英雄の妹、最強を目指す!

やま

6話 知り合いの遭遇

「ふわぁ〜、やっぱり、冒険者が多いせいか、酒場や武具屋が多いですね〜」


 辺りを楽しそうに見回すエリア。私も周りの店を見ていると、ワクワクしてくる。酒場でみんなで打ち上げをしたり、次の作戦を考えたり。


 武具屋で自分にあった装備を探しては、あーじゃない、こーじゃないと話し合ったり。ふふ、想像しただけでも、ワクワクしてくる!


 シロナも色々な匂いがしてくるのが楽しいのか、鼻をヒクヒクさせて、屋台を見ている。後で買ってあげるから、そんなヨダレを垂らさないの。可愛い顔が台無しよ。


「それじゃあ、まず拠点とする宿屋を探そうよ。これだけ冒険者がいたら、もしかしたら空いてないかもしれないしね」


 それもそうね。デルスの言う通りだわ。初めに通行料を払えば、無料で自国と行き来出来るようにはなるけど、手続きなど時間がかかってしまうので、用が無い限りは、この神島にある宿屋に冒険者は寝泊まりしている。


 金のある人は、家を買ったりも。私たちは当然そこまで持ってないので、宿を借りる事になる。将来的には家を買うのも……えへへ


「クリシア様も、女の人がしてはいけない顔をしています!」


 妄想していたら、シロナに指摘されちゃった。気をつけないと。


「でも、それよりあそこに行きましょうよ!」


 エリアが興奮したように指を指す先には、私たちの目的である、迷宮の塔がそびえ立っていた。空高くそびえ立ち、雲をも貫いている。この神島の中心に立つ迷宮の塔。


「確かに、僕も近くで見たいな」


「そうね。道に迷う事は無いと思うけど、確認がてら見に行きましょうかね。ほらシロナ、逸れちゃダメだから、私の手を握って」


「あい!」


 私はシロナと手を繋いで、塔へと向かう。時折シロナの目が引かれた屋台で、食べ物を買いながら食べ歩きしたので、普通よりは時間がかかったけど、塔の入り口に辿り着いた。


 塔の入り口では


「回復魔法の使える魔法師求める! こちらは前衛が3人、後衛の魔法師が1人だ!」


「罠を解除出来る人はいないか!」


「私たちを荷物持ちで雇いませんか! 精一杯頑張ります!」


「地図はいらねーか! 今なら安いぞ!」


 など、様々な勧誘や、商売人の声が聞こえてくる。凄い熱気。ここに立っているだけで、ドキドキと興奮してくるわ。


 そんな塔を眺めていると


「うん? ……クリシアちゃんじゃねえか!」


 と、私を呼ぶ声がする。私が振り返ると、そこには20代後半の金髪の男の人が立っていた。豪華な鎧をつけて、身に纏う雰囲気は、歴戦の戦士の様。


「ロイさん! どうしてここに!?」


 私は、昔からの知り合いであるロイさんに近寄る。この人はロイ・デップリン侯爵。お兄様の弟子で、ランウォーカー王国の侯爵家の貴族のはずなのに。


「ああ、その事な。この島の兵士は各国から集められているのは知っているだろ? 俺はランウォーカー王国代表でここに来て、今は総隊長をしてるんだよ」


 そう言って私の頭をぽふぽふとしてくる。うぅ、子供扱いして。


「それで、クリシアちゃんはどうして……って、聞かなくてもわかるか。塔に挑みに来たのか?」


「はい。私の仲間と一緒に」


 それから、私の仲間を紹介していく。シロナの事は当然知っているので、軽くだけど。シロナとロイさんはハイタッチをしている。


「もし良かったら俺の家に来るか? メイたちも喜ぶだろうし」


 そう言って前を歩き始めるロイさん。メイさんと言うのは、ロイさんの奥さんの名前である。私も何回か会った事がある。


 どうしようと思ったのだけど、ロイさんのお誘いを無下にも出来ないので、ロイさんの後ろについて行く。ロイさんの家は、塔から思ったよりも近くて、すぐに辿り着いた。


 ロイさんの家の侍女に出迎えられて、中に案内されると、中からキラキラと輝く金髪に、女性が羨ましいく思う程の爆乳に折れそうなほどの腰。とても綺麗な女性が出て来た。確かこの人のお名前は


「ただいま、ミクルーア」


「お帰りなさいませ、ロイさん」


 そう、ミクルーア・デップリン。ロイさんの2人目の奥さん。とても綺麗な人ね。お兄様の奥さんたちに引けを取らないほど。


「メイは、まだランウォーカー王国で?」


「はい、孤児院にいるはずです」


「そうか、まあ、クロンがいるから大丈夫だろう」


 ロイさんがそんな事を言っていると、奥から新たに影が複数現れる。やって来たのは、白い毛を纏った子虎たちだ。全部7匹。その背には金髪の少女が乗っていた。


「おとうしゃま、お帰りなしゃい!」


「ああ、ただいまミイア。お利口にしていたか?」


「うん! みんながあしょんでくれたから!」


 うわ〜、可愛い! 金髪の少女が、白子虎から飛び降りて、ロイさんに抱き着く。それを温かい目で見守るミクルーアさん。


 後で聞いたのだけど、この白子虎たちは、魔物らしい。ロイさんのもう1人の奥さん、メイさんが動物と話が出来るという能力で、この子たちの母親が、メイさんと一緒にいるみたい。


 さっきの話に出て来たクロンというのがそう。正式な名前はクロンディーネみたいだけど。この子虎たちはその子供で、今ロイさんに抱きついている少女、ミイアちゃんも、メイさんと同じ能力を持っているんだとか。


「おっと、そうだった。クリシアちゃん、ようこそ我が家へ」


 ミイアちゃんを抱き上げ、ミクルーアさんを抱き寄せるロイさんが、そう言って来る。


 ロイさんの前には、白子虎たちが、3、4で隊列を組み、大人しく座っていた。可愛い。シロナも白子虎たちに対抗して、ビシッとしている。こちらも可愛い。


 私たちは、このままロイさんの家で、夕食を頂く事になったのだった。

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