?』


シャルネットがそういった瞬間、『制御機能が停止しました』っと表示されて、レクトの羽は消えた。
そのまま、割れた地面の狭間に向かって滑落を始める



『う、うおぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』


シャルネットも、滑落していくレクトのあとを追う。
絶叫をあげて数十秒、悟ったような顔つきになり目を細めながら思う。


人間ってのは、儚いものだよな...
こんな恐怖を一瞬で死を認識するもんな...。ほら、全身に風を浴びて、鳥になった気分だ。あぁーー鳥って毎日こんなことしてんのかーーー。


バサバサと服は強く靡く、髪の毛は乱れ放題、浮遊感で足はどうしたらいいかわからない。
背中の左側の剣はガタガタと鳴れば、ベルトに繋いだ右側の剣は、今にも吹き飛びそうな状態。


周りが徐々に薄暗くなってくる、どうやら谷底並に深さがある様だ。


すると、シャルネットは『そろそろ羽使える頃だよ』っと言うが、暴風並みの強い風がレクトに襲いかかってる為、音声がキャッチ出来ないーー。


まずい、このまま落ちたら...マグマに煮られてしまう...。
いや、焼かれてしまうに近いけど、飛び込んでしまうから例えに困る。


熱源を知らせる様な赤いマグマが、少しずつ見え始める。


私が、何とかしなきゃーー。


我ながら小さい羽を広げて、レクトの髪の毛を掴み引っ張ろうとするが...重力感には勝てなくーーー引っ張った何本かの髪の毛は抜けてレクトだけ降下を続ける。


ナビゲーションの小型だからかな...力が足りないわ。
元に戻っても、多分浮遊魔法は使えないぽい...。


ふっと浮かぶアイテムがシャルネットを閃かせる。
フォルムを通常型に変更、普段道理の天使っぽい服装に戻る。
次に、胸から取り出した四角形の色違いの結晶石を2つ取り出す。
片方の結晶石を起動して、デスヘル高原に指定、上空に向かって投げ飛ばす。淡い光をはなった、もう片方にも同じ様に設定してーーーレクトの頭上に目掛けて投げ落とした。


レクトの頭に衝突、カチッと音が鳴り
淡い青い光を放ち始める。
フォルムをナビゲーションに切り替えて、突撃する様に疾走して淡い青い光に入り込む。


レクトは、両手両足を開いた状態で地面に向かってビタンッ!っと叩きつける音と共に全身着地する。
その後から、シャルネットが転がるように抜け出て、レクトの髪の毛にダイブする。


『いてぇーーなッ?!』


先程の景色とはうって変わり、足場がある地表と剣が突き刺さった異様な光景をどこかで見覚えがあるっと脳裏がそう告げた。
体を起こして、周りを見渡しながら
くたばったベルガモットが視野に入る


重苦しい体を起こして、立ち上がり
ベルガモットの口から吐いたであろう宝石を手に取る。


なんだこれ...?汚いオッサンが、綺麗な宝石を吐くなんて...なんかの生まれ変わりかよ。


『魔石ね』っと不意に話し出すシャルネットは、レクトの髪の毛から抜け出てきて飛び上がる。
『魔石?これが...?』
『宝石と似てるけど、魔力がとんでもなくその石に込まれてるのよ。ジャッチ・マスター達はそれを手にして...祖国や帝国自体を滅ぼしたのよ』


少しだけ驚く、何となく予感は的中していた。クーデターを起こしたのは、王子で忠誠をしていた各ジャッチ・マスター達が何もしていないわけじゃない
《魔石》の力を使えば...国一つ滅ぼす事ぐらい可能であろう。
それが、10個あるとすれば...想像ができないーーー身震いしたくなるほどだ
だが、一番不振な点があるとすれば...


『それはそうと、何故...ベルガモットがこれを持ってーーいや、食っていたんだ?』
『魔力に...いや、力に飢えていたんでしょ?バカの考えることは、大抵バカで終わるからね...』
『あー、なんとなくわかる説明ありがとう。でも、お前も中々な馬鹿だと思うぞ?』
『へ?』
『自覚ないのか?ほらーーー』


レクトが指を示す方角は、あの巨大な剣で...柄付近に何やら風で揺れている1枚の布切れが目に止まる
アレがどうした?っと誰もが言うのだろう。


『アレってさ、お前の下着だと思うんだよ』
『え?ち、違うよ...!』
『だってさ、可愛いクマのイラストがプリントされてる布切れって他にある?』


シャルネットは、一時考え込む
そして、赤面になり急いでその場所へと飛んでいった。
何故見えたか、彼のスキルには目を拡張できる《拡張スキル》を会得している。だから、何百メートル離れていても...目を細めれば見えてしまうのだ。


数分後、シャルネットはレクトに視線を合わせずに話し出す


『さ、さて...この場所はなぜこんなに剣が突き刺さってるのでしょうか?』
レクトは呆れ顔で『墓標だからだろ』っと単直に答える。
『墓標の由来は?』
『さぁ...?』
『一応、この場所...帝国と反乱軍の衝突した場所なんだよね』


まぁ、なんとなく分かるよな...。
そんな会話をしながら、進路を北西に歩き始めて数分後ーー
白い点が無数に並んで一直線にラインがある
そうこれは、エリア切り替えを示す物で、わかりやすく言えば、次のエリアに進む時に現れてお世話になる存在なのだ。


そのラインを通り抜けと、何故が一番最初のジャッチ・マスターと謎の青年がいる場所に戻ってしまう。
すると、『あっ』という声が聞こえ
レクトは飛び交うシャルネットを見上げて言う


『おまえ、まさかだと思うが...?』
『ち、違うよ?けして間違ったわけじゃないよ、まさか死都に繋がっているとは思わなくて』
『繋がっているとは思わなくて?ってまさかだと思うけど...?』
シャルネットは、口を尖らせながら
『だって仕方が無いじゃん!数十年前のMAPと現在のMAPって違うじゃん。そりゃ、道に迷うわよ、迷うんだよ!!』っと力説に言い訳を吐く。


そりゃ、開発初期のMAPと現在とはかなり違うに決まってる。
とゆうか、彼女自体が時止めされた悲しきなんかに見えて来てしまうぐらいだ。

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