人外と友達になる方法
第54話 師弟関係 〜古の祠篇〜
崩れ去る結界を見ながら悠火は考える。
結界を一撃で砕く攻撃をまともに食らえば、例え憑依していようと致命傷だ。
「どうする光秀」
隊の頭脳である光秀に作戦立案を任せる。
必要とあらば悠火と奏鳴で時間を稼ぐこともできる。
しかしせいぜい少し足止めするのが関の山だ。
「青龍の固有術式がわからないからには作戦も何もない。適度に距離を取りながら青龍の固有術式を把握していくしかないね」
「「了解!」」
悠火は炎の弓を構え、奏鳴は黒靄を凝縮した黒い玉を生成する。
「灼火之弓・猛火!」
「黒点!」
二人の放った攻撃は目にも留まらぬ速さで青龍に向かって行く。
青龍は避けることができず直撃する。
「やったか!」
「奏! それフラグだぞ!」
そして案の定青龍は無傷でピンピンしていた。
「ほぉ……面白い! これなら俺も久々に楽しめそうだ!」
青龍は懐から何かを取り出す。武器を取り出すのだろうか。
しかし、青龍が取り出したのは想像していたものとは違っていた。
「た、種?」
青龍が取り出したのは植物の種だった。
「特別に見せてやろう、俺の術式を!」
地面に落ちた種は恐ろしいほどの速度で発芽し、そして成長する。
あっという間に青龍の背丈ほどの高さになった植物はまるで意思を持っているかのように動く。
「悠火、あの植物を燃やしてみて」
「ああ、わかった」
悠火は再び攻撃をする。先程と同じ灼火之弓だ。
「灼火之弓・猛火」
先程同様業火の矢が放たれる。そしてそのまま植物に激突、爆発する。しかしー
「そんな攻撃じゃ傷一つつけられねぇよ」
植物には傷一つなく、青々と茂っている。
それよりも気のせいだろうか、先程よりも成長しているかにも見える。いや、気のせいではない。植物がメキメキと音を立てて急成長し始めたのだ。
「何っ! どうなってるんだ!」
「俺の植物は他人の妖力を吸収して成長する。つまり! お前らの攻撃は全て! 俺にとっては養分! 栄養! 食事なんだよ!」
他人の術式を利用する。それがどれだけ反則級の能力かは同じ能力を使う悠火が一番よくわかっている。
「狐々愛、あの術式の弱点は何かないのか?」
『あるにはある』
「どんな?」
『一つ目は奴の許容量を超える妖力を与えてパンクさせること。二つ目は弱点属性の術式を叩き込むことじゃ』
「植物の弱点は火じゃないのか?」
『そのはずじゃ……じゃが効いてはおらんようじゃな……』
先程悠火が放った灼火之弓は全く効いてないようだった。奏鳴の黒点も同様だ。
「それじゃお返しするぜ」
植物が蠢き鞭のようにしなり悠火達に襲いかかる。
避けられないほどの速さではないが、数が多い。
「全員僕の後ろに!」
光秀はそう言うと妖符を取り出して唱える。
「風刃符!」
植物達が風の刃に引き裂かれて行く。切られた植物達は液体を撒き散らしながら暴れている。
「ナイス光秀!」
植物が再生する隙に悠火、奏鳴、舞姫の三人が飛び出す。竜夜は光秀の支援だ。
「灼火之太刀・神楽!」
「黒撃!」
「蓮華之型・絶影!」
上級妖術師三人の攻撃を受けて無傷では済むまい。
しかしその想いは土煙の中に悠然と立つ青龍の姿に打ち砕かれた。
「いい……いい痛みだ……痛みを感じたのは何年ぶりだ? もう忘れる程前のことだ……」
「そんな……効いてないだと……?」
「おいそこのお前。名は?」
青龍が悠火を指差す。
「何だ? 悠火……伊鳴悠火だ」
「悠火、お前の炎……いや、お前の妖力に覚えがある。お前のその妖力は妖狐のものだな?」
「だったら何だ」
「妖狐に知り合いがいるんだ。まあ、今は封印されてどこにいるかさえわからんがな」
十二天将の青龍と知り合いの妖狐。
悠火はその妖狐に心当たりがある。というか心当たりしかない。
「狐々愛」
悠火は狐々愛を呼び出す。
「久しぶりじゃの龍坊」
青龍は驚いた顔で硬直している。
先程までとは打って変わって隙だらけだ。
「天狐様……ですか?」
「ああ。妾は正真正銘天狐じゃ。今は狐々愛という名を名乗っておるがな」
青龍の動揺は収まる様子がない。
「なぁ、狐々愛。あいつとどんな関係なんだ?」
「奴が十二天将と呼ばれる前、まだ上級妖怪じゃった頃に稽古をつけてやったのじゃ。つまり師弟関係じゃな」
十二天将の一角、青龍の師匠。
もしかしたら狐々愛はとんでもない妖怪なのではないか、と悠火は少し身震いした。
それはさておき、青龍の師匠なら何か弱点を知っているかもしれない。
「狐々愛、あいつの弱点とか知らないのか? 固有術式とか」
「固有術式を使えるようになるのは特級からじゃ。妾が稽古をつけていた頃はまだ上級、固有術式は覚えておらんかった。弱点もこれといって特には……」
青龍はようやく動揺が収まった様子だ。
鋭い眼光でこちらを睨んでいる。貴人達の話を聞いた時よりもその目は怒りに満ちているように見えた。
「何故ですか……どうして何も言わずにいなくなってしまわれたですか! 俺の力を認めないまま!」
青龍の声は震えていた。まるで子供のように。
狐々愛はその声に応えるべく口を開いた。
読んでいただきありがとうございます。
旅行で行った名古屋城に、圧巻されて開いた口が塞がらないコングです。
当たり前だけど教科書で見たのと同じでした。
鯱鉾が思ってたより金ピカだった。
そして、名古屋名物「天むす」を食べて思ったね。あれをはじめに作った人を胴上げしてあげたい。もう美味いのなんのって。
それからはバナナと天むすが僕の好物です。
それではまた次回!
2020/5/26一部改稿
結界を一撃で砕く攻撃をまともに食らえば、例え憑依していようと致命傷だ。
「どうする光秀」
隊の頭脳である光秀に作戦立案を任せる。
必要とあらば悠火と奏鳴で時間を稼ぐこともできる。
しかしせいぜい少し足止めするのが関の山だ。
「青龍の固有術式がわからないからには作戦も何もない。適度に距離を取りながら青龍の固有術式を把握していくしかないね」
「「了解!」」
悠火は炎の弓を構え、奏鳴は黒靄を凝縮した黒い玉を生成する。
「灼火之弓・猛火!」
「黒点!」
二人の放った攻撃は目にも留まらぬ速さで青龍に向かって行く。
青龍は避けることができず直撃する。
「やったか!」
「奏! それフラグだぞ!」
そして案の定青龍は無傷でピンピンしていた。
「ほぉ……面白い! これなら俺も久々に楽しめそうだ!」
青龍は懐から何かを取り出す。武器を取り出すのだろうか。
しかし、青龍が取り出したのは想像していたものとは違っていた。
「た、種?」
青龍が取り出したのは植物の種だった。
「特別に見せてやろう、俺の術式を!」
地面に落ちた種は恐ろしいほどの速度で発芽し、そして成長する。
あっという間に青龍の背丈ほどの高さになった植物はまるで意思を持っているかのように動く。
「悠火、あの植物を燃やしてみて」
「ああ、わかった」
悠火は再び攻撃をする。先程と同じ灼火之弓だ。
「灼火之弓・猛火」
先程同様業火の矢が放たれる。そしてそのまま植物に激突、爆発する。しかしー
「そんな攻撃じゃ傷一つつけられねぇよ」
植物には傷一つなく、青々と茂っている。
それよりも気のせいだろうか、先程よりも成長しているかにも見える。いや、気のせいではない。植物がメキメキと音を立てて急成長し始めたのだ。
「何っ! どうなってるんだ!」
「俺の植物は他人の妖力を吸収して成長する。つまり! お前らの攻撃は全て! 俺にとっては養分! 栄養! 食事なんだよ!」
他人の術式を利用する。それがどれだけ反則級の能力かは同じ能力を使う悠火が一番よくわかっている。
「狐々愛、あの術式の弱点は何かないのか?」
『あるにはある』
「どんな?」
『一つ目は奴の許容量を超える妖力を与えてパンクさせること。二つ目は弱点属性の術式を叩き込むことじゃ』
「植物の弱点は火じゃないのか?」
『そのはずじゃ……じゃが効いてはおらんようじゃな……』
先程悠火が放った灼火之弓は全く効いてないようだった。奏鳴の黒点も同様だ。
「それじゃお返しするぜ」
植物が蠢き鞭のようにしなり悠火達に襲いかかる。
避けられないほどの速さではないが、数が多い。
「全員僕の後ろに!」
光秀はそう言うと妖符を取り出して唱える。
「風刃符!」
植物達が風の刃に引き裂かれて行く。切られた植物達は液体を撒き散らしながら暴れている。
「ナイス光秀!」
植物が再生する隙に悠火、奏鳴、舞姫の三人が飛び出す。竜夜は光秀の支援だ。
「灼火之太刀・神楽!」
「黒撃!」
「蓮華之型・絶影!」
上級妖術師三人の攻撃を受けて無傷では済むまい。
しかしその想いは土煙の中に悠然と立つ青龍の姿に打ち砕かれた。
「いい……いい痛みだ……痛みを感じたのは何年ぶりだ? もう忘れる程前のことだ……」
「そんな……効いてないだと……?」
「おいそこのお前。名は?」
青龍が悠火を指差す。
「何だ? 悠火……伊鳴悠火だ」
「悠火、お前の炎……いや、お前の妖力に覚えがある。お前のその妖力は妖狐のものだな?」
「だったら何だ」
「妖狐に知り合いがいるんだ。まあ、今は封印されてどこにいるかさえわからんがな」
十二天将の青龍と知り合いの妖狐。
悠火はその妖狐に心当たりがある。というか心当たりしかない。
「狐々愛」
悠火は狐々愛を呼び出す。
「久しぶりじゃの龍坊」
青龍は驚いた顔で硬直している。
先程までとは打って変わって隙だらけだ。
「天狐様……ですか?」
「ああ。妾は正真正銘天狐じゃ。今は狐々愛という名を名乗っておるがな」
青龍の動揺は収まる様子がない。
「なぁ、狐々愛。あいつとどんな関係なんだ?」
「奴が十二天将と呼ばれる前、まだ上級妖怪じゃった頃に稽古をつけてやったのじゃ。つまり師弟関係じゃな」
十二天将の一角、青龍の師匠。
もしかしたら狐々愛はとんでもない妖怪なのではないか、と悠火は少し身震いした。
それはさておき、青龍の師匠なら何か弱点を知っているかもしれない。
「狐々愛、あいつの弱点とか知らないのか? 固有術式とか」
「固有術式を使えるようになるのは特級からじゃ。妾が稽古をつけていた頃はまだ上級、固有術式は覚えておらんかった。弱点もこれといって特には……」
青龍はようやく動揺が収まった様子だ。
鋭い眼光でこちらを睨んでいる。貴人達の話を聞いた時よりもその目は怒りに満ちているように見えた。
「何故ですか……どうして何も言わずにいなくなってしまわれたですか! 俺の力を認めないまま!」
青龍の声は震えていた。まるで子供のように。
狐々愛はその声に応えるべく口を開いた。
読んでいただきありがとうございます。
旅行で行った名古屋城に、圧巻されて開いた口が塞がらないコングです。
当たり前だけど教科書で見たのと同じでした。
鯱鉾が思ってたより金ピカだった。
そして、名古屋名物「天むす」を食べて思ったね。あれをはじめに作った人を胴上げしてあげたい。もう美味いのなんのって。
それからはバナナと天むすが僕の好物です。
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2020/5/26一部改稿
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