人外と友達になる方法
第53話 仲違い 〜古の祠篇〜
祠の入り口の扉に手を当てる。この先が依頼のゴールだ。
「それじゃ行くぞ」
悠火は四人と顔を見合わせ合図をしてから祠への入り口を開ける。中から冷たい空気が溢れ出る。
扉が完全に開き薄暗い祠が現れる。
しかし悠火達は祠ではなく祠の前に佇む一人の男に釘付けになった。
ぱっと見は人に見える。以前までの悠火なら間違いなく人だと思っただろう。しかし、目の前のそれが放つ雰囲気は完全に人間ではなかった。
「誰だ……お前?」
「俺か? 俺の名は青龍」
その名には聞き覚えがあった。
十二天将のにして、四神の一角。朱雀、玄武、白虎に並ぶ大妖怪だ。
「まさか……十二天将の?」
「如何にも、俺は十二天将の青龍だ。だが今となっては元十二天将だがな」
「元? どういうことだ?」
「十二天将は壊滅した。今となってはかつての同胞の居場所すらわからぬ。生きているかすらも怪しい」
「全員はわからないけど、十二天将になら会ったことあるぞ?」
事実悠火たちは十二天将の内、三人に会っている。
「何? それは誰だ? 誰に会ったのだ小僧」
「えっと、貴人のおっさんに、天空、あと六合さんにも会ったことあるぞ」
青龍は少し驚いたような顔をしている。
行方知らずの同胞の居場所がわかったのだ、仕方あるまい。
「そうか……生きていたのか……」
「ああ、だから……」
悠火は貴人たちのことをもっと詳しく話そうとした。
「あの裏切り者供が! まだ生きているだと!? 今すぐ俺が始末してやる!」
今度は悠火達が驚く番だった。
青龍の言葉は決して仲間に向けての言葉ではない。むしろ、因縁の相手へ向ける言葉だ。彼らは仲間のはずなのに一体どうしたというのか。
「どういうことだよ! 裏切り者ってなんだよ!」
青龍は少し間を置き、落ち着いてから話す。
「言葉の通りだ。あいつらは裏切ったんだ! 晴明様を!」
「晴明……安倍晴明か……」
光秀がそっと呟く。
「奴らが晴明様の呼びかけに応じなかったせいで、晴明様は力を封印されてしまった! 式神でありながら主人を裏切った報いは必ず受けてもらう!」
青龍が激昂する。
しかし気になる点があった。狐々愛の話では式神は主人の命令に逆らえないはずだ。
『そのはずじゃ……主人の命令に逆らうと罰則が与えられるのじゃ。種類は様々じゃが、最低でも罰式や、軽度の妖力封印、重いものじゃと違反即封印などがある』
「どれも妖怪にとっては不利益ばかりだな」
『じゃな』
青龍は怒り冷めやらぬ様子だ。
抑えられていた妖力が溢れ出し始める。その妖力は軽々雷王のものを超える。全力ではなかったとは言え、同じ十二天将の天空や特級の黒奈、真白よりも高いとは驚きだ。
狐々愛と比べても遜色ないほどだ。
「奴らの居場所を吐け、小僧。そうすれば命だけは勘弁してやる。返答は間違えるなよ」
青龍にとってここにいる五人を殺すことは容易いのだろう。
確かに人数で優っているとは言え、相手は妖怪の中でも最上級の十二天将だ。
そして、特級妖怪の中にも神獣と呼ばれる上位の妖怪がいる。十二天将や、各地方の守護妖怪などがこれに当たる。
同じ特級でも神獣とそれ以外では力の差は歴然だ。
「仲間を売れってか?」
知り合っての期間は短い。しかし天空も貴人も六合も、今は大切な仲間だ。彼らが強いのは嫌という程知っている。
しかし、だからといって自分の命可愛さに売るなんてことはできるはずがなかった。
「それはできない相談だ。お前らに何があったのかは知らない。昔は仲間だったんだろ? それなのにそんなに憎しみを抱くってことは何かがあったってことはわかる。だとしても、俺は仲間を……友達を売ることはできない」
「残念だ……返答は間違えるなと言ったのだがな。もう少し賢いと思ったが、違ったようだ。俺を目の前にして戦うことを選ぶとは愚かだな」
青龍の妖力がさらに膨れ上がる。
狐々愛に匹敵するほどだ。とてつもないプレッシャーが悠火達を襲う。肌に突き刺さるような妖気だ。
ただ立っているだけでも辛い。
「まあいい……奴らが生きているとわかっただけでも収穫はあった。せめてもの慈悲だ、苦しむことなく殺してやろう」
青龍が臨戦態勢をとる。悠火達もそれに合わせてそれぞれが構える。
「不味いわね……」
「あいつの強さは半端じゃねぇな」
「間違いなく危険度SS以上よ」
妖術師の任務には全部で十二段階の危険度が存在する。
下級妖術師一人で対応可能なC、五人で対応可能なCC、十人で対応可能なCCC、というふうに危険度は上がって行き、危険度Sは上級二十人で、危険度SSに至っては上級三十人だ。
つまり、上級四人に下級一人の伊鳴隊では青龍の相手は荷が重い。
「では行くぞ!」
青龍が地面を蹴る。憑依で強化した視力でも消えたと錯覚するほどの速度だ。
「右だ!」
辛うじて青龍の動きを捕捉できたのは悠火と奏鳴だけだった。
「妖封壁!」
光秀が青龍との間に結界を張る。しかし。
「こんなんで俺が止まるかよ!」
青龍の拳は結界を容易く砕く。割られた結界が音もなく崩れ去って行く。
「さあ……お前らは俺を楽しませてくれるのか?」
伊鳴隊vs青龍開幕
読んでいただきありがとうございます。
危険度Aのコングです。はい、嘘です。安心安全のコングです。
本編でできなかった危険度の話をしたいと思います。
C…下級妖術師一人で対応可能
CC…下級妖術師五人で対応可能
CCC…下級妖術師十人で対応可能
B…下級妖術師二十人で対応可能
BB…下級妖術師三十人で対応可能
BBB…下級妖術師五十人で対応可能
A…上級妖術師一人で対応可能
AA…上級妖術師五人で対応可能
AAA…上級妖術師十人で対応可能
S…上級妖術師二十人で対応可能
SS…上級妖術師三十人で対応可能
SSS…上級妖術師五十人で対応可能
こんな感じです。まあこれから先出てくるとしても危険度A以上だと思うので覚えなくていいです。
多分僕もあやふやになると思うし……
それではまた次回!
2020/5/26一部改稿
「それじゃ行くぞ」
悠火は四人と顔を見合わせ合図をしてから祠への入り口を開ける。中から冷たい空気が溢れ出る。
扉が完全に開き薄暗い祠が現れる。
しかし悠火達は祠ではなく祠の前に佇む一人の男に釘付けになった。
ぱっと見は人に見える。以前までの悠火なら間違いなく人だと思っただろう。しかし、目の前のそれが放つ雰囲気は完全に人間ではなかった。
「誰だ……お前?」
「俺か? 俺の名は青龍」
その名には聞き覚えがあった。
十二天将のにして、四神の一角。朱雀、玄武、白虎に並ぶ大妖怪だ。
「まさか……十二天将の?」
「如何にも、俺は十二天将の青龍だ。だが今となっては元十二天将だがな」
「元? どういうことだ?」
「十二天将は壊滅した。今となってはかつての同胞の居場所すらわからぬ。生きているかすらも怪しい」
「全員はわからないけど、十二天将になら会ったことあるぞ?」
事実悠火たちは十二天将の内、三人に会っている。
「何? それは誰だ? 誰に会ったのだ小僧」
「えっと、貴人のおっさんに、天空、あと六合さんにも会ったことあるぞ」
青龍は少し驚いたような顔をしている。
行方知らずの同胞の居場所がわかったのだ、仕方あるまい。
「そうか……生きていたのか……」
「ああ、だから……」
悠火は貴人たちのことをもっと詳しく話そうとした。
「あの裏切り者供が! まだ生きているだと!? 今すぐ俺が始末してやる!」
今度は悠火達が驚く番だった。
青龍の言葉は決して仲間に向けての言葉ではない。むしろ、因縁の相手へ向ける言葉だ。彼らは仲間のはずなのに一体どうしたというのか。
「どういうことだよ! 裏切り者ってなんだよ!」
青龍は少し間を置き、落ち着いてから話す。
「言葉の通りだ。あいつらは裏切ったんだ! 晴明様を!」
「晴明……安倍晴明か……」
光秀がそっと呟く。
「奴らが晴明様の呼びかけに応じなかったせいで、晴明様は力を封印されてしまった! 式神でありながら主人を裏切った報いは必ず受けてもらう!」
青龍が激昂する。
しかし気になる点があった。狐々愛の話では式神は主人の命令に逆らえないはずだ。
『そのはずじゃ……主人の命令に逆らうと罰則が与えられるのじゃ。種類は様々じゃが、最低でも罰式や、軽度の妖力封印、重いものじゃと違反即封印などがある』
「どれも妖怪にとっては不利益ばかりだな」
『じゃな』
青龍は怒り冷めやらぬ様子だ。
抑えられていた妖力が溢れ出し始める。その妖力は軽々雷王のものを超える。全力ではなかったとは言え、同じ十二天将の天空や特級の黒奈、真白よりも高いとは驚きだ。
狐々愛と比べても遜色ないほどだ。
「奴らの居場所を吐け、小僧。そうすれば命だけは勘弁してやる。返答は間違えるなよ」
青龍にとってここにいる五人を殺すことは容易いのだろう。
確かに人数で優っているとは言え、相手は妖怪の中でも最上級の十二天将だ。
そして、特級妖怪の中にも神獣と呼ばれる上位の妖怪がいる。十二天将や、各地方の守護妖怪などがこれに当たる。
同じ特級でも神獣とそれ以外では力の差は歴然だ。
「仲間を売れってか?」
知り合っての期間は短い。しかし天空も貴人も六合も、今は大切な仲間だ。彼らが強いのは嫌という程知っている。
しかし、だからといって自分の命可愛さに売るなんてことはできるはずがなかった。
「それはできない相談だ。お前らに何があったのかは知らない。昔は仲間だったんだろ? それなのにそんなに憎しみを抱くってことは何かがあったってことはわかる。だとしても、俺は仲間を……友達を売ることはできない」
「残念だ……返答は間違えるなと言ったのだがな。もう少し賢いと思ったが、違ったようだ。俺を目の前にして戦うことを選ぶとは愚かだな」
青龍の妖力がさらに膨れ上がる。
狐々愛に匹敵するほどだ。とてつもないプレッシャーが悠火達を襲う。肌に突き刺さるような妖気だ。
ただ立っているだけでも辛い。
「まあいい……奴らが生きているとわかっただけでも収穫はあった。せめてもの慈悲だ、苦しむことなく殺してやろう」
青龍が臨戦態勢をとる。悠火達もそれに合わせてそれぞれが構える。
「不味いわね……」
「あいつの強さは半端じゃねぇな」
「間違いなく危険度SS以上よ」
妖術師の任務には全部で十二段階の危険度が存在する。
下級妖術師一人で対応可能なC、五人で対応可能なCC、十人で対応可能なCCC、というふうに危険度は上がって行き、危険度Sは上級二十人で、危険度SSに至っては上級三十人だ。
つまり、上級四人に下級一人の伊鳴隊では青龍の相手は荷が重い。
「では行くぞ!」
青龍が地面を蹴る。憑依で強化した視力でも消えたと錯覚するほどの速度だ。
「右だ!」
辛うじて青龍の動きを捕捉できたのは悠火と奏鳴だけだった。
「妖封壁!」
光秀が青龍との間に結界を張る。しかし。
「こんなんで俺が止まるかよ!」
青龍の拳は結界を容易く砕く。割られた結界が音もなく崩れ去って行く。
「さあ……お前らは俺を楽しませてくれるのか?」
伊鳴隊vs青龍開幕
読んでいただきありがとうございます。
危険度Aのコングです。はい、嘘です。安心安全のコングです。
本編でできなかった危険度の話をしたいと思います。
C…下級妖術師一人で対応可能
CC…下級妖術師五人で対応可能
CCC…下級妖術師十人で対応可能
B…下級妖術師二十人で対応可能
BB…下級妖術師三十人で対応可能
BBB…下級妖術師五十人で対応可能
A…上級妖術師一人で対応可能
AA…上級妖術師五人で対応可能
AAA…上級妖術師十人で対応可能
S…上級妖術師二十人で対応可能
SS…上級妖術師三十人で対応可能
SSS…上級妖術師五十人で対応可能
こんな感じです。まあこれから先出てくるとしても危険度A以上だと思うので覚えなくていいです。
多分僕もあやふやになると思うし……
それではまた次回!
2020/5/26一部改稿
「現代アクション」の人気作品
書籍化作品
-
-
11128
-
-
3
-
-
4
-
-
1168
-
-
111
-
-
75
-
-
516
-
-
221
-
-
314
コメント