【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

自問自答(2)




 震える手で――。
 部屋に置かれているパソコンのマウスを操作していく。

 何故だか知らないが、検索してはいけないという思いに駆られるが、それでも検索サイトに接続し検索することを止める事はできない。

 思わず唾を飲み込む。
 
「上落ち村 山岸鏡花 生存者」

 言葉にしながら打ち込んだあとに検索するためにキーボードのエンターキーを押す。
 すると、伊東市の病院に山岸鏡花と言う人物が搬送されたという記録が出てくる。

「どういうことだ……」

 おかしい。
 俺の記憶だと……、妹は確かに死んだはず……。
 思わず額に手を当てながら考え込む。
 
「くそっ!」

 妹が事切れる瞬間までは思い出せるのに――、それ以降の記憶が思い出せない。
 そこで俺はふと不自然なことに気が付く。

「まてよ……」

 よく考えろ。
 上落ち村で崖崩れが起きたのは記憶にある。
 そして妹が死にかけていたのまでは覚えているのだが――。

「その後、俺はどうやって……、此処に来た?」

 上落ち村で村人の多くが死んだのは分かる。
 だが――、問題は……。
 普通なら、がけ崩れが起きたあとは病院か何かに搬送されるべき案件だろう。
 なのに、俺にはその記憶がない。

「……くっ――」

 思考し考える度に、記憶に霞がかかる。
 それと共に頭に激痛が走る。

「神眼LV10」

 自分の状態を確認するが――、どこにも異常は見られない。 
 つまり、今の俺は……、ステータス異常などは発生していないということだろう。
 だが――。

「なら、俺は一体……」

 ニュースが間違っていないのなら……、生き残ったのは妹と言う事になる。
 そして死亡者のリストの中には俺の名前も載っており……。

「山岸直人と、判断される人物には頭部が切断された状態で発見されている? どういう……こと……だ……」

 思わず自分の顔に手を当てるが――。

「頭はあるよな……、他のニュースサイトは……」

 他のニュースサイトも調べていくが、どのサイトでも生きていたのは妹だけと表記されていた。
 つまり、上落ち村で生き残ったのは妹であり――。
 そして、その妹は伊東市の病院に搬送された後に行方不明になった。

「意味が分からない」

 俺が死んでいて、妹が生きている?
 何の冗談だ。
 なら、俺の持つ記憶は一体……、なんなんだ?
 呻き声を彷彿とさせる声が口から洩れる。
 
「理解できないが……」

 論理的に考えて――、答えは一つしかない。
 妹は生きているという事。
 そして、その妹は姿を消したという事実。

「そして……、俺は――。一体、何者なんだ?」

 思わず自分に自問してしまう。
 だが――、いくつか理由は浮かぶ。
 それは……。

「俺のレベルとステータスの上がり方、そして魔法も関係があるのか?」

 明らかに普通の冒険者とは異質とも言えるレベルの恩恵のステータスの上がり方、そしてステータスの振り方に魔法と、明らかに異なっている。
 ――だが、それが分かったところで……、どうしようもない。

 何故なら、答えられるはずのスキル「大賢者」は使うことが出来ないからだ。

「八方塞がりか……」

 自らの記憶が――、否定されたことに俺はその場に思わず座り込むと、自分の額に手を当てる。

「意味が分からない……」

 必死に考える。
 それと同時に、戦闘を行った国津神である夜刀神が言っていた言葉を思い出す。

「神棟木(かみむなぎ)……、たしか夜刀神と言っていた男は、俺のことをそう言っていたよな?」

 検索サイトで調べるが、それらしき答えは出てこない。
 唯一引っかかったのが――、オカルト記事。

「神棟木、彼岸と比岸を支える意味を持つ? どういうことだ? 別のオカルトサイトには神棟木とはパンドラの箱とも書かれているし……、意味がまったく違うよな……」

 だが、夜刀神という仮面の男は、俺のことを神棟木と言っていた。
 つまり、そこに何かしらのヒントがあるということだろう。
 だが――、それ以上の答えは出てこない。

「誰か知っている奴は……」

 そういえば……、狂乱の神霊樹とかは色々と知っていたような気がする。
 だが――、狂乱の神霊樹はすでに消滅しており、俺の魔法でも復活は出来なかった。
 それでも……。

「マスターと呼ばれた佐々木なら何かを知っているのかもしれない?」


 


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