【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

指針と会話(2)




 俺の問いかけに藤堂は、しばらく何かを考える素振りを見せた。
 何となくだが、話す内容を取捨しているようにすら見える……。
 
「山岸さんが、海ほたるで消息を絶ったからです」
「――ん? いや、そうじゃなくてだな……」

 藤堂が首を傾げる。
 
「どうして、俺が消息を絶っていたと言う理由で上落ち村に居たんだ? 俺は、上落ち村に関しては二人には話をしていなかったよな?」

 俺の質問に二人とも頷く。

「山岸さんが、行方不明になったあと視界内に表示されていたギルドチャットが使えなかったんです」

 不満そうな表情で江原が言葉を返してくる。
 たしかに、チャットログを一旦OFFにしていたのは俺が悪いが……、って!?

「ちょっと待て」
「何でしょうか?」
「今、江原は視界内のギルドチャットが使えなかったって言ったよな?」
「はい。山岸さんのギルドに加盟した時に視界内に半透明のプレートが表示されて――、そこに話した内容が――、チャットログが流れるようになったんです」
「それは、藤堂もか?」
「はい!」
「ちなみに、俺のギルドに加入する前は半透明なプレートなどが視界に映った事とかは無いのか?」
「ありません」
「私も見た事がないです」

 藤堂のあとに、江原が否定してくる。

「そうか……、HPやレベルが見えるのはダンジョン内だけだよな? たしか、そう講習では言っていたし……」
「はい。相手が承認した場合にのみHPとレベルが、その方の頭上に表示されます」
「なるほど……、つまりプレートが表示されるということは無いんだな?」
「そうなりますね」

 答えてくる藤堂の言葉に頷きながら二人の様子を確認するが――、二人とも真っすぐに俺を見てきているだけで、この点に関して隠し事は無さそうに見える。

「そうか……、それで今は?」
「いまは見えています」
「私も見えています」

 二人とも、何というか普通の冒険者の枠を超えている状態ということか。
 まったく厄介だな。
 未だに自分の能力や、机の中に存在するダンジョンのこと――、そして何故にレベルが上がるのか……。
 さらに言えば、どうして俺だけダンジョンの外に出てもステータスやレベル補正が効いているのか分からないことだらけだ。

「一旦、ギルドを解散した方がいいか……」

 よくわからない力を使っている俺が言えた義理ではないが――、二人に影響を及ぼす力は、あまり良いとは言えない。

「大丈夫です! それにモノレールの問題を踏まえますと! 逆に、色々な相談が出来るギルドチャットログは、とても有意義な物だと思うんです!」

 ――と、江原が力説してくる。
 
「ふむ……」

 まぁ、たしかに江原の言い分にも一理ある。
 日本ダンジョン探索者協会の講習参加に参加してからと言う物、色々と問題はあった。だが! もう大丈夫なはずだ。
これ以上――、問題に巻き込まれる事もないだろう。
 
「山岸さん、どうでしょうか?」
「――いや、江原の言い分は良く分かった。しばらくギルドチャットログは、このままにしておくとしよう」

 

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