俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー

第6話 愛の告白練習♡【前編】

 1学期最後の登校日。
 終業式、大掃除、HRを終えた俺と六花と美月は、昼ご飯を部室で食うことにした。
 
 「それにしても校長先生の話長かったぁ~」

 そう言いながらものすごいスピードで弁当を食べている六花。
 お前……そんなに腹減ってたのかよ……朝ご飯3杯もお代わりしてたくせに。

 「そうだね。なんで校長先生の話って長いんだろ?もっと簡潔にできないのかな?」

 あいかわらずのヘルシー弁当である美月が首肯する。
 確かに小中高どの学校の校長先生は、やたらと話が長い。
 どうでもいいような話をしたりして、それを立ちながら聞いているこちらの身にもなってほしいもんだ。

 「で、今日の部活って何すんだ?」

 「うーん……あ!」

 六花は何か閃いたような顔をして椅子から急に立ち上がると、ホワイトボードに何かを書き始めた。
 そして、書き終わり、ペンを元の場所に戻すと、声高らかに言った。

 「今日の部活内容はこれよ!」

 好きな人に告白してズッキューン!

 「……」

 「……」

 俺は何も言うことができなかった。いろいろな意味で。
 一方の美月も言葉は発しなかったもの、顔が真っ赤になっていた。
 何で女の子みたいな仕草をするのかな、美月くん!
 
 「なんで2人も黙ってるの?」

 その様子を見かねた六花が口を尖らせたが、黙らずにいられないことをまずは理解してほしいね!

 「で、今回の部活は何すんだ?」

 「なんでなかったことにするの?!」

 だってこんなことできるわけないだろ……。
 そもそも好きな人って誰だよ!俺はいないからね!……ほ、本当なんだからっ!

 「す、好きな人に告白って……どーいうこと?」

 すると、顔が真っ赤になった美月が箸でサラダにはいっているプチトマトを転がしながらそう六花に聞いた。
 ……食べ物で遊んではいけません!
 
 「美月ちゃんいい質問だね」

 なにやらニヤニヤし始めた六花。
 何を企んでるの?そしてなんで俺を見るの?

 「もしかして……俺?」

 六花はそれに首肯して、

 「いきなりガチ告白はハードルが高いじゃん?だから、しょーくんが実験台になって」

 俺はお前らのモルモットかよ!

 昼食を終えると、すぐに部活動を開始した。
 今日は終業式のため、午前中で終わりだ。
 だから、午後からは放課後となる。
 本当なら家に帰ってゲームでもしていたというのに……こんな部活に入部……てか俺、いつ入部届出した?
 まぁ、いいや。どうせ六花が勝手に顧問の先生に提出したのだろう……って、顧問の先生は誰だよ?!
 今頃いろいろなことに気づいた俺だが、それを聞く暇もなく、早速実験台にされた。

 「それじゃあ私からするね?」

 そう言い、俺の目の前に立つ。
 そして、もじもじしながら俺に何かを手渡してきた。

 「こ、これ、受け取ってくだしゃい!」

 今…噛んだよな?
 練習とはいえ、そんなに緊張することなのだろうか。
 それに顔が赤いし。
 
 「おう」

 俺はそれを受け取った瞬間、六花はものすごいスピードで部室を出ていった。

 「え……なんなんだ?」

 「とりあえず、六花ちゃんから渡されたラブレターを見てみたら?」

 え、これラブレターだったの?
 ただのルーズリーフ1枚を4回折りたたんだものが「ラブレターだ」って、よく気づいたな。
 
 「えーと……なになに」

 ラブレターらしきものを広げると中にはこう書かれていた。


 “しょーくん、屋上で待ってるから来てください。
 来なかったらてめぇ……どうなるか分かってるよな?”

 なぜ最後暴力的になったの?!てか脅迫だよこれ?!
 こんなの好きな人に送るようなラブレターじゃないよ!
 好きな人に脅迫文送ってどうすんだよ……。
 急に六花の未来が心配になってくる俺。
 行かないという選択肢は元々ないため、行くことにした。

 屋上に上がると、フェンスの向こうを眺めるようにして六花はそこにいた。

 「おい、来たぞ」

 声をかけると、俺の存在に気づき、身を翻して体を正面に向けた。
 そして、スタスタと近づいてきて、その間の距離を詰めること3m。
 近いようで遠いような距離で六花はもじもじしながら静かに口を開いた。

 「こ、告白す、するからにゃ!」

 また噛んだな…「にゃ!」ってなんだ、猫か?

 「こ、告白といい言っても、あ、愛のこ、こここ告白だからねっ!」

 それ以外に何があるんだよ。
 俺は一度深呼吸をして心を落ち着かせる。

 「お前の気持ちはよく分かった。一度落ち着いてから聞かせてくれ」

 「お、おおおす!」

 空手家か、お前は。落ち着けって言った直後でこの有様だ。

 「あのね、しょーくん」

 「なんだ?」

 「しょーくんが小6まで寝る時はオムツを穿いていたこと私、知ってるよ?」

 え……。
 こいつその情報どこから手に入れた?
 それは俺の家族しか知らないことなんだが。

 「しょーくんが中2の時、告白して「勘違いキモ男」って呼ばれていた事も知ってる」

 ……ハハハハ。
 だんだん心臓あたりが苦しくなってきたんだけど何でかな?
 ただでさえ、さっきのオムツの方で致死量を超えるダメージを喰らったというのに。

 「それに同級生の女の子が手を振っていたから自分にかと思って振り返したら、後ろの彼氏の方だったことも……」

 「もうやめてえええええ!お願いだから許してええええええええええええ!」

 俺は膝をついていた。
 なんか、もう、泣いていた。
 過去の黒歴史は全て奥底に封印していたのに心臓ごとえぐられた。
 胸が苦しい……。
 気がつけば、ゴロゴロとのたうち回りながら転がっていた。

 「私はそんなしょーくんが……す、好きです」

 「嘘をつけ!?」

 そんなやつ好きになる子いないだろ!
 六花は戸惑ったように、

 「う、嘘じゃないもん!本当だもん!」

 「なら、なんで俺の黒歴史を言い出した?そんな告白聞いたこともないぞ」

 人の黒歴史をえぐったうえで「好きです」って言われても何かのイタズラかからかってるようにしか思えない。

 「だ、だってよくあるじゃん!昔の事とか自分にしか知らない事を言うとさ、「お前そこまで俺の事……」ってなるじゃん!」

 「ならねぇよ!」

 昔のいい思い出話ならともかく、悪い思い出話をしてどうすんだよ。逆に嫌われてるかと思うぞ。
 しかも自分にしか知らない事を相手が知ってたら怖いわ!「お前そこまで俺の事……ストーカーしてたんだな通報」ってなるよ!

 「って、なんで俺の過去知ってんだよ!出会ってまだ3ヵ月くらいだろ俺達は」

 出会って3ヵ月の六花に昔話されてもなぁ……とは思うけど、だからと言ってね?

 「それはね…いろいろと女子から過去の噂やら耳に入ってくるんですよ、勝手にね!」

 女子のネットワークすげぇ!……て、感心してる場合じゃない!
 それはつまり……俺の黒歴史がまだ誰かの口によって広められてるってことで……

 「うわあああああああああああああああ!」

 再び屋上を転げ回る俺だった。

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