人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第30話 再会と終戦 〜鬼篇〜

 黒鬼は目の前が真っ白になった。

(ああ、僕死ぬのか)

 黒鬼は目を閉じて思い出を噛みしめる。
 黒鬼は死ぬことを恐れてはいなかった。
ただ、もう二度と白鬼いもうとや奏鳴に会えないのだと思うと、不思議と涙が流れた。

「何泣いてるの、姉さん」

 そんな声が聞こえた。

「えっ…?」

 目を開けるとそこには、四百年の間離れ離れになっていた、白鬼いもうとがいた。

「な、なんで!?」

「説明は後で! 今は助かる方法をかんがえるよ!」

 何故白鬼の封印が解けたのかはわからない。
 だが、二度と会えないと思っていた白鬼に会えたのだ。
 それは黒鬼の力を蘇らせるのに十分だった。

「ああ、そうだな! 生きてここから逃げるぞ!」

 黒鬼は白鬼の横に並んで黒靄を構える。

「何故封印が解けたのです? まあ、それは問題ではない……問題なのは貴方が僕に敵対するか否かです」

「敵対するか否か? 決まってるでしょ、私は姉さんの味方だよ。だから姉さんに敵対するあんたに敵対しないわけないでしょ!」

「なら二人まとめて祓いましょう。浄給!」

 しかし今度は術式が放たれることはなかった。
 天空が横から飛んできた何かに吹き飛ばされたのだ。

「何だ…あれは?」

 よく見るとそれは火の玉だった。

「火の玉? ということは、天狐か?」

「当たりじゃ。遅れてすまんの黒鬼」

 霧の中から狐々愛と悠火、それに光秀が走って現れる。

「じゃあ、白鬼いもうとの封印を解いたのはお前たちか?」

「うむ。少し時間がかかっての。寺に着いたら霧が立ち込めておったから、嫌な予感がしての。先に白鬼の封印を解いたのじゃ」

 先ほど聞いた足音と気配は、どうやら悠火たちのものだったらしい。

「次から次へと……鬱陶しいですね」

 吹き飛ばされた天空がゆっくりと起き上がる。

「待て、天空。少し話をしようではないか」

「これはこれは、天狐様ではありませんか。まさかまた貴方と会い見えようとは思いませんでした。いいでしょう、貴方の顔を立てて話を聞いてあげましょう」

「助かる。先ず、お主は何故奏鳴の祖父を襲った? 人間を襲うのが大罪じゃと知らんわけではあるまい、何せお主は罰の執行人なのじゃからな」

 天空は少し驚いた顔をして言った。

「ちょっと待っていただきたい。僕があのご老人を襲った? 何を言っているのです?」

「何?」

「僕はここに悪鬼がいるとの噂を聞きつけ来たまで。到着した時には既にご老人は怪我をしておりました」

 今度は黒鬼が驚く番だった。
 到着したときの状況から見るに、てっきり天空が奏鳴の祖父を襲ったのだと思っていた。

「そしてその後すぐに鬼の気配がしたのです。するとそのには鬼を宿した少年がおりました。だから僕はてっきり悪鬼が少年に取り憑いたのかと思ったのです」

 話を聞く限り天空も天空で、勘違いをしていたようだ。

「それにここは鬼を封印している寺です。仲間の封印を解きに来たのだと思うのは必然だと思うのですが?」

「違う! 僕はただ、家族を助けたくて!」

「姉さん……」

「家族……ですか……それについては申し訳なかった。状況証拠だけで決め付けてしまったことを謝らせて欲しい」

 天空は頭を下げ、謝罪した。

「いや、こっちこそ勝手に襲った犯人だと勘違いして悪かった」

 黒鬼も謝罪する。

「さて、とりあえず話し合うのに霧幻之檻これは要らぬな?」

 狐々愛がそう言うと、天空が霧を晴らした。
 それと同時に青年の姿に戻る。

「お互い誤解が解けたようじゃし、情報整理をしようかの」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 奏鳴と祖父殿の手当てを」

「心配するな、それなら妾が済ませておる」

「そうか、よかった……」

 奏鳴と祖父は狐々愛が手当てし、寺の中に寝かせている。後少しすれば目が覚めるだろう。

「天空よ、その噂とは誰から聞いたのじゃ?」

風狸ふうりです。奴の風送之術かぜおくりのじゅつで聞きました」

 風狸とはまた聞かない妖怪だ。
 しかし、妖怪同士の間では有名なのか狐々愛や黒鬼、白鬼もそれぞれに反応している。

「なあ、狐々愛。その風狸ってどんな奴なんだ?」

「平たく言えば、情報屋じゃな。色々な噂を術式で遠くまで飛ばすことができるのじゃ。勿論相手の声を風に乗せて聞くこともできる」

 つまり要約すると携帯電話みたいな術式ということだ。

「つまり、私がここに封印されてるっていう噂は風狸さんが仕入れた噂ってことですかね?」

 白鬼の口調は黒鬼と正反対で丁寧でおっとりとした印象だ。

「いや、風狸も別の奴に聞いたらしい」

「誰にじゃ?」

「牙狩と名乗る妖怪らしいです。何でも信頼の置ける情報提供者と言っていました」

 その名は、雷王の封印を解いた者の名だった。



読んでいただきありがとうございます。コングです。

バトル終了しました! 物足りないという方もいらっしゃるかと思いますが、今の僕にはこれくらいのバトルが限界なんです。
ご了承下さい。

いよいよ鬼篇も大詰めです。あと1話か2話で終わるので、お楽しみに!

それではまた次回!



2020/5/5一部改稿

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