人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第14話 決着 〜雷王篇〜

 雷王と呼ばれた狸のような見た目のその生き物は、よく見ると体毛に電気を帯びているように見える。
 時折その体からバチっという音と共に稲妻のようなものが発せられている。

「雷王! 貴様どういうつもりじゃ!」

「天狐……封印を解いたのだな」

「そんなことはどうでもいい! 何故……何故なんじゃ!」

 狐々愛はこれまでにないほど動揺している。
 一体狐々愛と雷王の間に何があったというのだろうか。

「天狐……お前は知らなくていいことだ」

「何故じゃ!? ……頼む……教えてくれ……」

「だったら、お前の妖術で我の記憶でも何でも見ればいいではないか」

「………」

 狐々愛は俯いたまま何も言わない。

「狐々愛」

 悠火に名前を呼ばれ、狐々愛は悠火の顔を見上げる。
 その瞳には薄らと涙が浮かんでいた。

「あいつとお前の間に何があったのか知らないし、詮索もしない。だけど、あいつが学校のみんなを傷つけたことは事実だろ?」

「悠火……」

「あいつと話がしたいんだろ? なら、あいつをぶっ飛ばしてからだ」

「……すまん。そうじゃな……雷王を倒すぞ!」

 狐々愛は迷いを振り切って覚悟を決めたようだ。
 しかしぶっ飛ばすと口でいうのは簡単だが、雷を使う相手に悠火が出来ることなど何もない。
 完全に狐々愛頼りだ。

「ここは人目が多い。術式展開・空間断絶くうかんだんぜつ

 雷王が術式を唱えると、辺りの風景が真っ暗になる。

「これは!?」

「空間断絶じゃ。術式の内と外を隔絶する術式。周りから妾たちの姿は見えていない」

「それじゃあ、狐々愛も本気を出せるってことだな」

「じゃな」

 二人は雷王と目を合わせる。
 いつ戦いが始まってもおかしくない緊張感が三人の間に流れる。

「おい! 悠火! どうなってんだよ!」

「何が何だか理解できない……」

 とその時悠火の背後から声がした。
 完全に忘れていた、奏鳴と光秀の二人もいたのだ。

「悪い。事情は後で説明する。今はそこで大人しくしててくれ」

「……わかった」

「そうさせてもらうよ」

 奏鳴と光秀は悠火の指示に従って、静かに三人の様子を見ることにした。
 再度緊張が走る。
 誰も動かない。
 否、隙がなく動けないのだ。

「はぁっ!」

 先に攻撃を仕掛けてきたのは雷王だ。
 雷の球のようなものを何発も放つ。

「はぁ!」

 狐々愛もそれに応戦して、炎の盾で雷を防ぐ。
 そして一瞬のタイムラグもなく、無数の火球を作ったかと思うと、それらを全て雷王に放つ。

火球之陣かきゅうのじん!」

雷壁らいへき!」

 雷王は雷の膜で全身を覆う。
 しかし、狐々愛の方が妖力が上回っていたのか膜にヒビが入る。

「くっ……!」

 耐えきれず、膜を突き破った火球が爆発して煙を上げる。

「何をしておる、雷王。お主の妖力ちからはそんなものではなかろう」

 爆煙が晴れるとそこには全くの無傷の雷王が立っていた。

「買い被りすぎだ。我の妖力はお前の足元にも及ばない」

 悠火は狐々愛に気になったことを聞いた。

「なあ、狐々愛。あいつの、雷王の能力ってどんなんだ?」

「奴は雷を主とした戦法じゃ。物に纏わせ戦ったり、雷を飛ばしたり」

「成る程ねぇ……」

「どうじゃ? 勝てそうな作戦はあるか?」

「いや、まだだ。あと少し時間をくれ」

「わかった。主人の命令とあらば、この狐々愛全力を尽くして時間を稼がせてもらおう」

「ありがとう、頼む」

 悠火は狐々愛が時間を稼いでくれいる間に、雷王を倒す方法を考える。
 狐々愛はまだ完全に妖力が回復しきっていない。
 その為、今は先程の火球が唯一の攻撃手段であり、それ以外は防御や、記憶を読んだり、書き換えたりする能力しかない。
 つまり、火球だけで雷王に勝たなくてはならないのだ。

「くそっ! どうしたらいい……恐らく防御していない時にありったけの火球をぶつければ……」

 悠火は必死に考える。
 雷の膜を剥がす方法を。

「なぁ、悠火」

 突然の声に悠火の思考は一瞬停止した。
 声の主は光秀だ。

「あいつの、電気の膜を剥がす方法を考えてるんだろ?」

「ああ……何か考えがあるのか?」

「電気の膜を剥がす手はある。けど多分それは一瞬だけだし。一度しか出来ないと思う」

「それで十分だ! 教えてくれ!」

「その方法はー」




 狐々愛が時間を稼ぎ始めて五分後。

「待たせたな狐々愛」

「お、早かったのう」

「あいつの防御を剥がす手立ては出来た。でも、一瞬だ。タイミングがズレたら二度とは出来ない」

 悠火が真剣な面持ちで言った為か、狐々愛は少しからかうように応えた。

「まったく、妾頼みな作戦じゃのう。仕方ない、付きやってやるとするかのぉ」

「ありがとう」

 そういうと、悠火は奏鳴と光秀に合図をする。
 二人は頷くと、雷王を囲むように三方向に別れる。

「行くぞ、せーのっ!」

 雷王が雷を放つタイミングで、三人は何かを投げた。
 狐々愛に向かって放たれた雷が投げられた何かに引き寄せられるように曲がる。
 そして、その何かが膜に当たる。
 すると、膜が消滅する。

「何っ!」

「今だ! 狐々愛!」

「術式展開・火球之陣  百式かきゅうのじん  ひゃくしき

 百個の火球が防御を失った雷王に撃ち込まれる。

「がっ……は……」

 雷王が立つ力を失って倒れる。

「やったな狐々愛」

「やったの悠火」

 二人はハイタッチを交わす。

「それはそうと、さっきは何を投げたのじゃ?」

「これだよ」

 悠火の手にはボロボロになったスマホが握られていた。

「スマホ?」

「そう。電気器具は電気が流れやすいからな」

「まったく。人間の発明品には驚かされてばかりじゃのう…」

 狐々愛は少し申し訳なさそうにそう言った。



読んでいただきありがとうこざいます。コングです。

少し長くなってしまい、申し訳ないです。

あと、これから少し更新頻度が落ちるかもしれませんが、年内にあと10話は更新したいと思ってます。

それではまた次回!



2020/4/14一部改稿

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