Re:Death

緋月 ライル

1話

 ポケットに入れていたスマホが震えた。知らない番号からの電話だった。
「もしもし後藤 快さんの携帯でよろしいですか?落ち着いて聞いてください。………………。」
僕は言葉を失った。内容は婚約者である速水 菜々香が交通事故に逢ったとの事だった。急いで電話のあった病院に駆けつけだがもう菜々香は、帰らぬ人となっていた。
 後日、葬儀が行われ生前の菜々香と似つかないような雨天だった。葬儀が終わり骨となり、菜々香は完全にこの世から姿を消し、僕には、浮遊感だけが残った。
 そして、廃人と化した僕は何も食べず3日を過ごした。そこで、ふと思いついたことがあった。「僕も死ねば菜々香に会えるのでは」廃人と化し、思考も正常に働かなくなった僕は本気でそんな事を思った。
 なるべく菜々香に近づくために菜々香が死んだあの交差点に行った。赤信号、ワゴン車がくるのを確認し、僕は交差点へ踏み出した。不思議と怖くはなかった。むしろ菜々香に会えると心踊らせた。
 背中から呼び止める声が聞こえる。視界の端からワゴン車が飛び混んできた。
 どんっと強い衝撃が身体に走った。コレで菜々香に会えるそう思い、瞼を閉じた。
 しかし、急に視界が明るくなった。目を閉じていたはずがいつの間にか目を開いていたのだ。けれど驚いたのはそこではなかった。僕は交差点で信号待ちをしていたのだ。僕は今確かにあのワゴン車にはねられた。だか僕はここに立っている。すると先ほどのワゴン車を視界の端に捉えた。また迷いなく僕は交差点に踏み出した。どんっと強い衝撃が身体に走る。
 そしてまた僕は信号待ちをしている。そこにワゴン車が来て僕は交差点へ身体を投げ出す、はねられる。気付くと、信号待ちをしている。
何回も何回も繰り返しても結果は変わらなかった。
 

コメント

コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品