アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
猫と狐と冒険者ギルド
翌朝、ギルドへやって来たボクは、さっそくアニスさんに捕まっていた。
「スピカちゃん? お姉さん、最近構ってもらえなくて寂しかったんだけど?」
「えぇ? ボクは冒険者だからあっちこっち行ってて忙しいんですよ? 毎日構いに来れるわけないじゃないですか」
実際みんなについて回ってレイド行ったりボス倒したり、イベントしたりと大忙しだ。
現実でやることはほとんど終えて、あとは始業式を待つだけということもあってもっぱらゲームと外出に時間を費やしている気がするけど。
「ふ~ん? 昇格させてあげるから、お姉さんと契約しましょ?」
とんだ職権乱用である。
そもそも昇格基準を満たしたから昇格するんじゃないんですか?
「つまり、契約しないと昇格できないということですか?」
「契約しなくても昇格できるよ! 基準満たしてるからね! 単純に契約してほしいだけなんです~。精霊の郷以外の場所だったらギルドの仕事もしっかりこなしてあげますから~」
こんなだめだめなアニスさんだけど、ギルド規則はしっかり守るらしい。
というか、他の場所でギルドの仕事ってどうやるんだろう?
「ほかの場所でギルドの仕事ってどうやるんですか?」
これは純粋な疑問だった。
まさか自宅で出張ギルド受付~なんてできるわけないだろうし。
「うふふ~。クラン作るでしょう? そうしたら、クランハウスで冒険者ギルド出張所を開設できるのよ? すごいでしょ~?」
ややドヤ顔をしたアニスさんが、大きな胸を張りながらそう答えた。
アニスさんが偉いわけじゃないと思うんだけど、何でこんなにお手柄でしょう? みたいな顔されるんだろう……。
「でもボクたちはクラン作るか分からないですよ?」
現状クランを作るといった予定はないので、アニスさんの願いは叶えられそうにない。
そもそもどうしてボクたちがクラン作ると思ったんだろう?
「アイドルクランを作るにゃー!!」
ボクたちが話していると、入り口の方から変な声が聞こえてきた。
この声は音緒!?
「話は聞かせてもらったにゃ! ケモミミでもふもふに私を正式加入させるにゃ! まずはアイドルパーティーを作るにゃ。それからアイドルクランへと変化させていくにゃ! 目指せ全国制覇にゃ!!」
大きな声でボクの目の前で夢を語る音緒。
とても楽しそうなのはいいんだけど、ものすっごく注目を浴びていて辛い……。
「お? なんだなんだ?」
「あれはマイスウィートアイドルの音緒ちゃんじゃないかっ!」
「おぉ? あの青みかかった銀髪の子もなかなか可愛いぞ!?」
「アイドルクランか……。胸が熱くなって本が薄くなるなぁ」
「静粛に。本人が追っていいと言わない限り、我々はただ見守るだけだ」
「つまり、許可が出れば問題ないと?」
「ねぇ、そんなところに集まって邪魔よ、男共」
「変な雰囲気を醸し出してる男の人怖いです……。お姉様、早く行きましょう」
カウンター付近に群がり始める男性プレイヤーたちのお目当ては、どうやら音緒のようだ。
ボクは巻き込まれて辛いんですが……。
「にゃっはは~。みんな~? 元気かにゃ~? 私はとっても元気だにゃ! 親友のスピカにゃんと一緒に色々盛り上げていくからよろしくにゃ~」
「「「おぉぉぉぉぉ~!!」」」
「ちょっと!? ボクまで巻き込まないでよ!?」
この駄猫、ボクまで巻き込み始めたぞ!?
注目されるの嫌いなのに……!!
「にゃっはっはっは~」
「ぐぬぬぬぬ」
どうやって仕返しするべきだろうか。
ボクだって怒るときは怒るんだぞ!
「まぁまぁ、スピカちゃん、たまには注目されてみるのも悪くないかもよ? 少なくとも何か関連商品出るなら絶対買うから!!」
アニスさんは火に油を注ぐのが大好きなもよう。
カウンター前で大騒ぎしてるんだから注意してくれてもいいと思うんですけど?
というか、周りの人やギルド職員さんが冷たい眼で見てるから、もうやめて!!
それから少しして、音緒とアニスさんはギルドマスターのリカルドさんに叱られた。
二人の暴走をボクは止めることができなかったよ……。
「はぁ……。ひどい目に遭った。ところでスピカちゃん、今日は依頼を受けていかないの?」
現在はカウンターの外にあるテーブル席でアニスさんと話している。
机に突っ伏してぐでっとしながら、ボクの方を見て問いかけてきた。
休憩時間とはいっても職場なんだからだらしない格好しているのは良くないんじゃないだろうか……。
「今日は色々とやることがあるので依頼は受けませんよ? 転職もありますし」
ボクは手元の端末を操作しながら、簡単にアニスさんの問いに答える。
今ボクが見ているのは、前回行われたオークションの分配金の入金明細書だ。
ふむふむ、金貨三枚と銀貨二十枚にも及んだのか……。
人数が多かった割になかなかの金額になったと思う。
掲示板や攻略サイトでよく見かけるMといった単位で表すなら、3.2Mといったところだろう。
とってもおいしいなぁ。
「ね~? 何見てるの~?」
端末情報は持ち主が許可しない限り他人が覗き見ることはできない。
なので、ボクの手元を覗きこむようにアニスさんが頭を突っ込んでくるけど、何も見えないので問題ない。
ちょっと鬱陶しいだけなのだ。
「にゃふふ。良い収益だにゃぁ~。スピカにゃん、私のお金も追加するからみんなで乗れる馬車を買うにゃ」
「えぇ~? いいけど、そんなにほいほいお金出していいの? まぁパーティー資産になるからみんなの共同所有物になるけどさ」
「いいにゃ。ケモミミでもふもふの正式メンバーとなるからには必要な投資だにゃ」
胸を張りながらそう言いつつ、音緒はボクの口座にお金を振り込んでくる。
この端末の便利な機能の一つに、いつでもどこでも銀行口座に振り込みができるというものがある。
もちろん出金も可能だけど、お金を引き出す専用の施設以外での出金には、手数料がかかるようになっている。
その専用施設は、街の中に一つは必ずあって職業精霊が管理運営しているんだけどね。
「インベントリから直接お金の入金が可能な上に、出金もインベントリへ直接振り込まれるこのシステム。便利だけど手数料が辛いよね」
「それにゃ~。ゲームの世界でも銀行手数料には悩まされっぱなしで辛いにゃ」
「なになに? 銀行の話?」
ボクとの音緒のやり取りを聞いていたアニスさんが首を突っ込んできた。
「銀行っていえば、この街には銀行あるんですか?」
ボクたちプレイヤーには専用の銀行が存在しているけど、この世界の銀行施設をボクは見たことがない。
もしかしてギルド銀行みたいなのが冒険者ギルド内にあったりするんだろうか?
「あるよ~? 銀行業務は商業ギルドの領分なんだけどね~。一応冒険者ギルド内にも商業ギルド銀行業分室ってのがあって、そこに商人さんが詰めてたりするんだよ? ほら」
アニスさんはそう言いつつ、ある方向を指さした。
その方向を見てみると、冒険者ギルドの受付カウンターのちょっと奥に一つの木製扉が存在していた。
どうやらあの先にあるようだ。
「なんであんなところにあるんです? 気が付きませんよ」
利用することはないだろうけど、さすがにわかりにくいと思う。
じっくり観察してみると、ときどきギルド職員さんや現地冒険者の人が入っていくのがわかった。
「でも、入っていった人はあの扉から出てこないんですね?」
不思議なもので、そう大きくなさそうなのに入っていった人は全く出てこなかった。
反対側に出口でもあるのかな?
「あ~、あの扉は一方通行の魔術がかけられているのよ。自由に出入りできるのは銀行関係者の人だけなの。それ以外の人はあの部屋の反対側にある出口専用の扉から外に出るようになっているのよ。強盗防止なんだってさ」
「強盗とか怖い話だにゃ」
「まぁお金があるってわかっていればあとは襲うだけだもんね~」
アニスさんの説明を聞きながら、ボクと音緒はそんな感想を口にしていた。
やっぱり、銀行強盗とかいるんだよね。
「まぁ入金するようなことがあれば、見てみるといいかもしれないわよ? 利率は良くないけど……」
「あはは、その時は見てみますね」
「当面見る予定はないけどにゃ~」
銀行の利率の話で暗い顔になるアニスさんに苦笑しつつ、ボクと音緒はそう言いお茶を濁した。
ごめんねアニスさん。
ボクたちの精霊銀行、利率それなりにいいんだ……。
「スピカちゃん? お姉さん、最近構ってもらえなくて寂しかったんだけど?」
「えぇ? ボクは冒険者だからあっちこっち行ってて忙しいんですよ? 毎日構いに来れるわけないじゃないですか」
実際みんなについて回ってレイド行ったりボス倒したり、イベントしたりと大忙しだ。
現実でやることはほとんど終えて、あとは始業式を待つだけということもあってもっぱらゲームと外出に時間を費やしている気がするけど。
「ふ~ん? 昇格させてあげるから、お姉さんと契約しましょ?」
とんだ職権乱用である。
そもそも昇格基準を満たしたから昇格するんじゃないんですか?
「つまり、契約しないと昇格できないということですか?」
「契約しなくても昇格できるよ! 基準満たしてるからね! 単純に契約してほしいだけなんです~。精霊の郷以外の場所だったらギルドの仕事もしっかりこなしてあげますから~」
こんなだめだめなアニスさんだけど、ギルド規則はしっかり守るらしい。
というか、他の場所でギルドの仕事ってどうやるんだろう?
「ほかの場所でギルドの仕事ってどうやるんですか?」
これは純粋な疑問だった。
まさか自宅で出張ギルド受付~なんてできるわけないだろうし。
「うふふ~。クラン作るでしょう? そうしたら、クランハウスで冒険者ギルド出張所を開設できるのよ? すごいでしょ~?」
ややドヤ顔をしたアニスさんが、大きな胸を張りながらそう答えた。
アニスさんが偉いわけじゃないと思うんだけど、何でこんなにお手柄でしょう? みたいな顔されるんだろう……。
「でもボクたちはクラン作るか分からないですよ?」
現状クランを作るといった予定はないので、アニスさんの願いは叶えられそうにない。
そもそもどうしてボクたちがクラン作ると思ったんだろう?
「アイドルクランを作るにゃー!!」
ボクたちが話していると、入り口の方から変な声が聞こえてきた。
この声は音緒!?
「話は聞かせてもらったにゃ! ケモミミでもふもふに私を正式加入させるにゃ! まずはアイドルパーティーを作るにゃ。それからアイドルクランへと変化させていくにゃ! 目指せ全国制覇にゃ!!」
大きな声でボクの目の前で夢を語る音緒。
とても楽しそうなのはいいんだけど、ものすっごく注目を浴びていて辛い……。
「お? なんだなんだ?」
「あれはマイスウィートアイドルの音緒ちゃんじゃないかっ!」
「おぉ? あの青みかかった銀髪の子もなかなか可愛いぞ!?」
「アイドルクランか……。胸が熱くなって本が薄くなるなぁ」
「静粛に。本人が追っていいと言わない限り、我々はただ見守るだけだ」
「つまり、許可が出れば問題ないと?」
「ねぇ、そんなところに集まって邪魔よ、男共」
「変な雰囲気を醸し出してる男の人怖いです……。お姉様、早く行きましょう」
カウンター付近に群がり始める男性プレイヤーたちのお目当ては、どうやら音緒のようだ。
ボクは巻き込まれて辛いんですが……。
「にゃっはは~。みんな~? 元気かにゃ~? 私はとっても元気だにゃ! 親友のスピカにゃんと一緒に色々盛り上げていくからよろしくにゃ~」
「「「おぉぉぉぉぉ~!!」」」
「ちょっと!? ボクまで巻き込まないでよ!?」
この駄猫、ボクまで巻き込み始めたぞ!?
注目されるの嫌いなのに……!!
「にゃっはっはっは~」
「ぐぬぬぬぬ」
どうやって仕返しするべきだろうか。
ボクだって怒るときは怒るんだぞ!
「まぁまぁ、スピカちゃん、たまには注目されてみるのも悪くないかもよ? 少なくとも何か関連商品出るなら絶対買うから!!」
アニスさんは火に油を注ぐのが大好きなもよう。
カウンター前で大騒ぎしてるんだから注意してくれてもいいと思うんですけど?
というか、周りの人やギルド職員さんが冷たい眼で見てるから、もうやめて!!
それから少しして、音緒とアニスさんはギルドマスターのリカルドさんに叱られた。
二人の暴走をボクは止めることができなかったよ……。
「はぁ……。ひどい目に遭った。ところでスピカちゃん、今日は依頼を受けていかないの?」
現在はカウンターの外にあるテーブル席でアニスさんと話している。
机に突っ伏してぐでっとしながら、ボクの方を見て問いかけてきた。
休憩時間とはいっても職場なんだからだらしない格好しているのは良くないんじゃないだろうか……。
「今日は色々とやることがあるので依頼は受けませんよ? 転職もありますし」
ボクは手元の端末を操作しながら、簡単にアニスさんの問いに答える。
今ボクが見ているのは、前回行われたオークションの分配金の入金明細書だ。
ふむふむ、金貨三枚と銀貨二十枚にも及んだのか……。
人数が多かった割になかなかの金額になったと思う。
掲示板や攻略サイトでよく見かけるMといった単位で表すなら、3.2Mといったところだろう。
とってもおいしいなぁ。
「ね~? 何見てるの~?」
端末情報は持ち主が許可しない限り他人が覗き見ることはできない。
なので、ボクの手元を覗きこむようにアニスさんが頭を突っ込んでくるけど、何も見えないので問題ない。
ちょっと鬱陶しいだけなのだ。
「にゃふふ。良い収益だにゃぁ~。スピカにゃん、私のお金も追加するからみんなで乗れる馬車を買うにゃ」
「えぇ~? いいけど、そんなにほいほいお金出していいの? まぁパーティー資産になるからみんなの共同所有物になるけどさ」
「いいにゃ。ケモミミでもふもふの正式メンバーとなるからには必要な投資だにゃ」
胸を張りながらそう言いつつ、音緒はボクの口座にお金を振り込んでくる。
この端末の便利な機能の一つに、いつでもどこでも銀行口座に振り込みができるというものがある。
もちろん出金も可能だけど、お金を引き出す専用の施設以外での出金には、手数料がかかるようになっている。
その専用施設は、街の中に一つは必ずあって職業精霊が管理運営しているんだけどね。
「インベントリから直接お金の入金が可能な上に、出金もインベントリへ直接振り込まれるこのシステム。便利だけど手数料が辛いよね」
「それにゃ~。ゲームの世界でも銀行手数料には悩まされっぱなしで辛いにゃ」
「なになに? 銀行の話?」
ボクとの音緒のやり取りを聞いていたアニスさんが首を突っ込んできた。
「銀行っていえば、この街には銀行あるんですか?」
ボクたちプレイヤーには専用の銀行が存在しているけど、この世界の銀行施設をボクは見たことがない。
もしかしてギルド銀行みたいなのが冒険者ギルド内にあったりするんだろうか?
「あるよ~? 銀行業務は商業ギルドの領分なんだけどね~。一応冒険者ギルド内にも商業ギルド銀行業分室ってのがあって、そこに商人さんが詰めてたりするんだよ? ほら」
アニスさんはそう言いつつ、ある方向を指さした。
その方向を見てみると、冒険者ギルドの受付カウンターのちょっと奥に一つの木製扉が存在していた。
どうやらあの先にあるようだ。
「なんであんなところにあるんです? 気が付きませんよ」
利用することはないだろうけど、さすがにわかりにくいと思う。
じっくり観察してみると、ときどきギルド職員さんや現地冒険者の人が入っていくのがわかった。
「でも、入っていった人はあの扉から出てこないんですね?」
不思議なもので、そう大きくなさそうなのに入っていった人は全く出てこなかった。
反対側に出口でもあるのかな?
「あ~、あの扉は一方通行の魔術がかけられているのよ。自由に出入りできるのは銀行関係者の人だけなの。それ以外の人はあの部屋の反対側にある出口専用の扉から外に出るようになっているのよ。強盗防止なんだってさ」
「強盗とか怖い話だにゃ」
「まぁお金があるってわかっていればあとは襲うだけだもんね~」
アニスさんの説明を聞きながら、ボクと音緒はそんな感想を口にしていた。
やっぱり、銀行強盗とかいるんだよね。
「まぁ入金するようなことがあれば、見てみるといいかもしれないわよ? 利率は良くないけど……」
「あはは、その時は見てみますね」
「当面見る予定はないけどにゃ~」
銀行の利率の話で暗い顔になるアニスさんに苦笑しつつ、ボクと音緒はそう言いお茶を濁した。
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