アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
第17話 メルヴェイユ南部森林ダンジョン探索1
メルヴェイユ南部森林ダンジョンは、10層目までが開放されている資源ダンジョンだ。
生産職の依頼や、街の人の依頼などでよく利用される大切な資源採掘場だったりする。
何でそんなに都合がいいのかというと、ここのダンジョンマスターが人類に協力的だというのが理由らしい。
ただし、試練も課しているらしく、簡単に採掘はさせてあげないとのこと。
「上層から産出される鉱石は銅や錫、鉛などが多めなようだね。低確率で鉄鉱石が出るみたいだけど、鉄を狙うなら中層以下ってことになるな。とはいえ、青銅にすれば使い道が多いから馬鹿に出来ないんだぜ?」
鉱石に関しては地球とあまり変わらない方法を取っているらしい。
鉄を多く含む鉱石を粉末にして溶かして、不純物と分離してインゴットを製錬するとかそういうやり方なわけで、インゴットが直接出てくる宝箱、通称トレジャーボックスを見つけたらラッキーとされている。
「薬草類もそこそこ生えてるみたいだけど、ポーションになる薬草はそうそう見つかるものじゃないらしい。傷薬の材料になる薬草なら多いんだけどね」
一般商店では薬草といえば傷薬の素材として売られている。
傷薬はポーションではなく、軟膏タイプなので、塗布してから包帯などで巻いてじっくりと治癒させる。
そのせいか、ポーション類は結構お高かったりする。
これがフィルさんの資金の源泉だったりするんだけどね。
「錬金術師が多くないのも理由がありそうだけど、プレイヤーで転職出来る人はまだいないみたいだね」
リーンさんは結構街を見て歩いているようだった。
フィルさんとマーサさんの2人だけが、メルヴェイユの街でポーションを作ることが出来る現状、あの二人のお店でしか購入することは出来ない。
プレイヤーの一部も錬金術師になるべく、薬師見習いに転職している人もいるようだけど、まだまだ錬金術師見習いには届いていないようだ。
「お? 採掘ポイント発見! ん~と、銅鉱石の鉱脈か。ないよりはマシだな」
アーク兄はそう言うと、インベントリからツルハシを取り出して洞窟の壁の一部へと向かって行った。
採掘ポイントとは、ダンジョンやフィールド、鉱山などにあるほんのり光っている部分の事で、そこで採集や採掘を行うと、成果物が得られるのだ。
洞窟内の壁の一部にもあったりするので、生産職などはこういう場所を目を皿のようにして捜し歩いていたりする。
「一定時間で再生成されるらしいけど、こんな上層で残ってるのは珍しいな」
アーク兄はそう言いながらも、ひたすらツルハシで採掘している。
今、ボク達がいる場所には人はいないけど、ちょっと前までは結構な数の人とすれ違っていたりする。
「よっし、採掘終わり。銅鉱石が15個か。悪くないな」
採掘ポイントには規模というものがあり、大体5個から20個ほどの成果物を得ることが出来る。
今回の場所は15個も取れたので、初心者ダンジョンにしては大きめのポイントと言えるかもしれない。
もちろん大鉱脈などもあるらしいけど、それはもっと大きな鉱山とかの話になるので、ここでは見ることは出来ないと思うけどね。
「ダンジョンウルフが来る、数は五頭よ」
ダンジョンウルフがカレンさんの索敵にひっかかった。
すぐに戦闘態勢に入ると、ボクは予め考えておいた陣を設置する。
今回設置するのは3辺3点の三角形だ。
少し大きめに作ったので、だいぶMPを持って行かれてしまっているけどね。
「【五行刻印比和火行三段:業火炎陣】」
火行を三段重ねることでさらに威力を増した火炎陣の上位版だ。
一段だと『火陣』という小火力の火の術になる。
二段だと『火炎陣』というさらに強めの火の術で、三段になると『業火炎陣』という結構強力な火の術になる。
「撃ち漏らしたら援護お願い。陣はすでに設置したから歩いて度は倒せるはずだけど……」
地面に設置するだけでなく、相手の周囲の空間にも設置出来るようになるらしいけど、ランクの低いボクではまだまだそれは出来なかった。
なので、今は地面に設置で対応だ。
「ガルルッ」
「ガウガウ」
「グルルルル」
先頭三頭が先に飛び込んでくる。
陣の発動タイミングは任意だけど、接触と同時に発動なんていうトラップにも使えるのが、攻撃陣のいいところだ。
「【解放】」
ボクが短く呟くと、接地した陣から勢いよく炎の柱が吹きあがった。
「ギャンッ」
「ギャワンギャワン」
「ガウガウッ」
転げまわりながら燃え続ける三頭のダンジョンウルフ。
彼ら動物型は炎で焼くと倒しやすい。
「グルルルル」
「アオ~ン」
後続二頭が、転げまわる三頭を尻目にこっちに飛び込んでくる。
「遅いです」
コノハちゃんが弓を構え、一射放つ。
「ギャウンッ」
飛び込んできた一頭の頭を見事打ち抜き、ダンジョンウルフは着地と同時に動かなくなった。
「残りは任せな!」
カレンさんが剣を抜き放つと、ダンジョンウルフの残りに斬撃を食らわせる。
「ギャンッ」
短く声を出すと、切り裂かれて吹き飛ばされるダンジョンウルフ。
スピードが乗っているせいか、やたらと勢いよく壁に激突して絶命してしまった。
「あはははは、ホームランってね?」
「カレン、調子に乗らない」
「痛いからっ」
決め台詞を言うカレンさんのおでこをリーンさんがでこぴんした。
「まったく、かっこつけてる暇があるなら素材回収しなさいよね?」
リーンさんはそう言いながら、死んだダンジョンウルフの素材を回収する。
燃えたものはお肉や牙など、斬られたものは状態に応じて回収、脳天を撃ち抜かれたものはそのまま回収する。
「ファンタジー小説ではよくあるけど、獲物を解体して納品したり売り払うってのが出来るとは思わなかったわね」
リーンさんはファンタジー系小説が好きなようだ。
嬉々として獲物の解体をしている。
「あとで水だすから、しっかり洗えよ?」
その様子を見ていたアーク兄がそれとなく伝えていた。
「ありがと、アーク君」
リーンさんはにっこりほほ笑むと、解体の続きを行っていく。
「ダンジョンの上層とはいっても、結構広いからな。うちらがいるのは二層目だから、そろそろ依頼物の1艶2つ見つかってくれてもいいと思うんだけどなぁ」
アーク兄の言う通り、現在ボク達は、メルヴェイユ南部森林ダンジョンの二層目にいる。
一層目は人が多くて狩りにもならなかったためだ。
とはいえ、10以上の人はまだまだ多くはないのでごった返すというほどでもない。
まぁ、十分な採掘や採集が出来るような状態ではなかったんだけどね。
安全だけど……。
「スピカ、MPの状況はどうだ? さっきので結構使っただろ?」
アーク兄はこっちを見ると、MP残量について尋ねてくる。
「あれでも使用したのは15だから、まだ大丈夫だよ。自然回復は遅いけど」
火行の消費MPは一回につき3で、重ねるごとに二倍使うことになる。
この辺りは二乗ではなく、足し算なので思ったよりもMPは減っていないんだよね。
総量はまだ60だけどさ!
「分かった。さっきの陣で4回分しかないんだから注意しとけよ? ちょくちょく確認はするけどな」
アーク兄はリーダー経験が豊富なので、メンバーの管理は結構得意みたいだ。
HPとMPとSPの管理が出来るリーダーはいいよね!
「よっし、もうちょっと奥に行って何もなかったら、三層目に行くから、そのつもりでな。三層目は少しだけ敵が増えるっぽいから注意な」
解体も終わったところで、アーク兄は次の行動を決めた。
三層目で増える敵って、どんなのなのかな?
楽しみだ。
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