人外と友達になる方法
第32話 お邪魔します 〜認定試験篇〜
広場には既に何人もの集まっていた。
「すげぇな、これ全部妖術師かよ」
「壮観だね」
「あ! あの子可愛くね?」
悠火、光秀、奏鳴の三人はとある広場に来ている。
そのは妖術師の総本山、日妖連の所有する山中にある。
「よし、それじゃお前ら。行くぞ!」
「「おお!」」
時はだいぶ遡り。
「話はわかったけど、何で爺ちゃんがこんな紙持ってんだよ?」
「それはの、儂が妖術師の端くれじゃからじゃ」
「え!? それ本当かよ!」
「本当じゃとも。でないと今ここにいる妖怪たちを見ることは出来ておらんでの」
確かに、狐々愛たちは普段から普通の人間には姿が見えないようにしている。
それが見えているということは、新明が妖術師というのは本当だろう。
「奏の爺ちゃんが妖術師なのはわかったけど、この日妖連ってのと関係してんのか?」
「うむ、儂もこの日妖連に加盟しておる妖術師じゃからの。というか、今の時代で日妖連に加盟せずに妖術師を名乗るのは禁止されておる」
「成る程な……で、俺たちにこの紙を見せてどうするんだ?」
「日妖連は毎年一回、妖術師の認定試験をしておる。それに合格すれば君達も晴れて妖術師の仲間入りが出来るのじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。妖術師って、俺たちが!?」
「君達にはとんでもない潜在能力がある。それを腐らせるのはもったいない」
悠火たちには話が急すぎて頭が追いつかない。
一人を除いて。
「つまり、僕たちが妖術師になれば鵺への戦力も他の妖術師の情報も入って一石二鳥ってことですね」
流石は秀才光秀、この状況をバカの悠火、奏鳴にもわかりやすいようにまとめてくれる。
光秀のおかげで何となく話の全容が理解できたバカ二人は興奮しながら言った。
「じゃあ、俺たちもついに妖術師の仲間入りか!」
「いいな! 厨二っぽくて!」
「あのね、僕たちみたいな妖術のよの字も知らないような未成年が試験に受かるわけないだろ?」
光秀はもっともな意見を述べる。
しかし今回は光秀の意見に反論する者がいた。
「いや、そうでもないぞ? 君達の従える天狐に鬼は特級の妖怪。それだけで並みの妖術師など相手にならん」
「そ、そうなんですか?」
「うむ、式神の力を十分発揮出来ない今でも、既に儂より強いじゃろ」
現役の妖術師からのお墨付きだ、これなら光秀も何も言えない。
バカ二人のワクワクはもう止まらない。
「そうと決まれば、早速試験だ!」
「行くぜ!」
「待ちなさい」
今度はバカ二人の意見に待ったがかかった。
「試験は年に一回と言っておろう。次の試験は三ヶ月後じゃ」
「えー! 三ヶ月も待てねぇよ」
まるでただをこねる子供だ。
「君達はそれでもいいかも知れんが、光秀君には君達と違って式神がいない」
そうだった。
悠火には狐々愛が、奏鳴には黒鬼と白鬼がそれぞれ付いているが、光秀には式神がいない。
そのことにようやく気がついたらしい。
「ああ、そっか。じゃあ光秀の式神の探しに行くか?」
「仮に見つかったとしても、妾たちのような特級である確率は低かろう。それにもし仮に特級であっても、式神に出来る例は稀なのじゃ」
「う〜ん、打つ手なしか?」
全員が頭を悩ませたその時、何者かが部屋に入ってきた。
「誰だ!」
「僕です、天空です。お邪魔してもよろしいですか?」
つい先ほどまで死闘を繰り広げていた天空がそこにいた。
「成る程……そういうことですか」
「だから、天空! 光秀の式神になってくれ!」
「お断りさせて頂きます」
即答だった。
「すみません、僕は誰の式神にもなれません」
天空が申し訳なさそうに言う。
「いえ、気にしないでください」
光秀はそう言うが、少し残念そうだ。
少しばかり期待していたのだろう。
「式神になれない代わりと言っては何ですが、これを差し上げます」
天空は懐から一冊の本を取り出し光秀に手渡した。
「これは?」
「それは術式に関する本です。古より伝わるあらゆる術式が載っています。君なら習得できるはずです、見たところ君が一番頭良さそうですし」
天空は案外毒舌のようだ。
涼しい爽やかな顔をして平気で毒を吐く。
「ありがとうございます。大切にします」
「はい、そうしていただけるとありがたいです」
これで光秀が術式を覚えれば、三人とも妖術師になることが出来る。
そう意気込んだ矢先、天空が言った。
「うちの総隊長が君達に会いたいそうです。会っていただいてもよろしいですか?」
「総隊長が? 別にいいけど」
光秀、奏鳴もそれに頷く。
「それでは、開門符」
天空が門のようなものを開く。
「すげぇ……なんじゃこりゃ!」
悠火は一度狐々愛が妖域に行く際に見ているが奏鳴と光秀はこれが初めてなのだ。
青い猫型ロボットの出すピンクのドアとは違い、半透明で輝いている門はとてもカッコよく見える。
「開門符、指定した場所に門を開くことの出来る妖符です」
天空に続いて悠火たちも門に入る。
「それではお連れします。我々の本部へ!」
目の前が真っ白に光る。
咄嗟に目を瞑り、再度目を開けるとそこには古びた館が建っていた。
「それでは総隊長の元へ案内します」
悠火たちは天空の後に続いて館の中へと足を踏み入れた。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
本当なら天空の再登場はもっと後になる予定でした。なのにすぐ再登場って……なんか自分の計画性のなさが浮き彫りになった気がする……
次回、総隊長とその他幹部が登場します。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
「すげぇな、これ全部妖術師かよ」
「壮観だね」
「あ! あの子可愛くね?」
悠火、光秀、奏鳴の三人はとある広場に来ている。
そのは妖術師の総本山、日妖連の所有する山中にある。
「よし、それじゃお前ら。行くぞ!」
「「おお!」」
時はだいぶ遡り。
「話はわかったけど、何で爺ちゃんがこんな紙持ってんだよ?」
「それはの、儂が妖術師の端くれじゃからじゃ」
「え!? それ本当かよ!」
「本当じゃとも。でないと今ここにいる妖怪たちを見ることは出来ておらんでの」
確かに、狐々愛たちは普段から普通の人間には姿が見えないようにしている。
それが見えているということは、新明が妖術師というのは本当だろう。
「奏の爺ちゃんが妖術師なのはわかったけど、この日妖連ってのと関係してんのか?」
「うむ、儂もこの日妖連に加盟しておる妖術師じゃからの。というか、今の時代で日妖連に加盟せずに妖術師を名乗るのは禁止されておる」
「成る程な……で、俺たちにこの紙を見せてどうするんだ?」
「日妖連は毎年一回、妖術師の認定試験をしておる。それに合格すれば君達も晴れて妖術師の仲間入りが出来るのじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。妖術師って、俺たちが!?」
「君達にはとんでもない潜在能力がある。それを腐らせるのはもったいない」
悠火たちには話が急すぎて頭が追いつかない。
一人を除いて。
「つまり、僕たちが妖術師になれば鵺への戦力も他の妖術師の情報も入って一石二鳥ってことですね」
流石は秀才光秀、この状況をバカの悠火、奏鳴にもわかりやすいようにまとめてくれる。
光秀のおかげで何となく話の全容が理解できたバカ二人は興奮しながら言った。
「じゃあ、俺たちもついに妖術師の仲間入りか!」
「いいな! 厨二っぽくて!」
「あのね、僕たちみたいな妖術のよの字も知らないような未成年が試験に受かるわけないだろ?」
光秀はもっともな意見を述べる。
しかし今回は光秀の意見に反論する者がいた。
「いや、そうでもないぞ? 君達の従える天狐に鬼は特級の妖怪。それだけで並みの妖術師など相手にならん」
「そ、そうなんですか?」
「うむ、式神の力を十分発揮出来ない今でも、既に儂より強いじゃろ」
現役の妖術師からのお墨付きだ、これなら光秀も何も言えない。
バカ二人のワクワクはもう止まらない。
「そうと決まれば、早速試験だ!」
「行くぜ!」
「待ちなさい」
今度はバカ二人の意見に待ったがかかった。
「試験は年に一回と言っておろう。次の試験は三ヶ月後じゃ」
「えー! 三ヶ月も待てねぇよ」
まるでただをこねる子供だ。
「君達はそれでもいいかも知れんが、光秀君には君達と違って式神がいない」
そうだった。
悠火には狐々愛が、奏鳴には黒鬼と白鬼がそれぞれ付いているが、光秀には式神がいない。
そのことにようやく気がついたらしい。
「ああ、そっか。じゃあ光秀の式神の探しに行くか?」
「仮に見つかったとしても、妾たちのような特級である確率は低かろう。それにもし仮に特級であっても、式神に出来る例は稀なのじゃ」
「う〜ん、打つ手なしか?」
全員が頭を悩ませたその時、何者かが部屋に入ってきた。
「誰だ!」
「僕です、天空です。お邪魔してもよろしいですか?」
つい先ほどまで死闘を繰り広げていた天空がそこにいた。
「成る程……そういうことですか」
「だから、天空! 光秀の式神になってくれ!」
「お断りさせて頂きます」
即答だった。
「すみません、僕は誰の式神にもなれません」
天空が申し訳なさそうに言う。
「いえ、気にしないでください」
光秀はそう言うが、少し残念そうだ。
少しばかり期待していたのだろう。
「式神になれない代わりと言っては何ですが、これを差し上げます」
天空は懐から一冊の本を取り出し光秀に手渡した。
「これは?」
「それは術式に関する本です。古より伝わるあらゆる術式が載っています。君なら習得できるはずです、見たところ君が一番頭良さそうですし」
天空は案外毒舌のようだ。
涼しい爽やかな顔をして平気で毒を吐く。
「ありがとうございます。大切にします」
「はい、そうしていただけるとありがたいです」
これで光秀が術式を覚えれば、三人とも妖術師になることが出来る。
そう意気込んだ矢先、天空が言った。
「うちの総隊長が君達に会いたいそうです。会っていただいてもよろしいですか?」
「総隊長が? 別にいいけど」
光秀、奏鳴もそれに頷く。
「それでは、開門符」
天空が門のようなものを開く。
「すげぇ……なんじゃこりゃ!」
悠火は一度狐々愛が妖域に行く際に見ているが奏鳴と光秀はこれが初めてなのだ。
青い猫型ロボットの出すピンクのドアとは違い、半透明で輝いている門はとてもカッコよく見える。
「開門符、指定した場所に門を開くことの出来る妖符です」
天空に続いて悠火たちも門に入る。
「それではお連れします。我々の本部へ!」
目の前が真っ白に光る。
咄嗟に目を瞑り、再度目を開けるとそこには古びた館が建っていた。
「それでは総隊長の元へ案内します」
悠火たちは天空の後に続いて館の中へと足を踏み入れた。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
本当なら天空の再登場はもっと後になる予定でした。なのにすぐ再登場って……なんか自分の計画性のなさが浮き彫りになった気がする……
次回、総隊長とその他幹部が登場します。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
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