英雄の妹、最強を目指す!

やま

13話 VS5階層守護者(2)

「エリア、やるわよ」


「ええ」


 デルスが、遠距離型のゴブリンたちの相手をしてくれている間は、私たちがゴブリンジェネラルを相手しなければ。もしゴブリンジェネラルがデルスのところへ行ったら、デルスが命の危機に晒されてしまうもの。それは何としても避けないと。


「デルスが来るまで、私たちで気を引くわよ」


「わかりました。ファイアボール!」


 エリアがゴブリンジェネラルに向かって火の玉を放つ。ゴブリンジェネラルは、鬱陶しそうに斧を振って火の玉を消してしまった。そして肩に斧を担ぎ、走って来る。


 私はゴブリンジェネラルとエリアの間に入るように立ち、斜めに振り下ろして来るゴブリンジェネラルの斧を、避ける。


 ゴブリンジェネラルは、一撃当たるととんでもないけど、1つ1つが大振りだ。師匠の訓練に比べたら避けやすい。速さも師匠の方が全然速い!


 私はゴブリンジェネラルの動きをじっくりと見て、次の動きを予測する。あまりに速いと反応できないけど、今のゴブリンジェネラルの速度なら何とか対応出来る。


 私はゴブリンジェネラルの斧を、スレスレで避ける。少しでも、ゴブリンジェネラルとの距離を詰めるため。斧を振り終えた後に、攻撃出来るように。


 ゴブリンジェネラルは、斧を斜めに振り下ろし、私が避けると直ぐに戻すように振り上げて来る。私はそれを後ろに下がって避けて、直ぐに前に出る。


 斧を戻そうとしているゴブリンジェネラルへと、氷魔法で強化している黒賢杖を振る。私は斜め下から黒賢杖を振り上げると、ゴブリンジェネラルは後ろへ跳んで避ける。


 私はそのまま後を追い、突きを放つ。先が氷で尖っているため、槍並みの鋭さがある。当然ゴブリンジェネラルは斧で杖を弾くけど、私はその力を利用して回転する。


 杖の薙ぎ払いを、ゴブリンジェネラルは、斧で再び弾き、蹴りを加えてきた。私は転がるように避けて、後ろからは


「ファイアランス!」


 エリアの援護魔法が飛んで来る。火の槍が数発飛んで来て、ゴブリンジェネラルは斧で振り払うけど、払いきれずに、後退していく。


「フリーズ!」


 私は、ゴブリンジェネラルが下がったところの床を凍らす。凍らせてツルツルとなった床に足をつけたゴブリンジェネラルは、その場で尻餅をつく。良し!


「ファイアストーム!」


 ゴブリンジェネラルが滑って立てないところに、エリアの渾身の一撃が放たれる。ゴブリンジェネラルを丸々巻き込んで、天井近くまで火の竜巻が立ち昇る。


 火の竜巻の中からはゴブリンジェネラルの叫び声が聞こえて来る。これはかなりのダメージを与える事が出来たでしょう!


「さすが、エリアだね」


 そこに、遠距離型のゴブリンたちを倒し終えたのか、デルスが戻って来た。ところどころに火傷の跡や切り傷があるけど、大きな怪我はしてないみたい。良かった。


「ふぅ〜、ふぅ〜、もう直ぐで魔法が切れます。声は止みましたが、まだ生きていると思いますので」


 かなりの魔力を使ったエリアは、魔力回復用のポーションを飲んで、上がった息を整えている。確かにまだ気配がするので、ゴブリンジェネラルは生きているのでしょう。


 私とデルスは、エリアを守るように立つ。火の竜巻が収まり、煙が収まると、ところどころが焼けて爛れているゴブリンジェネラルが姿を現した。


 顔の右半分は、火傷を負って目も開けられない状態で、右手も同じように焼けていた。だけど、見えている左目は、しっかりと私たちを捉えており、怒りに満ちている。


 そして、ゴブリンジェネラルの体から赤い靄みたいものが溢れて来る。あれが話に聞いていた狂化ね。守護者の中にはある一定のダメージを与えると、強くなるようだけど、ゴブリンジェネラルは、怒りを力にする狂化を使うって聞いていた。


 その代わり周りは見えなくなり、目に見えるもの全てに攻撃するようになるとも。


 ゴブリンジェネラルの目も赤く光り、理性の光は無い。ただ目の前の敵を殺すだけに力を入れている。ゴブリンジェネラルは、腰を低くして斧を担ぐ。


「来るわよ!」


 左手で斧を持ち上げるゴブリンジェネラルは、まずはデルスに向けて振り下ろして来た。デルスは上手い事斧の側面を盾で弾いて、斧の軌道を逸らさせる。


 ズドォン! と叩きつけられる斧。隙が出来たゴブリンジェネラルへとデルスは剣を振り下ろす。狙ったのは左手。


 振り下ろされたデルスの剣は、ゴブリンジェネラルの左手を切り裂いたのだが、狂化によって防御力も上がっているのか深くは傷付けられなかった。その上


「ゴルゥ!」


 ゴブリンジェネラルは、力任せに左腕を振ったのだ。デルスは、振られた左腕に巻き込まれないように避けたけど、勢いは殺し切れずにゴロゴロと転がる。


 そこに迫るゴブリンジェネラルの斧。デルスが止まったところに、ゴブリンジェネラルは斧を振り下ろす。


 私は黒賢杖の先端を氷魔法で強化。薙刀のように氷で刃を作る。ゴブリンジェネラルに近づき、斧を振り下ろすところに、黒賢杖を振る。


 狂化によって視野が狭くなったゴブリンジェネラルは、近づいて来た私に気がつかず、脇腹を深く切る事が出来た。


 だけど、狂化のせいで、痛覚も鈍っているのか、ゴブリンジェネラルの動きは少し鈍っただけだった。振り下ろされる斧。


 デルスは、何とか横に飛んで避けるけど、振り下ろされた斧は床を割り、その破片がデルスへと刺さる。


 そのままゴブリンジェネラルは、私に向かってまさかの右腕を振って来た。エリアの魔法によって右腕は使えないと思っていたけど、痛みが鈍っている狂化のおかげか、無理矢理振って来たのだ。


 私は、黒賢杖を盾に何とか防いだけど、勢いまでは殺せずに吹き飛ばされる。ゴロゴロと転がる私に、ゴブリンジェネラルは左手を振りかぶって、斧を投げて来た。まずっ!

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く