人外と友達になる方法
第58話 真竜の力 〜古の祠篇〜
「雑魚がイキってんじゃねぇ!」
青龍の拳を竜夜はいとも簡単に受け止める。
悠火と奏鳴ですら受け止めきれなかった攻撃を竜夜は片手で止めたのだ。
(凄い……これが真竜の力)
青龍を壁に向かって投げ飛ばす。
青龍は壁に着地し、跳躍して再び拳を振るう。
「クソがぁ!」
だが今の竜夜には感情に任せた青龍の攻撃を避けることなど造作もないことだ。
今なら目を瞑っていても避けられるほど、竜夜の神経は研ぎ澄まされていた。
一向に当たらない攻撃に腹をたてる青龍はどんどん攻撃が単調になる。
「はぁ!」
竜夜は攻撃の隙を見て青龍の腹に拳を叩き込む。
普段は妖符を主とした戦いをするため、肉弾戦は素人に毛が生えたほどの実力しかない。体術を悠火や奏鳴に習ったとは言え、それでも素人に変わりはない。
しかし、それでも青龍に深手を負わせるには十分過ぎる威力を誇った。
竜夜に腹を殴られた青龍は少し宙に浮く。
そして、浮いた青龍を竜夜は回し蹴りで蹴り飛ばす。
(凄い……次にするべき動きがわかる。流れるように体が動く!)
「がっ!」
壁に打ち付けられ青龍は少し血を吐く。
竜夜はたった二発で青龍に重傷を負わせたのだ。
「何が起きやがった! お前は雑魚のはずだろ!」
「確かに僕は弱いですよ。でも、だからってあなたに負けるわけにはいかないんです!」
急にパワーアップした原因を必死に考えた青龍は一つの結論に行き着く。
「そうか……真竜! お前が力を貸したのか!」
青龍が竜夜のパワーアップの理由に気付いたらしい。
「何でお前まで俺の邪魔をする! お前は俺に席を譲ったはずだ! もうこれ以上誰も俺の邪魔をするなぁ!」
青龍の気配が変わる。
先程までとは明らかに違うのが肌でわかる。
これも真竜の力のおかげなのかもしれない。
「もう手加減は無しだ……」
ゆらゆらと歩く青龍は何かブツブツと呟いているようだ。
「これ以上の戦いはお互いに不利益しか無いはずです。引いてもらえませんか?」
「これは利益や不利益の話では無い。あるのは意地だけだ!」
青龍が竜夜に迫る。
そのスピードは今までのどの攻撃より速い。
「龍滅呪術!」
竜夜は防御の姿勢をとる。
強化された今の竜夜になら耐えられなくは無いはずだ。
しかし、直感と呼ぶべき何かが竜夜の体を動かした。この攻撃は受けてはならないと。
振り下ろされる青龍の拳を竜夜は後ろに飛んで避ける。
そして先程まで竜夜のいた場所に振り下ろされた拳が土埃を上げる。
「なっ!」
土埃りが晴れたことで青龍の攻撃が如何に強力で恐ろしい力なのかを確認することができた。
地面が消滅していたのだ。地面が砕けたとかではない。
もともと、そこに地面がなかったかのように地面が抉れているのだ。
『あの技は龍族の長たる長竜のみが使える術式だ。あの技は殺傷の為だけの技だ。決して受けるなよ』
突然竜夜の頭にあの時聞いた声が聞こえた。
「わかった。真竜、次の攻撃で決めるよ」
『任せろ』
竜夜は妖力を一枚の妖符に流し込む。
妖符は妖力を流し込むことで強化することができる。
妖符の強みはそこにあると言っていいだろう。普段の竜夜が妖力を込めた妖符と光秀の妖符では、光秀の妖符の方が五倍程の威力が高いだろう。
しかし、今の竜夜には真竜が付いている。そして、今の竜夜が妖力を込めた妖符は普段のおよそ三百倍の威力だ。
「天神楽煉獄弓!」
炎の矢が音速を超えて青龍に襲いかかる。
「龍滅呪術・龍嚙!」
青龍の全てを抉り取る拳と、竜夜の万物を焼失させる豪炎の矢がぶつかり合う。
戦いの余波で壁に亀裂が走る。
「うぉぉぉ!」
「はぁぁぁ!」
少しずつではあるが青龍が炎の矢を押し返し始める。
『少しだけ本気を出す。耐えてくれよ』
「はいっ! わかりました!」
『龍滅之法・龍魔!』
途端に体から妖力が湧いてくるのがわかる。
炎がさらに熱く燃え上がり、青龍を押し返す。
「くっ……何故だ! 何故二度も俺の邪魔をする! 貴様は! 貴様だけはここで殺す!」
『すまんが負ける気は無い。これで終わりだ』
さらに火力が上がる。竜夜には流石にこれ以上は耐えられそうに無い。
「く……そっ……貴様に……負け……」
炎が青龍を飲み込み、そのまま壁に衝突する。壁にぶつかって霧散した炎が消えて行く。
炎の通った跡は、全てが真っ黒な炭へと化していた。
「凄い……あ、青龍! 青龍は!?」
辺りを見渡すが青龍の姿は無い。あの炎で完全に消し炭になったのだろうか。
しかし、いくらあの炎が強力無比でもあれほど強かった青龍を一撃で倒せるのだろうか。
『青龍を探すのは後だ。まずは仲間の手当てをしろ』
「あ! そうでした!」
毒で動けなくなった悠火と奏鳴、妖力を使い果たして気絶した舞姫、攻撃をくらい重傷を負った光秀に回復の術を使う。
その際も真竜の力と相まって、強力な回復術になった。
「よかった……みんな……無事……で……」
全員を助けられた安心感と、ずっと張っていた気が緩んだことで竜夜の意識はゆっくりと遠ざかっていった。
『中々に面白かったぞ小僧。貴様の信念、これからとくと見せてもらう』
薄れ行く意識の中で真竜が何か言っていたようだが、竜夜には聞こえなかった。
こうして、悠火たち五人の初任務は(無事とは言わないが)一人の犠牲者も出すことなく達成された。
読んでいただきありがとうございます!
最近忙しすぎて曜日感覚がなくなっているコングです!
またまた一ヶ月近く更新できずに申し負けございません!
言い訳させていただきますと、本当に休みがなかったんです!
ずっと土日返上で学校行ってて、書く時間が取れなかったんです!
それと知っての通り、僕は戦闘シーンが苦手で書くのに時間がかかるんですよ。なので日常回ならもっと早く更新できると思います!
今後も空き時間を見つけてもう少し更新頻度を早くしたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
2020/5/26一部改稿
青龍の拳を竜夜はいとも簡単に受け止める。
悠火と奏鳴ですら受け止めきれなかった攻撃を竜夜は片手で止めたのだ。
(凄い……これが真竜の力)
青龍を壁に向かって投げ飛ばす。
青龍は壁に着地し、跳躍して再び拳を振るう。
「クソがぁ!」
だが今の竜夜には感情に任せた青龍の攻撃を避けることなど造作もないことだ。
今なら目を瞑っていても避けられるほど、竜夜の神経は研ぎ澄まされていた。
一向に当たらない攻撃に腹をたてる青龍はどんどん攻撃が単調になる。
「はぁ!」
竜夜は攻撃の隙を見て青龍の腹に拳を叩き込む。
普段は妖符を主とした戦いをするため、肉弾戦は素人に毛が生えたほどの実力しかない。体術を悠火や奏鳴に習ったとは言え、それでも素人に変わりはない。
しかし、それでも青龍に深手を負わせるには十分過ぎる威力を誇った。
竜夜に腹を殴られた青龍は少し宙に浮く。
そして、浮いた青龍を竜夜は回し蹴りで蹴り飛ばす。
(凄い……次にするべき動きがわかる。流れるように体が動く!)
「がっ!」
壁に打ち付けられ青龍は少し血を吐く。
竜夜はたった二発で青龍に重傷を負わせたのだ。
「何が起きやがった! お前は雑魚のはずだろ!」
「確かに僕は弱いですよ。でも、だからってあなたに負けるわけにはいかないんです!」
急にパワーアップした原因を必死に考えた青龍は一つの結論に行き着く。
「そうか……真竜! お前が力を貸したのか!」
青龍が竜夜のパワーアップの理由に気付いたらしい。
「何でお前まで俺の邪魔をする! お前は俺に席を譲ったはずだ! もうこれ以上誰も俺の邪魔をするなぁ!」
青龍の気配が変わる。
先程までとは明らかに違うのが肌でわかる。
これも真竜の力のおかげなのかもしれない。
「もう手加減は無しだ……」
ゆらゆらと歩く青龍は何かブツブツと呟いているようだ。
「これ以上の戦いはお互いに不利益しか無いはずです。引いてもらえませんか?」
「これは利益や不利益の話では無い。あるのは意地だけだ!」
青龍が竜夜に迫る。
そのスピードは今までのどの攻撃より速い。
「龍滅呪術!」
竜夜は防御の姿勢をとる。
強化された今の竜夜になら耐えられなくは無いはずだ。
しかし、直感と呼ぶべき何かが竜夜の体を動かした。この攻撃は受けてはならないと。
振り下ろされる青龍の拳を竜夜は後ろに飛んで避ける。
そして先程まで竜夜のいた場所に振り下ろされた拳が土埃を上げる。
「なっ!」
土埃りが晴れたことで青龍の攻撃が如何に強力で恐ろしい力なのかを確認することができた。
地面が消滅していたのだ。地面が砕けたとかではない。
もともと、そこに地面がなかったかのように地面が抉れているのだ。
『あの技は龍族の長たる長竜のみが使える術式だ。あの技は殺傷の為だけの技だ。決して受けるなよ』
突然竜夜の頭にあの時聞いた声が聞こえた。
「わかった。真竜、次の攻撃で決めるよ」
『任せろ』
竜夜は妖力を一枚の妖符に流し込む。
妖符は妖力を流し込むことで強化することができる。
妖符の強みはそこにあると言っていいだろう。普段の竜夜が妖力を込めた妖符と光秀の妖符では、光秀の妖符の方が五倍程の威力が高いだろう。
しかし、今の竜夜には真竜が付いている。そして、今の竜夜が妖力を込めた妖符は普段のおよそ三百倍の威力だ。
「天神楽煉獄弓!」
炎の矢が音速を超えて青龍に襲いかかる。
「龍滅呪術・龍嚙!」
青龍の全てを抉り取る拳と、竜夜の万物を焼失させる豪炎の矢がぶつかり合う。
戦いの余波で壁に亀裂が走る。
「うぉぉぉ!」
「はぁぁぁ!」
少しずつではあるが青龍が炎の矢を押し返し始める。
『少しだけ本気を出す。耐えてくれよ』
「はいっ! わかりました!」
『龍滅之法・龍魔!』
途端に体から妖力が湧いてくるのがわかる。
炎がさらに熱く燃え上がり、青龍を押し返す。
「くっ……何故だ! 何故二度も俺の邪魔をする! 貴様は! 貴様だけはここで殺す!」
『すまんが負ける気は無い。これで終わりだ』
さらに火力が上がる。竜夜には流石にこれ以上は耐えられそうに無い。
「く……そっ……貴様に……負け……」
炎が青龍を飲み込み、そのまま壁に衝突する。壁にぶつかって霧散した炎が消えて行く。
炎の通った跡は、全てが真っ黒な炭へと化していた。
「凄い……あ、青龍! 青龍は!?」
辺りを見渡すが青龍の姿は無い。あの炎で完全に消し炭になったのだろうか。
しかし、いくらあの炎が強力無比でもあれほど強かった青龍を一撃で倒せるのだろうか。
『青龍を探すのは後だ。まずは仲間の手当てをしろ』
「あ! そうでした!」
毒で動けなくなった悠火と奏鳴、妖力を使い果たして気絶した舞姫、攻撃をくらい重傷を負った光秀に回復の術を使う。
その際も真竜の力と相まって、強力な回復術になった。
「よかった……みんな……無事……で……」
全員を助けられた安心感と、ずっと張っていた気が緩んだことで竜夜の意識はゆっくりと遠ざかっていった。
『中々に面白かったぞ小僧。貴様の信念、これからとくと見せてもらう』
薄れ行く意識の中で真竜が何か言っていたようだが、竜夜には聞こえなかった。
こうして、悠火たち五人の初任務は(無事とは言わないが)一人の犠牲者も出すことなく達成された。
読んでいただきありがとうございます!
最近忙しすぎて曜日感覚がなくなっているコングです!
またまた一ヶ月近く更新できずに申し負けございません!
言い訳させていただきますと、本当に休みがなかったんです!
ずっと土日返上で学校行ってて、書く時間が取れなかったんです!
それと知っての通り、僕は戦闘シーンが苦手で書くのに時間がかかるんですよ。なので日常回ならもっと早く更新できると思います!
今後も空き時間を見つけてもう少し更新頻度を早くしたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
2020/5/26一部改稿
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