人外と友達になる方法
第35話 決勝リーグ 〜認定試験篇〜
決勝リーグのメンバーが揃い、いよいよ決勝リーグが始まった。
ここでも運良く三人はバラバラだっため、当たるとすれば悠火と光秀が準決勝で当たる。
「第一試合始め!」
決勝リーグでは一試合ずつ行うようだ。
一試合目は二十歳ほどの青年と、僧侶風の男だ。
試合結果は僧侶の勝ちだった。
第二試合は奏鳴の出番である。
しかし運が悪いことに、相手が女子だった。
「奏鳴ドンマイ」
「まだ負けてねぇよ!」
試合の準備が整い、開始が告げられる。
相手は奏鳴の出方を伺っているのか動かない。
ただいつげも攻撃出来るように妖符は持っている。
「それじゃ行くぞ、力を貸してくれ」
奏鳴は指輪に向かってそう囁いた。
次と瞬間奏鳴の姿が消え、一瞬後に相手の姿も消えた。
一見、目にも留まらぬ速さの攻防なのかと思いきや、相手の女子が場外にいた。
どういうことなのか説明すると、奏鳴が高速で移動し、相手の女子を抱き抱え、そのまま場外に優しく出す、ということだ。
こうして奏鳴も無事初戦を突破した。
続く第三試合光秀の戦う相手はめちゃくちゃ強面の大男だった。悠火の初戦の相手が可愛く見えるほどの。
「勝てそうか?」
「ん〜やってみないとわからないけど、大丈夫だと思うよ」
「爽やか君め……勝てよ」
悠火と光秀が互いの拳をぶつけ合う、まるで青春ストーリーのようだ。
「任せといて」
試合開始と同時に相手は光秀に術式をかけた。
どうやら体の自由を奪う術式のようだ。見かけによらず器用な術式である。
「ふははは! これで貴様は口を動かせまい。貴様が今までの試合全てを術式で勝っているのは知っておるぞ! 術式を使えぬ貴様を倒すことなど、赤子の手を捻るより容易い!」
なんでこうもフラグめいたことを言うのだろう。
あと、完全に余談だが、赤子の手は絶対に捻れない。
だって可愛いんだもの!
「…………」
光秀は身動きを取れずにいた。
何やら周りで見ている女子の一部が相手に向かって最低だの、酷いだの言っている。光秀に惚れた親衛隊のようなものが出来上がっていた。
「イケメンって怖ぇ……」
しかし相手は聞こえていないのか、それともハートが強いのか、光秀にとどめを刺そうとしていた。
しかし、腕を振り上げたところで動きが止まった。
「やれやれ、少し時間がかかっちゃったな」
「な……貴様……うご……」
「ん? 何で動けるのかって? それはね」
光秀が相手の額にデコピンを入れる。
すると、巨漢が小石のように軽々と吹き飛んでいった。
「秘密だよ」
今のは女子が耳元で言われると萌えるやつだ。
無事光秀も勝利し、いよいよ悠火の番だ。
悠火の相手はラッキーなことに今にも倒れそうなヨボヨボのお爺さんだった。
「だ、大丈夫ですか?」
「…………は?」
「お体大丈夫ですか?」
「……何?」
駄目だ、耳が遠すぎて聞こえていないのからしい。
だが、それでも予選を勝ち抜いた猛者には違いない。
油断は出来ない。
「試合開始!」
「……は?」
開始の合図も聞こえてないらしい。
仕方なく審判が文字に書いて見せる。
しかし、老眼で見えないようだ。
老眼鏡をかけてようやく理解したようだ。
「おお、開始と言ったのか。すまんすまん」
老人は悠火に一礼する。
悠火もつられて一礼する。
悠火が顔を上げた時、まだ老人は頭を下げていた。
恐る恐る近づくと寝息が聞こえる。
(この爺さん立ったまま寝てやがる!)
老人がハッと急に目を覚ました。
「ふぅ……よう寝たわい」
さて、どうしたものか。
この老人をボコボコにするわけにはいかない。
かといって負ける気もない。
「あの〜相談なんですけど棄権してくれませんかね?」
「……は?」
また聞こえてないのかと悠火がため息を吐こうとした時声が聞こえた。
「付け上がるなよ、小僧!」
「え?」
老人の声がはっきり聞こえた。
まるで先ほどまでとは別人だ。
『悠火! 離れろ!』
咄嗟に後ろへ飛んで距離を取る。
悠火の服が少し破れる。
「ほう、よく避けたの。ワシの風迅を」
「さっきまでのヨボヨボ爺さんは何だったんだよ!」
「ふぉっふぉ! ……何て?」
「また戻った!」
「冗談じゃ!」
老人が悠火に向かって進軍する。
着地してすぐの悠火は迎撃に入るのが遅れる。
そして、戦いにおいて一瞬の遅れは命取りだった。
「風牙!」
老人の放った風の斬撃が悠火に迫る。
(くそ! 出し惜しみしてる場合じゃない!)
「行くぞ! 狐々愛!」
『行くぞ! 悠火!』
「『術式反転』」
風の斬撃が進む方向を変え、老人に向かって進み始める。
「何! ふんっ!」
老人は迫る斬撃に新たな斬撃を衝突させ打ち消す。
「……成る程の」
老人はゆっくりと悠火に歩み寄る。
「その歳でそこまで妖狐の力を扱えるのは見事じゃ」
老人が悠火にしか聞こえないほどの小声で言った。
周りで見ているギャラリーは急に戦いが止まり戸惑っている。
「爺さん、なんで俺が妖狐の力を使ってるのがわかったんだ?」
「わかるさ、ワシも妖術を使う者の端くれじゃ。これからも精進せえよ」
老人は審判に向かって言った。
「ワシの負けじゃ」
審判は突然のことに驚いていたが、試合の終わりを告げた。
「そこまで!」
そして悠火の勝利が告げられる。
こうして無事に初戦を突破することが出来た。
決勝リーグ二回戦開始!
読んでいただきありがとうございます。コングです。
今回出てきた謎の爺さん。この話で説明したかったんですが、文字数の関係で後回しになりました。
これだけは言っておくと、出落ちキャラではないです。
新キャラ2人目です。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
ここでも運良く三人はバラバラだっため、当たるとすれば悠火と光秀が準決勝で当たる。
「第一試合始め!」
決勝リーグでは一試合ずつ行うようだ。
一試合目は二十歳ほどの青年と、僧侶風の男だ。
試合結果は僧侶の勝ちだった。
第二試合は奏鳴の出番である。
しかし運が悪いことに、相手が女子だった。
「奏鳴ドンマイ」
「まだ負けてねぇよ!」
試合の準備が整い、開始が告げられる。
相手は奏鳴の出方を伺っているのか動かない。
ただいつげも攻撃出来るように妖符は持っている。
「それじゃ行くぞ、力を貸してくれ」
奏鳴は指輪に向かってそう囁いた。
次と瞬間奏鳴の姿が消え、一瞬後に相手の姿も消えた。
一見、目にも留まらぬ速さの攻防なのかと思いきや、相手の女子が場外にいた。
どういうことなのか説明すると、奏鳴が高速で移動し、相手の女子を抱き抱え、そのまま場外に優しく出す、ということだ。
こうして奏鳴も無事初戦を突破した。
続く第三試合光秀の戦う相手はめちゃくちゃ強面の大男だった。悠火の初戦の相手が可愛く見えるほどの。
「勝てそうか?」
「ん〜やってみないとわからないけど、大丈夫だと思うよ」
「爽やか君め……勝てよ」
悠火と光秀が互いの拳をぶつけ合う、まるで青春ストーリーのようだ。
「任せといて」
試合開始と同時に相手は光秀に術式をかけた。
どうやら体の自由を奪う術式のようだ。見かけによらず器用な術式である。
「ふははは! これで貴様は口を動かせまい。貴様が今までの試合全てを術式で勝っているのは知っておるぞ! 術式を使えぬ貴様を倒すことなど、赤子の手を捻るより容易い!」
なんでこうもフラグめいたことを言うのだろう。
あと、完全に余談だが、赤子の手は絶対に捻れない。
だって可愛いんだもの!
「…………」
光秀は身動きを取れずにいた。
何やら周りで見ている女子の一部が相手に向かって最低だの、酷いだの言っている。光秀に惚れた親衛隊のようなものが出来上がっていた。
「イケメンって怖ぇ……」
しかし相手は聞こえていないのか、それともハートが強いのか、光秀にとどめを刺そうとしていた。
しかし、腕を振り上げたところで動きが止まった。
「やれやれ、少し時間がかかっちゃったな」
「な……貴様……うご……」
「ん? 何で動けるのかって? それはね」
光秀が相手の額にデコピンを入れる。
すると、巨漢が小石のように軽々と吹き飛んでいった。
「秘密だよ」
今のは女子が耳元で言われると萌えるやつだ。
無事光秀も勝利し、いよいよ悠火の番だ。
悠火の相手はラッキーなことに今にも倒れそうなヨボヨボのお爺さんだった。
「だ、大丈夫ですか?」
「…………は?」
「お体大丈夫ですか?」
「……何?」
駄目だ、耳が遠すぎて聞こえていないのからしい。
だが、それでも予選を勝ち抜いた猛者には違いない。
油断は出来ない。
「試合開始!」
「……は?」
開始の合図も聞こえてないらしい。
仕方なく審判が文字に書いて見せる。
しかし、老眼で見えないようだ。
老眼鏡をかけてようやく理解したようだ。
「おお、開始と言ったのか。すまんすまん」
老人は悠火に一礼する。
悠火もつられて一礼する。
悠火が顔を上げた時、まだ老人は頭を下げていた。
恐る恐る近づくと寝息が聞こえる。
(この爺さん立ったまま寝てやがる!)
老人がハッと急に目を覚ました。
「ふぅ……よう寝たわい」
さて、どうしたものか。
この老人をボコボコにするわけにはいかない。
かといって負ける気もない。
「あの〜相談なんですけど棄権してくれませんかね?」
「……は?」
また聞こえてないのかと悠火がため息を吐こうとした時声が聞こえた。
「付け上がるなよ、小僧!」
「え?」
老人の声がはっきり聞こえた。
まるで先ほどまでとは別人だ。
『悠火! 離れろ!』
咄嗟に後ろへ飛んで距離を取る。
悠火の服が少し破れる。
「ほう、よく避けたの。ワシの風迅を」
「さっきまでのヨボヨボ爺さんは何だったんだよ!」
「ふぉっふぉ! ……何て?」
「また戻った!」
「冗談じゃ!」
老人が悠火に向かって進軍する。
着地してすぐの悠火は迎撃に入るのが遅れる。
そして、戦いにおいて一瞬の遅れは命取りだった。
「風牙!」
老人の放った風の斬撃が悠火に迫る。
(くそ! 出し惜しみしてる場合じゃない!)
「行くぞ! 狐々愛!」
『行くぞ! 悠火!』
「『術式反転』」
風の斬撃が進む方向を変え、老人に向かって進み始める。
「何! ふんっ!」
老人は迫る斬撃に新たな斬撃を衝突させ打ち消す。
「……成る程の」
老人はゆっくりと悠火に歩み寄る。
「その歳でそこまで妖狐の力を扱えるのは見事じゃ」
老人が悠火にしか聞こえないほどの小声で言った。
周りで見ているギャラリーは急に戦いが止まり戸惑っている。
「爺さん、なんで俺が妖狐の力を使ってるのがわかったんだ?」
「わかるさ、ワシも妖術を使う者の端くれじゃ。これからも精進せえよ」
老人は審判に向かって言った。
「ワシの負けじゃ」
審判は突然のことに驚いていたが、試合の終わりを告げた。
「そこまで!」
そして悠火の勝利が告げられる。
こうして無事に初戦を突破することが出来た。
決勝リーグ二回戦開始!
読んでいただきありがとうございます。コングです。
今回出てきた謎の爺さん。この話で説明したかったんですが、文字数の関係で後回しになりました。
これだけは言っておくと、出落ちキャラではないです。
新キャラ2人目です。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
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