人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第51話 大岩パニック 〜古の祠篇〜

 無事に隊の申請を終え、悠火達は結月からの依頼へと出向いた。
 場所はだいぶ遠い。というかめちゃくちゃ遠い。何せ目的地は遠く離れた孤島なのだ。
 しかし、日妖連の本部には移動の際に便利なものがある。
 転送門てんそうもんと呼ばれる大きな鳥居だ。名前の通り、通過した者を任意の場所へと転送するものだ。
 その門を通り悠火達は依頼の目的地である、真竜島しんりゅうじまへと到着した。

「おお! もう着いた!」

「当然でしょ、転送門を使ったんだから」

「ここ無人島か!? ちょっと遊ぼうぜ!」

「ダメだよ奏。仕事なんだから」

「初めての任務……うぅ……お腹痛くなってきた…」

 五者五様の感想だ。
 いよいよ悠火達の妖術師としての本格的な活動が開始する。

「よっしゃ! いくぜ! 世界の平和のために!」




 悠火達が退出し静かになった部屋で、宗が結月に問う。

「何故ですか?」

「何故、とは?」

「何故姫様達にこの依頼をしたのかということです」

 宗は少し苛立ちを含んだ声で言った。

「姫ちゃんが強いのは知ってるだろ? それに他の子達も、優秀だよ? 筆記、実践、妖力量それぞれの首席だからね」

 柚月は落ち着いた様子で説明する。しかし宗は納得していない様子だ。

「それでも! この依頼は危険度レベルSです! 本来ならば最低でも上級が二十人がかりでやっと達成できるかどうかですよ!?」

「しかし、この依頼はどういうわけか一度に5人までしか妖術師が入島できない」

「それだけじゃ……」

任務に赴いた妖術師が1人の例外無く死んでいる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だろ?」

 結月の声はあくまでも冷静だ。宗とは対照的だ。

「そんな危険な任務に隊を作ってすぐの者たちを行かせるなど……」

「この程度で死ぬ様なら所詮そこまでの妖術師だったということだよ。私が……いや、私達妖術師がやっていることは慈善活動でも、ボランティアでもない。妖怪との、悪との命をかけた戦い……戦争だよ? 任務で命を散らすことは本望だと思うけどね?」

 宗は何も言い返せない。結月が言っていることが倫理観や世間論から見れば間違っているはわかっている。
 しかし、妖術師として生きる上での正論であることもまた事実だ。
 宗はそれ以上は食い下がるしかなかった。

「しかしだね……今回の依頼は少し期待しているんだ」

「……というと?」

「神託だよ。近々くだんの依頼を達成する者が現れる……とね」

「それが姫様だと?」

「いいや、どうだろうね……“現れる”だからね。もちろん姫ちゃんだという可能性も無いわけじゃない。しかし、私はだと思っている」

 結月が不敵な笑みを浮かべる。
 それは宗が知る中で最も楽しそうな顔だった。




 悠火達が入島してから約一時間。悠火達は島の中央あたりにいた。

「うおぉぉぉ!」

 五人は絶賛爆走中だ。
 原因は少し前に奏鳴が誤って発動させたトラップだ。巨大な岩が後ろから転がってきたのだ。

「おい奏! 何してくれたんだ!」

「あんなに勝手な行動は謹んでって言ったのに!」

「ちょっと単細胞! なんとかしなさいよ!」

「皆さん脚速すぎです……」

 三人が奏鳴を責めて、一人は自分のことで精一杯だ。そして、元凶そうめいはというと。

「みんなごめん! でも、もっと速く走らないとやばいぞ!」

 四人の少し前を走っている。バック走・・・・で。

「なんであんたはそんなに余裕なのよ!?」

「多分真白だな」

「だね」

 真白こと白鬼は狐々愛曰く、全妖怪の中で最速の移動速度を誇る。攻撃特化の黒鬼くろなと合わせればかなり強い。

「竜夜頑張れよ! 何なら奏がおんぶして走るからな!」

「うっ……まあ俺が原因だし仕方ないけど…」

「いえ……大丈夫です……」

 見るからに大丈夫ではないのだが。
 すると竜夜は何か札の様なものを取り出した。

俊脚符しゅんきゃくふ!」

 どうやら妖符の様だ。俊脚符は使用者の脚力を向上させる。つまり、走力も上がるのだ。

「これで大丈夫です!」

 竜夜は遊火達に追いついて来た。奏鳴に勝るとも劣らない速度だ。
 しかし、一体いつまで逃げればいいのだろう。こういう罠なら途中に大岩をやり過ごす横穴があるのが定石だ。しかし、この罠が対象を殺すためのものならそんなサービスあるわけがない。

「おい、光秀! これいい加減どうするよ!」

「う〜ん……圧倒的火力で破壊が一番手っ取り早いかな」

「なら俺に任せろ!」

 そう言うと奏鳴は拳に黒靄を纏わせで大岩の中心を突く。
 すると、ヒビが入ったかと思うと、あっという間に崩れ落ちて大岩が瓦礫の山になった。

「ふぅ」

「ふぅ、じゃないわよ! できるならもっと早くやりなさいよ!」

 奏鳴は舞姫に頭を引っ叩かれる。全くその通りだ。今回は擁護してやらない。
 それはそうと頭を引っ叩かれた奏鳴は少し嬉しそうだった。




読んでいただきありがとうございます!
今年は花粉が多いと世間が騒いでおりますが、何故か今年は花粉症が発症しなかったコングです!

50話を終えたので、少し挨拶を変えてみようと思います。ええ。
特に意味はないんですがね。

どうでもいい近況報告の場となりつつあるここは後書きと呼んでいいのだろうか……?

それではまた次回!



2020/5/25一部改稿

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