アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
ゴブリンアーミー召喚術師と冒険者たち
 自身を大禍津と名乗った、目の前の少女はボクにゆっくり近づくと、不意に頭に手を当ててきた。
そうして少ししてから、「へぇ」とだけ言うと、手を離し、ボクから少しだけ距離を取る。
「貴女、面白いことしてるのね? 貴女が使ったあの女の技は、私たちにしか効かないものよ。この大きな緑色の鬼みたいな小者が使った技も、八十禍津の力の一部ね。だから貴女だけがあの世界で『斬る』ことができたのよ」
大禍津はそう言うと、一息吐いてから再び口を開いた。
「あの緑色のは、ごぶりん? と言ったかしら。そのごぶりん自体はさして強いものではないわ。八十禍津の力を経由した者からの力の授与という面倒な形を取っているせいで、普通の人間でも数で押せばすぐに倒せるくらいには弱いわ」
「ただ、気を付けなさい。経由した者は直接配下になっているようだから、このごぶりんとは違ってかなり強いはずよ。だから、戦いの決定打は貴女の使うあの女の技ということになるわね。ただ、直接記憶を見た限りでは、あの世界の力にはあの女の力は有効ではないわ。なので、人間たちと協力して倒しなさい。八十禍津の力は貴女が対処して、それ以外は他の人が防ぐのが理想ね」
紅い瞳を細めながら、少しだけ楽しそうな笑顔をする大禍津。
何か悪いことを企んでいそうな、笑顔にも見えるから不思議だ。
「いいこと? あのごぶりんについては貴女が行かずとも倒れるわ。ほら、見なさい?」
大禍津が手をかざすと、そこにはアルケニアオンラインの世界、それも現在行われているレイド戦の様子が映し出されていた。
アーク兄たちがゴブリンアーミー召喚術師に戦いを挑み、ゴリアテさんたちと協力して徐々にだが追い詰めていく。
******************
「ぐぬぬぬ。何というしつこさよ! わしがこの程度の攻撃に屈すると思っておるのか!? 術師だからと甘く見るでないわ!!」
激高したゴブリンアーミー召喚術師の強力な一撃でゴリアテが怯む。
膝をつき、剣を突き立て苦しそうにしている姿を見るに、どうやらかなりのダメージを負っているようだ。
「今すぐ回復します! 『女神メルヴェイユの力を借りて、その傷を今癒さん!【ハイヒールライト】』」
マイアの回復術によって、傷が回復していくゴリアテ。
一息ついて立ち上がると、再び剣を構えながら言った。
「あの野郎、思ったよりも攻撃力が高いぞ! 後衛は特に気を付けろ! 一撃でリスポーンなんてことになりかねないぞ!!」
さすがはレイドボスと言ったところか。
ただ、途中で見たような強力な一撃を使ってくる様子はない。
あれは使用条件があるのだろうか?
なんにせよ、一筋縄ではいきそうにない。
俺たちだけで倒すのは無理があるか?
「情けない顔してるんじゃないよ、アークトゥルス!」
不意に上空から声をかけられた。
一体誰だ? そう思い空を見上げると、そこには複数人の烏天狗と見たことのある顔の烏天狗がいた。
「クラマ……」
「何嫌そうな顔してるのさ。あたしが飛んでて悪いっての!?」
クラマは不機嫌そうな顔をすると、俺をじっと睨みつけてきた。
あいつは俺をライバル視してるからなぁ……。
「あたしは正式版になってから気分が良いんだ。今まで人間の体でしかいられなかったからね!」
「あ~。そう言えばそうだよな。とりあえずおめ?」
「ふんっ。さぁ烏天狗たち、いっちょ暴れてやりな!!」
「「「へい、姐さん」」」
「「「はい、お姉様!!」」」
それぞれに声を揃えて同じタイミングで返事をする六人の烏天狗たち。
姐さんとかお姉様ってどういうことだ!?
「なぁ、お前……」
「いっ、言うな!! あたしだって不本意なんだ」
やや顔を赤くして、クラマはそっぽを向いてしまう。
「応援が来るまであいつらを食い止める! いくよ!!」
クラマたちは早速攻撃のためにゴブリンアーミー召喚術師に急降下しつつ攻撃を仕掛けていく。
「ぐふふふふふ。わしが、人間共の魔術を使えぬとでも思ったか? こう見えてそれなりに長く生きておるからのぅ。括目せよ【ファイアーストーム】」
「「「ぐあぁぁぁぁぁぁ」」」
「「「きゃぁぁぁぁぁぁ」」」
相手はほとんど詠唱なしで【ファイアーストーム】を発動させてきた。
まともに攻撃を受けたのは、先ほど攻撃を開始していた烏天狗たちだった。
「行きます!! 『女神メルヴェイユよ、彼らに慈悲を!!【フェアリーヒール】』」
少し離れた位置にいるクラマたちに向かって駆け出して近づくマイアは、そこで祈りの呪文を唱える。
すると、マイアの元から近くにいるクラマたちに向かって小さな光の球のようなものが飛んでいく。
それはクラマたちの周りをまわりながら、傷を徐々に癒していった。
おそらく、『フェアリー』ということから、回復の妖精などを召喚したのだろう。
その妖精たちは、回復が終わってもしばらくその周りをまわり続けている。
「神々の使徒、何と厄介なやつらよ!! 許せん」
激高したゴブリンアーミー召喚術師は多き杖を振り上げる。
狙いはクラマたちの側にいるマイア。
俺は急いで走り出すが距離があるために間に合わない。
攻撃を受けないために距離を取ったことが仇になったようだ。
何という判断ミス……!!
「まっ」
俺は手を伸ばして「まて!!」と言おうとしていた。
意味もないことはわかっているはずなのにだ……。
しかし――。
「させんぞ!!」
振りかぶった杖が振り下ろされ、マイアたちが身を固くした瞬間、何者かがそこに割り込み大きな盾で攻撃を受け止めた。
「あっ」
「ぐおおおおおお、何奴!?」
「アモ……ス?」
「おう。まったく、妹を危険にさらすとはどういうことだ。幸いここには来たことがあったから転送装置経由で飛んできたが……。おかげで五万クレディを失ったぞ? どうしてくれる」
割り込んできたのは、歩くレイドボスことアモスだった。
来いとは言っていたが、まさかこのタイミングで来るとは思いもしなかった。
「すまん、あとで支払う」
「いや、いらん。それよりも面白いやつと戦っているな。もう一人の妹はどうした?」
「あぁ、スピカなら……」
アモスが言ったもう一人の妹とは、スピカのことだ。
スピカは今も横になり、起き上がってきていない。
「何があったかは知らないが、聞くのは後にしよう。まずはこいつを倒せばいいんだろう?」
ニヤリと笑うと、アモスは大きなタワーシールドと大きな片手剣を持ち、ゴブリンアーミー召喚術師の前に立ちはだかる。
その姿は黒い壁のようだ。
「護るべきものを護るために、重戦士となったが、こういう時ほど燃えるものもないな! 本隊とやらは動き出している。もうすぐこっちに来るからそれまでの辛抱だ。あいつらが来ればこの戦いも終わる」
アモス。
自らが盾になることに道を見出したオンラインゲームプレイヤー。
自らが盾になり立ち塞がり、そして鍛えた剣で相手を薙ぎ払うというチートでも搭載してそうな男だ。
ちなみに、闘技場で最も出会いたくない男ナンバーワンと言われている。
「たった一人増えたところで何ができるというのだ! 人間は大人しくわしらに支配されればよいのだ! 死ぬがよい!!」
ゴブリンアーミー召喚術師の強力な攻撃がアモスを襲う。
「なんの!」
ガンッと大きな音を立ててその攻撃は防がれる。
そして――。
「さすがの攻撃だ。だが、その無駄な隙、いただく」
アモスは攻撃を防ぐと、持っていた剣でゴブリンアーミー召喚術師の体を攻撃する。
「ぐおおおおおお、ばかな!? 人間ごときがなぜ!!」
強力な薙ぎ払いを受け、ゴブリンアーミー召喚術師が怯む。
だが、当然の如く傷は深くはない。
「『女神メルヴェイユよ、彼らに慈悲を!!【フェアリーヒール】』」
そして当然のように、マイアは回復術を行使する。
鉄壁の男の周りで、妖精たちが飛び回り傷を修復していく。
さすがのアモスもダメージは受けたようだが、妖精たちのおかげですぐに回復していった。
「来い! ゴブリンよ!! 本隊が来るまで楽しもうではないか!!」
大きな声でそう言うアモスは、実に楽しそうだった。
そうして少ししてから、「へぇ」とだけ言うと、手を離し、ボクから少しだけ距離を取る。
「貴女、面白いことしてるのね? 貴女が使ったあの女の技は、私たちにしか効かないものよ。この大きな緑色の鬼みたいな小者が使った技も、八十禍津の力の一部ね。だから貴女だけがあの世界で『斬る』ことができたのよ」
大禍津はそう言うと、一息吐いてから再び口を開いた。
「あの緑色のは、ごぶりん? と言ったかしら。そのごぶりん自体はさして強いものではないわ。八十禍津の力を経由した者からの力の授与という面倒な形を取っているせいで、普通の人間でも数で押せばすぐに倒せるくらいには弱いわ」
「ただ、気を付けなさい。経由した者は直接配下になっているようだから、このごぶりんとは違ってかなり強いはずよ。だから、戦いの決定打は貴女の使うあの女の技ということになるわね。ただ、直接記憶を見た限りでは、あの世界の力にはあの女の力は有効ではないわ。なので、人間たちと協力して倒しなさい。八十禍津の力は貴女が対処して、それ以外は他の人が防ぐのが理想ね」
紅い瞳を細めながら、少しだけ楽しそうな笑顔をする大禍津。
何か悪いことを企んでいそうな、笑顔にも見えるから不思議だ。
「いいこと? あのごぶりんについては貴女が行かずとも倒れるわ。ほら、見なさい?」
大禍津が手をかざすと、そこにはアルケニアオンラインの世界、それも現在行われているレイド戦の様子が映し出されていた。
アーク兄たちがゴブリンアーミー召喚術師に戦いを挑み、ゴリアテさんたちと協力して徐々にだが追い詰めていく。
******************
「ぐぬぬぬ。何というしつこさよ! わしがこの程度の攻撃に屈すると思っておるのか!? 術師だからと甘く見るでないわ!!」
激高したゴブリンアーミー召喚術師の強力な一撃でゴリアテが怯む。
膝をつき、剣を突き立て苦しそうにしている姿を見るに、どうやらかなりのダメージを負っているようだ。
「今すぐ回復します! 『女神メルヴェイユの力を借りて、その傷を今癒さん!【ハイヒールライト】』」
マイアの回復術によって、傷が回復していくゴリアテ。
一息ついて立ち上がると、再び剣を構えながら言った。
「あの野郎、思ったよりも攻撃力が高いぞ! 後衛は特に気を付けろ! 一撃でリスポーンなんてことになりかねないぞ!!」
さすがはレイドボスと言ったところか。
ただ、途中で見たような強力な一撃を使ってくる様子はない。
あれは使用条件があるのだろうか?
なんにせよ、一筋縄ではいきそうにない。
俺たちだけで倒すのは無理があるか?
「情けない顔してるんじゃないよ、アークトゥルス!」
不意に上空から声をかけられた。
一体誰だ? そう思い空を見上げると、そこには複数人の烏天狗と見たことのある顔の烏天狗がいた。
「クラマ……」
「何嫌そうな顔してるのさ。あたしが飛んでて悪いっての!?」
クラマは不機嫌そうな顔をすると、俺をじっと睨みつけてきた。
あいつは俺をライバル視してるからなぁ……。
「あたしは正式版になってから気分が良いんだ。今まで人間の体でしかいられなかったからね!」
「あ~。そう言えばそうだよな。とりあえずおめ?」
「ふんっ。さぁ烏天狗たち、いっちょ暴れてやりな!!」
「「「へい、姐さん」」」
「「「はい、お姉様!!」」」
それぞれに声を揃えて同じタイミングで返事をする六人の烏天狗たち。
姐さんとかお姉様ってどういうことだ!?
「なぁ、お前……」
「いっ、言うな!! あたしだって不本意なんだ」
やや顔を赤くして、クラマはそっぽを向いてしまう。
「応援が来るまであいつらを食い止める! いくよ!!」
クラマたちは早速攻撃のためにゴブリンアーミー召喚術師に急降下しつつ攻撃を仕掛けていく。
「ぐふふふふふ。わしが、人間共の魔術を使えぬとでも思ったか? こう見えてそれなりに長く生きておるからのぅ。括目せよ【ファイアーストーム】」
「「「ぐあぁぁぁぁぁぁ」」」
「「「きゃぁぁぁぁぁぁ」」」
相手はほとんど詠唱なしで【ファイアーストーム】を発動させてきた。
まともに攻撃を受けたのは、先ほど攻撃を開始していた烏天狗たちだった。
「行きます!! 『女神メルヴェイユよ、彼らに慈悲を!!【フェアリーヒール】』」
少し離れた位置にいるクラマたちに向かって駆け出して近づくマイアは、そこで祈りの呪文を唱える。
すると、マイアの元から近くにいるクラマたちに向かって小さな光の球のようなものが飛んでいく。
それはクラマたちの周りをまわりながら、傷を徐々に癒していった。
おそらく、『フェアリー』ということから、回復の妖精などを召喚したのだろう。
その妖精たちは、回復が終わってもしばらくその周りをまわり続けている。
「神々の使徒、何と厄介なやつらよ!! 許せん」
激高したゴブリンアーミー召喚術師は多き杖を振り上げる。
狙いはクラマたちの側にいるマイア。
俺は急いで走り出すが距離があるために間に合わない。
攻撃を受けないために距離を取ったことが仇になったようだ。
何という判断ミス……!!
「まっ」
俺は手を伸ばして「まて!!」と言おうとしていた。
意味もないことはわかっているはずなのにだ……。
しかし――。
「させんぞ!!」
振りかぶった杖が振り下ろされ、マイアたちが身を固くした瞬間、何者かがそこに割り込み大きな盾で攻撃を受け止めた。
「あっ」
「ぐおおおおおお、何奴!?」
「アモ……ス?」
「おう。まったく、妹を危険にさらすとはどういうことだ。幸いここには来たことがあったから転送装置経由で飛んできたが……。おかげで五万クレディを失ったぞ? どうしてくれる」
割り込んできたのは、歩くレイドボスことアモスだった。
来いとは言っていたが、まさかこのタイミングで来るとは思いもしなかった。
「すまん、あとで支払う」
「いや、いらん。それよりも面白いやつと戦っているな。もう一人の妹はどうした?」
「あぁ、スピカなら……」
アモスが言ったもう一人の妹とは、スピカのことだ。
スピカは今も横になり、起き上がってきていない。
「何があったかは知らないが、聞くのは後にしよう。まずはこいつを倒せばいいんだろう?」
ニヤリと笑うと、アモスは大きなタワーシールドと大きな片手剣を持ち、ゴブリンアーミー召喚術師の前に立ちはだかる。
その姿は黒い壁のようだ。
「護るべきものを護るために、重戦士となったが、こういう時ほど燃えるものもないな! 本隊とやらは動き出している。もうすぐこっちに来るからそれまでの辛抱だ。あいつらが来ればこの戦いも終わる」
アモス。
自らが盾になることに道を見出したオンラインゲームプレイヤー。
自らが盾になり立ち塞がり、そして鍛えた剣で相手を薙ぎ払うというチートでも搭載してそうな男だ。
ちなみに、闘技場で最も出会いたくない男ナンバーワンと言われている。
「たった一人増えたところで何ができるというのだ! 人間は大人しくわしらに支配されればよいのだ! 死ぬがよい!!」
ゴブリンアーミー召喚術師の強力な攻撃がアモスを襲う。
「なんの!」
ガンッと大きな音を立ててその攻撃は防がれる。
そして――。
「さすがの攻撃だ。だが、その無駄な隙、いただく」
アモスは攻撃を防ぐと、持っていた剣でゴブリンアーミー召喚術師の体を攻撃する。
「ぐおおおおおお、ばかな!? 人間ごときがなぜ!!」
強力な薙ぎ払いを受け、ゴブリンアーミー召喚術師が怯む。
だが、当然の如く傷は深くはない。
「『女神メルヴェイユよ、彼らに慈悲を!!【フェアリーヒール】』」
そして当然のように、マイアは回復術を行使する。
鉄壁の男の周りで、妖精たちが飛び回り傷を修復していく。
さすがのアモスもダメージは受けたようだが、妖精たちのおかげですぐに回復していった。
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