人外と友達になる方法
第5話 げえむは凄い! 〜学校篇〜
一夜明けた次の日、悠火は学校に行くのがとても憂鬱だった。
昨日あんなことがあったのだ、むしろけろっとしている方がおかしいだろう。
「悠火、そろそろ支度しないと学校に遅れるよ」
「ん、ありがとう婆ちゃん」
悠火は祖母、伊鳴 静香との二人暮らしだ。
いや、だったというべきか。
「おお! 遅かったの悠火。先に頂いておるぞ!」
そう、今この家には俺と婆ちゃん、そして昨日出会った妖狐、天狐が住んでいる。
どういう経緯でこうなったかというとーーー
時は遡り、昨日
「実は……妾は封印された身でな。先刻お主が面の札を剥がした隙に最後の妖力を振り絞って封印を解いたというわけじゃ」
「はぁ……それで?」
つまり今ここに妖狐がいるのは悠火のせいというか、お陰というか、とにかく悠火が面のお札を剥がしたのが原因だという。
「今の妾は妖力のない妖怪、これがどういうことかわかるか?」
「……いや、わからない」
そもそもラノベやら漫画で妖怪にある程度耐性というか知識があるものの、いざ目の前に現れると正直パニックなる。
「妖怪は妖力がなくなると消えてしまうんじゃ。このままじゃと妾も消えてしまう。そこでじゃ!」
妖狐は白く細い指で悠火を指刺す。
「お主、式神を知っておるか?」
「式神? それってゲームとかラノベとかに出てくるあれ?」
「げえむ? らのべ? よくわからんが知ってはおるようじゃのう。なら話は早い、妾をお主の式神にしてくれんか?」
妖狐からの突然の提案に悠火は状況を飲み込めずにいた。
突然のことすぎて頭が追いつかない。
「え? お前が俺の式神に? どういうことだ?」
悠火は理解が追いつかず言われたことを鸚鵡返しするしかできないでいた。
「簡単なことじゃ、妾の封印を解いたのがお主だからじゃ」
「封印を解いたって言ってもお札を一枚剥がしただけだぞ? そんな決め方でいいのかよ」
その札を剥がしたのも偶然の事故のようなものだ。
たまたま手に取ったのが悠火だっただけだし、剥がそうと思って剥がしたわけでもない。
「この機を逃しては次に人間の出会うのはいつになるかわからんからのう」
「……ここで断ったら俺の記憶も消すのか?」
「そうじゃな……仕方ないがのう」
悠火は頭を抱えて悩む。
妖狐が悠火たちを助けてくれたのは事実だし、それに報いたい気持ちもある。
それにこの状況に心踊らないわけでもない。
しかし未だに理解が追いつかないのと、妖狐と一緒にいることでまた河童のような妖怪に襲われるかもしれないと思うと、素直に首を縦に触れない。
「何を悩む必要がある。この愛らしい妾が式神になってやろうと申しておるのだぞ?」
確かに妖狐の見た目は愛らしい。
しかし、これを可愛いと言ってしまうとロリコン認定される気がする。
「ほれ、お主も妾が愛らしいと思っておるではないか」
そういえばこいつ心を読めるんだったと、悠火は手遅れながらに後悔した。
「……信じたくなかったけど、お前心読めるの?」
「妾ほどの妖怪になると読心など容易いものじゃ。それよりどうするのじゃ? 式神使いとは男心をくすぐる響きではないか」
確かに、式神使いとはなかなかに厨二心をくすぐるワードではある。
それに、それ抜きにしても妖狐をこのままずっと1人にしておくのは忍びなかった。
それに、これからのことはまた後で考えればいい。
「わかった! お前を俺の式神にする」
妖狐は満足そうに悠火の顔を見上げた。
「承った! この大妖怪天狐、お主の式神となることを心より嬉しく思うぞ!」
心地よい返事とともに妖狐、改め天狐が手を差し伸べる。
「契約じゃ右手を出せ」
言われるがまま右手を出す。
天狐は右手に触れると呪文を唱え始めた。
「我、古の契りに従いて汝と契約せん」
淡い光が悠火と天狐の全身を包む。
天狐が顔を上げた。
「これで妾はお主の式神じゃ」
天狐は満面の笑みを浮かべている。
本当に小さな女の子にしか見えない。
「それで、俺は何をしたらいい?」
「先ずは妾の依代を作るぞ。憑代の意味は…げえむで知っておるかの?」
憑代とはまた漫画のような用語が出てきた。
「ああ、式神を宿す生贄みたいなやつだろ?」
「生贄とは少し違うが……まあそんなところじゃ。それにしてもげえむとやらは凄いのう! 物知りじゃのう! まるでぬらりひょんじゃのう!」
天狐が目を輝かせて言う。
「さてと、憑代を何にするか決めたかのう? できれば強い念が篭った物がいいんじゃが」
強い念が篭ったもの。
悠火は何か何かと考え、そしてそういえばと自分の手首を見た。
「じゃあ、これはどうだ?」
悠火はそう言って手に付けていた数珠のブレスレットを取り出した。
「これは?」
「俺の死んだ父さんから貰ったものだ。いつか役に立つ日が来るからって」
天狐はブレスレットを見つめる。
その目はとても優しくて、そして少し寂しそうに見えた。
「なるほどの……確かに強く暖かいいい念が込められておる」
天狐が数珠に触れる。
すると天狐の体が光を帯び始めた。
「これでこの数珠が妾の憑代じゃ。妾に用があるときは呼びかけるがよい。妾は疲れたからもう寝るとする。それじゃぁの」
天狐はそう言うと、数珠に吸い込まれるかのように消えてしまった。
こんな訳で、俺と婆ちゃんと天狐の2人と1匹の共同生活が始まった。
読んでいだだきありがとうございます。コングです。
ぬらりひょん=博識 のイメージが作者の中にあったためこうなりました。
実際にどうかはこの際関係ありません。
でも、もし博識じゃないのなら、あの発達した頭は一体……
それではまた次回!
2020/3/27一部改稿
昨日あんなことがあったのだ、むしろけろっとしている方がおかしいだろう。
「悠火、そろそろ支度しないと学校に遅れるよ」
「ん、ありがとう婆ちゃん」
悠火は祖母、伊鳴 静香との二人暮らしだ。
いや、だったというべきか。
「おお! 遅かったの悠火。先に頂いておるぞ!」
そう、今この家には俺と婆ちゃん、そして昨日出会った妖狐、天狐が住んでいる。
どういう経緯でこうなったかというとーーー
時は遡り、昨日
「実は……妾は封印された身でな。先刻お主が面の札を剥がした隙に最後の妖力を振り絞って封印を解いたというわけじゃ」
「はぁ……それで?」
つまり今ここに妖狐がいるのは悠火のせいというか、お陰というか、とにかく悠火が面のお札を剥がしたのが原因だという。
「今の妾は妖力のない妖怪、これがどういうことかわかるか?」
「……いや、わからない」
そもそもラノベやら漫画で妖怪にある程度耐性というか知識があるものの、いざ目の前に現れると正直パニックなる。
「妖怪は妖力がなくなると消えてしまうんじゃ。このままじゃと妾も消えてしまう。そこでじゃ!」
妖狐は白く細い指で悠火を指刺す。
「お主、式神を知っておるか?」
「式神? それってゲームとかラノベとかに出てくるあれ?」
「げえむ? らのべ? よくわからんが知ってはおるようじゃのう。なら話は早い、妾をお主の式神にしてくれんか?」
妖狐からの突然の提案に悠火は状況を飲み込めずにいた。
突然のことすぎて頭が追いつかない。
「え? お前が俺の式神に? どういうことだ?」
悠火は理解が追いつかず言われたことを鸚鵡返しするしかできないでいた。
「簡単なことじゃ、妾の封印を解いたのがお主だからじゃ」
「封印を解いたって言ってもお札を一枚剥がしただけだぞ? そんな決め方でいいのかよ」
その札を剥がしたのも偶然の事故のようなものだ。
たまたま手に取ったのが悠火だっただけだし、剥がそうと思って剥がしたわけでもない。
「この機を逃しては次に人間の出会うのはいつになるかわからんからのう」
「……ここで断ったら俺の記憶も消すのか?」
「そうじゃな……仕方ないがのう」
悠火は頭を抱えて悩む。
妖狐が悠火たちを助けてくれたのは事実だし、それに報いたい気持ちもある。
それにこの状況に心踊らないわけでもない。
しかし未だに理解が追いつかないのと、妖狐と一緒にいることでまた河童のような妖怪に襲われるかもしれないと思うと、素直に首を縦に触れない。
「何を悩む必要がある。この愛らしい妾が式神になってやろうと申しておるのだぞ?」
確かに妖狐の見た目は愛らしい。
しかし、これを可愛いと言ってしまうとロリコン認定される気がする。
「ほれ、お主も妾が愛らしいと思っておるではないか」
そういえばこいつ心を読めるんだったと、悠火は手遅れながらに後悔した。
「……信じたくなかったけど、お前心読めるの?」
「妾ほどの妖怪になると読心など容易いものじゃ。それよりどうするのじゃ? 式神使いとは男心をくすぐる響きではないか」
確かに、式神使いとはなかなかに厨二心をくすぐるワードではある。
それに、それ抜きにしても妖狐をこのままずっと1人にしておくのは忍びなかった。
それに、これからのことはまた後で考えればいい。
「わかった! お前を俺の式神にする」
妖狐は満足そうに悠火の顔を見上げた。
「承った! この大妖怪天狐、お主の式神となることを心より嬉しく思うぞ!」
心地よい返事とともに妖狐、改め天狐が手を差し伸べる。
「契約じゃ右手を出せ」
言われるがまま右手を出す。
天狐は右手に触れると呪文を唱え始めた。
「我、古の契りに従いて汝と契約せん」
淡い光が悠火と天狐の全身を包む。
天狐が顔を上げた。
「これで妾はお主の式神じゃ」
天狐は満面の笑みを浮かべている。
本当に小さな女の子にしか見えない。
「それで、俺は何をしたらいい?」
「先ずは妾の依代を作るぞ。憑代の意味は…げえむで知っておるかの?」
憑代とはまた漫画のような用語が出てきた。
「ああ、式神を宿す生贄みたいなやつだろ?」
「生贄とは少し違うが……まあそんなところじゃ。それにしてもげえむとやらは凄いのう! 物知りじゃのう! まるでぬらりひょんじゃのう!」
天狐が目を輝かせて言う。
「さてと、憑代を何にするか決めたかのう? できれば強い念が篭った物がいいんじゃが」
強い念が篭ったもの。
悠火は何か何かと考え、そしてそういえばと自分の手首を見た。
「じゃあ、これはどうだ?」
悠火はそう言って手に付けていた数珠のブレスレットを取り出した。
「これは?」
「俺の死んだ父さんから貰ったものだ。いつか役に立つ日が来るからって」
天狐はブレスレットを見つめる。
その目はとても優しくて、そして少し寂しそうに見えた。
「なるほどの……確かに強く暖かいいい念が込められておる」
天狐が数珠に触れる。
すると天狐の体が光を帯び始めた。
「これでこの数珠が妾の憑代じゃ。妾に用があるときは呼びかけるがよい。妾は疲れたからもう寝るとする。それじゃぁの」
天狐はそう言うと、数珠に吸い込まれるかのように消えてしまった。
こんな訳で、俺と婆ちゃんと天狐の2人と1匹の共同生活が始まった。
読んでいだだきありがとうございます。コングです。
ぬらりひょん=博識 のイメージが作者の中にあったためこうなりました。
実際にどうかはこの際関係ありません。
でも、もし博識じゃないのなら、あの発達した頭は一体……
それではまた次回!
2020/3/27一部改稿
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