センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
30話 そして始まる、どちらがより最強に近づけるかを競い合う戦い
中3のセンは心の中で、与えられたチートの設定を丁寧に確認していく。
(このチート……確かに究めれば、魔王や邪神くらいは楽勝で倒せるであろう破格の究極システム……ただし、どうやら、『究めるまで』に、途方もない努力が必要っぽい……正直、一覧に並んでいるチートの中身が理解できているわけではないけれど、直感だけでも、色々とエグそうだってことくらいはわかる。そして、その中でも特にエグそうなものは、どれも、数字が尋常じゃない……なるほど、冗談っぽい言い方はしていたが、本当に何一つ、ウソはついていなかったってことか……)
「さて、そろそろ落ち着いてきたか? では、次のチートの話をしよう」
「え、まだくれるんすか?」
「GLを活かすためのチートだから、セットみたいなものだがな。お前のスマホを出せ」
言われて、センはスラックスのポケットからスマホを取り出した。
ネット小説を読む以外の理由ではほぼ使っていなかった5世代ほど古い端末。
「そいつを改造してやる。具体的には、電動ではなく魔動にして、『数真』というアプリをインストールする。容量が大きいから、他の機能は全部死ぬが……問題はないだろう?」
「ネット使えないなら、なんの意味もないゴミだから、別にいいっすけど……で、その『数真』ってのはどういうものなんすか?」
「経験値を『ストック』できるようにするアプリだ。ONにしている間、お前が獲得した経験値は全て、数真にストックされる。ようするに、好きなタイミングでレベルアップができるようになるってことだ」
「……ぇ、別に、そんなことする意味は……ん……ああ、なるほど。素のレベルが低ければ低いほど、GLの経験値にブーストがかかるのか……」
脳の中を探ってみれば、経験値に関する情報もあった。
「そういう事だ。ちなみに、GLの方は低くても良い事は何もないから、そっちの方の経験値をストックしておく機能はない」
「……はぁ……ん……ぁ、レベルが低ければ低いほど倍率は高いみたいですけど、レベル20くらいまでは、そんなに変化ないんですね……」
「ああ。だから、素のレベルも20までは上げておいた方がいいと助言はしておく。どうするかは全てお前の自由だがな。俺はお前に『ああしろ、こうしろ』とは言わない。お前に命じるのは一つ。超魔王軍ゼノリカを倒せ。それだけだ」
「……了解っす。蝉原に一発かませて、異世界に連れてきてもらって、俺好みのチートまでもらったんだ……借りはキッチリと返します。噂の超魔王軍と神様の間には、なんか、ちょっと、裏がありそうだけど……まあ、気にしない事にしますよ」
「なんのことかわからないな」
と、とぼけながら、心の中で、
(わざわざ、あんなしょうもない演技までしたんだから、そうしてくれないと困る。しかし、アレだな……テレ隠しでバカをやるのも、必要でバカを演じるのも、両方、精神的にキツいものがあるな……はぁ、まあ、もう、その事はいい。とにもかくにも、これで、準備はすべて整った)
何度か横道にそれてしまったが、おおむね、シミュレーション通りに事は進んだ。
自分相手のヘイトコントロール。
結果的には、お茶の子さいさいのだった。
『何か裏があるんじゃないか』と変に疑心暗鬼になられるより、
『裏はあります』と最初から提示しておいた方が、
『センエース相手』の場合、色々とスムーズに事は進む。
――なんせ自分の事だから、当然、最低限は理解できている。
完全な理解は不可能でも、傾向を読むくらいは出来なきゃ、本当にバカだ。
(俺とゼノリカにはただならぬ繋がりがある。お前は、神と超魔王軍の揉め事に巻き込まれた日本人。掌の上で踊らされるのは不愉快……だが、なかなかそそる展開……だろ? もし俺がそっち側なら、必ず――『乗ってやるよ、ただし、テメェ(神)もまとめてぶっとばしてやる』――と、そう考える。そのためにはどうしたらいいかと必死に考える)
神は思う。
――それでいい。
気に入らないモノ全部をぶっ飛ばせる力。
求めろ。
お前なら、手に入れられる。
なんなら、俺を超えてみろ。
望むなら、『ベースとなる権利』をくれてやる。
将来における『俺達の融合』は決定事項だが、
『主導権を握るのがどっちになるか』はまだ未定にしておいてやる。
――神は思う。
どっちでも構わないさ。
お前は間違いなく俺だ。
だから、どっちでもいい。
ただし、『負けてやる気』はねぇ。
ここから、俺はさらに強くなる。
もっと、もっと、強くなる。
決して、立ち止まらず、ずっと、お前に背中を見せ続けてやる。
さあ、はじめようじゃないか、センエース。
どちらが、より最強に近づけるかを競い合う、限りなく不毛な耐久レースを。
お前なら、相手にとって不足はない。
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