センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
9話 言い分。
9話 言い分。
鬱陶しい『監視魔法の使用者』に対して、『気付いているぞ』と少し睨みをきかせるくらいにとどめ、三人は、赤いじゅうたんの上を優雅に歩いて前に進む。
通路の先、横に広がりのある巨大な螺旋階段の前で、三人の足が止まった。
階段の踊り場から、ミシャたちを見下ろしている『三名の老人』の視線が『そこで止まれ』と命じていたから。
その三老人の中で、真ん中に立っている最も徳の高そうな顔をしている高貴な老人が、
「レイモンドのドーラ嬢だね」
『ドーラ』は、今回のミッション用に作成した『レイモンドCEOの娘』の偽名。
ミシャが、ゆっくりと頷いたのを確認してから、その老人は続ける。
「はじめまして。私は、聖霊国フーマー、十なる使徒が一人、第二使徒ケイレーン。向かって右にいるのが、コーレン。左はミハルド」
三老人は、決して頭などさげず、高い位置からミシャたちを見下ろしながら、そう言った。
それに対し、ミシャは、フラットに、
「どうも、こんにちは」
小首を揺らす程度でそう言うだけですませた。
それに対して、感情屋のコーレンが、クワっと目に力をこめて、
「……なんだ、その態度は。立場の違いも分からぬほど――」
「コーレン」
ケイレーンが、ズンと低い声で、そう声をかけて、
「やめなさい」
刺すように、一言だけそう言った。
コーレンは、その瞬間、グっと奥歯を噛んで、視線をミシャからプイと外した。
その態度に、ケイレーンは、少しだけ目を細めてから、ミシャに視線を向けて、
「もうしわけない。コーレンは、少々気性が荒くてね」
その通り一遍な謝罪を聞いたミシャは、
それまでのフラット顔を少し緩め、フッと、鼻で笑ってから、
「もし、さっきのが、『キレる役となだめる役に分かれる古典作戦』なのだとしたら、あまりにお粗末すぎて見ていられないし、もし、本当に、そっちのコーレンとかいうのがただのバカなら、それはそれでお粗末すぎて見ていられないわね」
小馬鹿にするように微笑むミシャの言葉と態度に、コーレンが、先ほどとは明らかに違う質感の顔色をのぞかせた。
青筋をたてて、目に血を走らせる。
なだめ役であるはずのケイレーンは、殺気をだだ漏らしているコーレンに対して、しかし、特に何かを言う事はなく、とうとうと、
「なるほど、そちらの言い分はよくわかった」
『直接的』に『言い分を口にする』必要などない。
立場と態度をハッキリさせれば、充分に想いは伝わる。
――魔カード産業の中核にいながら、フーマーと本気で決別するつもりか。
――驚くほど大胆で、極まって愚かな決断だ。
言葉にはしていないが、コーレンとミハルドの視線が、そう叫んでいた。
ケイレーンが、コホンとセキをしてから、
「しかし、結論を急ぐこともあるまい。今年の仮面武道会には、例年と違い、少しだけ『出来る者』をつれてきた。彼らの武を見てから、答えを出す事を強くお勧めするよ。なにより、われわれは、決して敵対を望んでいないということを――」
話の途中で、ミシャが、ケイレーンの話をブッタ切るように、
「奇遇ね。こちらも、『少しだけ出来る者』を連れてきているわ。ふふ。なんだか、思っていたよりも、楽しい大会になりそうね。すぐに壊れるオモチャばかりだと、見ていても退屈だと思っていたのよ。あなたたちのオモチャなら、きっと、ちょっとは頑丈なのでしょう?」
そう言ったのを聞いて、また、三老人の顔つきに影が入る。
もろもろ無礼がすぎる。
だが、ここで本当にキレるほど愚かではない。
ケイレーンは小さく息を吸ってから、
「……君が言う『出来る者』とは、その二人のことかな?」
「ええ。優秀な部下よ。『父』からも信頼されている、自慢の家族でもあるわ」
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