チートスキルはやっぱり反則っぽい!?

なんじゃもんじゃ

チート! 007 ランクアップしちゃったけど・・・

 


 フォレストリザードを狩った日はそのまま宿屋に向かい体に浴びた返り血をふき取って夕飯を食べて寝る事にした。
 1日中森の中を歩いていたのだが身体的な疲れではなく精神的な疲れがあったのかも知れない。


 翌日はゴブリン駆除、グラスウルフ駆除、ナオリ草採取の報告だけをして依頼を受けるのは休みにした。
 ギルド会館の朝は混雑しており、各種依頼を受けようと冒険者が殺到するから朝一を避けゆっくりしてからギルド会館へ向う事にしたのが正解だった。
 ギルド会館内は空いておりシローはゆっくりと受付カウンターへ向う。
 指定席となっているメアリーの前に立つと、ギルドカードを渡し昨日の成果を報告する。


「はい、もう何も言いません。フォレストリザードも偶然出会って殺ってしまったわけですね?」


 ギルドカードの討伐記録を確認してピタリと手を止めたメアリーが溜息を1つ吐いて諦め気味に言い放つ。


「ええ、そうです」
「フォレストリザードについては後でお話を聞くとしまして・・・グラスウルフが63匹、ゴブリンが52匹、の駆除を確認しましたので先日と今回のこの実績によりシロー様はランクF-にランクアップとなります。更にホブゴブリンが59匹、アースボアが31匹の駆除も確認しましたので、この実績によりシロー様はランクE-にランクアップとなります」


 登録して数日の自分をこんなに一気にランクアップさせて、冒険者ギルドは大丈夫なんだろうか?とシローは考える。


「シロー様の討伐数が異常なのであって、本来はこんなに早く昇格できません」


 顔に出ていたのか、犬耳さんは昇格についてシローの異常さを強調してきた。
 そして報酬は預金する事にしているので、残高が増えランクが変わったギルドカードを返してもらう。


「それで・・・フォレストリザードの件ですがランクCの魔物です。ジャイアントモウもですけど、ランクCのパーティーでも梃子摺る魔物なのですが・・・1人でどうやって・・・ああ、それは良いですが、ランクD-になる為のランクアップ試験を受ける気はありませんか?」
「先ほどE-にランクアップしたばかりですが?」
「実績がある方であれば職員の推薦でランクD-のランクアップ試験を受ける事ができます。受かるかはシロー様次第ですけど」


 実績があるからと言って冒険者になって数日の俺をランクD-にしようとするメリットは何だろう?
 冒険者ギルドの戦力強化?
 しかし俺は既に冒険者だからギルドとしては無理にランクを上げる必要はないと思うのだが?


「実績があっても登録して数日の俺をランクD-のランクアップ試験に推薦する理由が分かりませんが」


 メアリーはシローの方に顔を近付けてきたのでシローもメアリーに顔を近づける。


「推薦しシロー様が合格すれば私の実績となりボーナスが出ます!」


 (ははは、いけしゃあしゃあと言い放ったよ。でも欲望に忠実なだけに気持ちがいいわ)


「分かりました。その試験はいつあります? それと試験内容は?」
「試験は6日後です。内容は戦闘能力の確認です。ランクD-からは殆どが討伐や護衛などの依頼になりますので、その力があるかの確認です」
「了解しました。あと、買取はあちらの部屋で良いのですか?」
「魔物のドロップアイテムはあちらの買い取り部屋へお持ち下さい。扉が開いていればご利用できます」


 メアリーの指先を追って視線を向けた先には幾つもの小部屋がある。
 そこにはジャイアントモウのドロップアイテムを鑑定した部屋もあり、魔物のドロップアイテムを買い取ってくれる部屋が並び、冒険者たちやギルド職員からは『買い取り部屋』と言われているエリアだ。


 買い取り部屋に入るとドワーフが待ち構えていた。
 今回の鑑定士はグラビスと自己紹介をしてきたのでシローも自己紹介をしてギルドカードを渡しドロップアイテムを出して行く。


「こらまた・・・少し時間がかかるが大丈夫か?」
「急いではいませんので、大丈夫ですよ」


 グラビスはアイテムを1つ1つ手に取り丁寧に鑑定していく。
 都合30分は鑑定していただろうか、ズラズラっとアイテムの名称や買い取り金額が書かれた紙を差し出してきた。


「今回のアイテム買い取りの詳細だ、確認して問題なければサインをしてくれ」


 ゴブリンは魔石と青銅の剣をドロップし、グラスウルフは魔石と皮、ホブゴブリンからは魔石と鉄の剣、アースボアからは魔石と肉と皮、レッドアイズラビットも魔石と肉と皮、そしてフォレストリザードからは魔石と肉と皮と牙がドロップしている。
 高いのはやはりフォレストリザードのドロップアイテムだった。
 買い取り単価は言い値なのでこれが適正か分からなかったが、種類と数には間違いはなかったのでサインをする。


 ここで買い取り価格に文句を言っても無駄だろうとは思うし、冒険者ギルドが不当に低価格を提示してくるとも思えない。
 そんな事をすれば冒険者は冒険者ギルドを信用せず、冒険者ギルドの運営上必要な買い取り制度が成り立たなくなるだろう。


「しかしジャイアントモウに続きフォレストリザードも狩ってきたか、流石は有望株の新人だ」


 ランクCの魔物をソロで狩れる者は少ないそうで、それができてしまうシローは有望どころではないのだろう。


 売却の代金はギルドに預け、ギルドカードを返して貰う。
 そしてグラビスにお礼を言って買い取り部屋を出たシローはそのままギルド会館を出て軽く食事をしてから次の目的地へ向う。


 前回は知らず知らずに工業区に迷い込んでしまったが、今回も工業区に行くのだ。
 目指すはデリンボの鍛冶工房だ。
 実は昨日宿屋で装備の手入れをしていたら剣に刃毀れがあったので研ぎなおして貰おうと思っているのだ。
 恐らくはフォレストリザードの首に突き刺した時のものだろうと思っているのだが、今現在はシローの唯一の武器であるのでデリンボに手入れをしてもらおうと思っている。
 こんな事を考えると自分も鍛冶のスキルをとっても良いと思ってしまう。


「こんにちは、デリンボさんはいらっしゃいますか?」


 カウンターで店番をしていたのはドワーフだとは思うのだが、デリンボより更に背が低い女性だ。


「家の人に何かようかい?」


 どうやらデリンボの奥さんのようだ。


「デリンボさんに剣と防具の作成を依頼していますシローといいます。今使っているこの剣の手入れをお願いしたいと思い来ました」
「見せてみろ」


 奥さんに話していたら店の奥からデリンボが出てきて剣を手に取り色々な向きから剣を眺める。


「アンタ、休憩かい?」
「おう、一段落ついたからな。それより、この剣はだいぶ使っているな。剣身が歪んでいるぞ」


 奥さんの質問に完結に答えシローの剣を見つめるデリンボに奥さんは不満げのようだ。


「直りますか?」
「刃毀れは研ぎなおせば良いが剣身の歪みは打ち直しになるな。研ぎなら直ぐにやれるが打ち直しはお前の刀や革鎧の後になるぞ」
「そうですか・・・金貨3枚ほどで購入できる剣か刀はありますか?」


 奥さんが「ちょっと待ってね」と言い店先から鋼の片手剣を持ってきた。
 先日シローが見ていた剣で、材質が鋼でできた剣の中でもかなりの良い物だ。
 普通は金貨3枚じゃ買えないと思うような代物だ。


「これを持ってお行き」
「これほどの剣が金貨3枚ですか?」
「あら、アンタの言う通り剣の価値が分かっているようだわ」
「だから言っただろ! シローは見所のある奴だ!」


 (俺の知らないところで話題になっているようだ)


「この鋼の片手剣は金貨6枚の業物よ。でもね良い人に使ってもらった方がこの人も喜ぶし何より剣が喜ぶから構わないわ。それに金貨3枚分はこの人のお酒を減らすから大丈夫よ」


 奥さんはシローにウィンクし、デリンボは酒を減らされると聞き赤ら顔を真っ青にして「それはないじゃろ!」と叫んでいた。


「では、有り難く使わせて頂きます」


 金貨6枚なら買える額だが、態々損を承知で持ってきてくれたその心意気を無碍にする事はしない。
 気風きっぷの良い奥さんに感謝し、シローは美味しいお酒を手に入れてデリンボさんに贈ろうと心に誓うのだった。


 鋼の片手剣は少し柄を細くしてもらい、今までの剣は最初に使った剣でもありたった数日ではあるが愛着もあり打ち直しを頼むのだった。






 

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