俺の高校生活に平和な日常を
第4章 #13「有紗からのプレゼント」
 俺は部屋を出て梓達の元へ戻った時1つだけ気になることがあった。
 「あれ?そういえば有紗は?」
 今まで気づかなかったが思い返せば有紗は誕生日会が始まってから喋っているところを見ていない。イヤ、有紗は一言も喋っていなかった。だからいつからいなくなったのか全く分からない。
 「有紗さんならケーキ食べた後、席を外してましたよ」
 「え?そうなの?」
 どうやらみのりは有紗がいなくなっていることに先に気づいていたらしい。
 「部屋に戻ったのかな?」
 「イヤ、部屋には居なかったぜ」
 俺は梓の質問に即答で答えた。イーリスちゃんを部屋に連れて行った時、有紗の姿は全く見えなかったからな。
 「そうなんだ。どこ行ったんだろう?」
 家に居ないことを知り梓はどこか心配そうな顔をし出した。有紗のことだから心配は要らないと思うが…
 「俺、ちょっと探してくるよ!」
 「えっ?お兄ちゃん?」
 「すぐ戻ってくるって」
 俺はそう吐き捨てるように言って家を出て行った。時間は日付が変わる0時前。別に心配している訳ではないしむしろ何も知らずに彼女に近寄る男どもの方が心配ではあるが、梓の顔を見ていると行かざるを得なかった。それに補導などされると色々と面倒なことになる。
 「…とはいってもなー」
 探すと言ったもののどこに行ったのか見当もつかない。とりあえず俺は手当たり次第で探す羽目になってしまった。
 ---探し始めて1時間、これといった成果は得られずにいた。もう帰って来てるんじゃないかと思い梓に連絡を取ってみるがまだ帰って来て居ないらしい。
 「クッソー、どこ行ったんだ!?」
 一応、目ぼしいところを何ヶ所か回って見たがどれも外れだった。
 「まさか家出とかじゃねーだろうな?」
 一瞬、不吉な予想をしてしまったが行くあてもないのに家出をするとはとても考えにくい。
 「もうちょっとだけ探してみるか?」
 家出の可能性を消した俺は半ば諦めかけていた。とりあえずはもう少しだけ探すことにした。家出じゃなければきっとふらっと帰って来るだろうと思い始めているからだ。
 「んー、有紗が行きそうな場所ってどこなんだろうな?」
 俺は有紗が行きそうな場所を模索していた。まず人気多い飲食街はないだろう。夜中だけに人気の多い飲食街に行けば酔っ払いなどが徘徊し始めるからそんなところを女の子1人で歩いていたらトラブルに巻き込まれかねない。(まあ変な男が近寄って来たらぶっ飛ばすだろうな)
 「…あそこ行ってみるかー」
 俺は人気のなさそうな場所をいくつかあげて今いる場所から近そうな場所に走って行った。
 ---走って5分程すると大きな橋がかかっている河川敷へと赴いた。夜は街灯が少なく道以外は何も見えない。その為夜中だと人気は皆無に等しい。
 「流石にこんなとこまで来ないかなー?」
 家からは大分離れているし学校とも正反対の場所にあるから実際俺はほとんどココに来たことがない。そのうえ思いの外広い為、人1人探すのにスマホのライトのみではかなり困難だ。
 「近くまで来てたとはいえこの場所をしらみ潰しに探してたら30分以上はかかるんじゃねーか?せめて有紗が明かりを点けてたら1発で分かるんだけどなー」
 愚痴を溢しながらも有紗の捜索を始めようとした時だった。
 「んん?アレは…」
 500メートルほど先にかかっている橋のところから白い光が見えた。街灯の色とは若干違っていた為、俺はその光が見えなくなってしまう前に橋のところへと駆けて行った。
 「ハア…ハア…」
 走って2分ぐらいで橋のすぐ側まで到着するとどうやら俺が見ていた光は橋の下から灯されていた。更に橋の近くまで来てみると河川敷を降りる為のコンクリート状の階段とその途中に舗装された歩行者専用の道があった。
 (あそこにいるのは…)
 その橋の下の道で誰かがスマホを見つめているのが見えた。俺が目を凝らして見てみると黒髪の長髪の女性だということが判明した。俺は階段を降り女性の横顔を見ようとした。そしてその女性は有紗であると確信した。
 「………」
 有紗は無言でただただスマホの画面を見ていた。まるで彼氏からの連絡を待っている女の子のようだ。
 「ようやく見つけた」 
 「………」
 はっきりと言ったはずだがまさかのシカト。有紗らしいといえば有紗らしいが…
 「…よくここが分かったわね」
 「えっ?あ、ああ。1時間くらいしらみ潰しに探してたからな」
 さっきのはシカトではなく何を言おうか戸惑っていただけなのだろうか?イキナリ喋りかけてくるもんだからちょっとドキッとしてしまった。
 「そっ」
 「『そっ』っておまえ…ハア」
 あっさりとし過ぎる有紗の返事にツッコミを入れようと思ったが、なにぶん1時間以上も探してもはやツッコむ気力もない。
 とりあえず俺はスッと有紗の隣に座った。殴られるのも覚悟の上だったが思いの外有紗は何もしてこなかった。(有紗を何だと思ってるんだろうな俺)
 「………」
 「………」
 探して見つけたまではよかったがここからどう話に移るべきだろうか?
 一,ナチュラルに「どうしたんだよ?」と聞いた場合、あれだけわいせつ行為を働いておいてトボけてるんじゃないかと思われぶっ飛ばされる可能性あり。
 ニ,全力で土下座して謝罪した場合、もしも出てった理由が別にあるなら余計なことを思い出させてしまいぶっ飛ばされる可能性あり。
 三,有紗から話し出すまで待った場合、多分これに関しては話が進まないと思う。
 (ぶっ飛ばされる可能性はあるがここは素直に謝罪するべきか)
 俺は意を決し土下座しようとした時だった。
 「…ごめんなさい」
 「へっ??」
 俺は有紗の唐突な発言に目を丸くした。俺が謝るのならまだしも彼女が謝る理由が俺には分からなかった。
 「本当のこと言うと私、アンタの誕生日が今日だったってこと知らなかったの」
 「は、ハア」
 思い返してみると俺と有紗ってお互い自分のことをあまり話していない気がする。俺が知っていることといえば両親が亡くなってアメリカにいる祖父に育て貰い暗殺者として裏社会の人達に一目置かれていた。俺が知ってるのはそれぐらいだろうか?
 彼女の誕生日が何時か?なんて話、考えてもみなかった。それは有紗も同じ考えだったのだろう。
 「それにあんなこともあったから余計気まずくなって…」
 「ゔっ!それは全面的に俺が悪かったです!すいませんした!!」
 有紗からあの話をされその流れで俺は土下座をした。ちょっと思っていた感じとは違ったがぶっ飛ばされることなく謝罪することが出来たからよしとするか。
 「別にいいわよ。私もあんなことされたの始めてだったからちょっと緊張しちゃって」
 緊張したら頭突きをするのはかなり危険な気がするが口にはしなかった。
 「それに…嬉しかったし…」
 「ん?今なんって?」
 「なんでもない」
 「??」
 何か小言で言っていたようだが聞き取ることが出来なかった。もう一回聞こうとしたが話してはくれなかった。
 「…ちょっと目閉じて」
 「えっ?」
 「いいから!」
 「は、はい!」
 すると有紗は急に立ち上がったかと思うと命令してきたが俺は言われるがままに目を閉じた。何されんだ?
 「…んっ♡」
 「……………ふぇ?」
 目を閉じると俺の頬に生暖かいものが触れた。触れると同時に聞こえてくる有紗の色っぽい声。頬に残る生暖かさと若干濡れているのを感じた。これってまさか…
 「これは…その…プレゼントっていうか…ほら、私…何も準備してなかったから…」
 「あ、ああ〜、そそそ、そうか。あはは…」
 自分で言っといて何が言いたかったのか分からないほどに俺の頭は混乱していた。有紗からのプレゼント、それは間違いなく『キス』であろう。頰とはいえ人生初のキスをこんなかたちで貰えるとは思ってもいなかった。多分、今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しいプレゼントかもしれない。
 「あ、あと返事は…もうちょっと…待ってもらっていい…かな?」
 「えっ!?」
 俺は有紗からのプレゼントを貰い余韻に浸っていると恥ずかしそうに話し出す有紗。そういえば俺は有紗に告白しているかたちになっている。冗談で言っていたつもりだったが完全に有紗は本気にしてしまっている。だがそんなこと今更言える訳がない。
 「ああ、うん。ゆっくり考えてくれていいから」
 ヤバいな、結局言えずに返事待ちのかたちになってしまった。まあそれでいい返事が貰えれば儲けものだがその間、俺は有紗をどういう目で見てればいいのだろうか?
 「と、とりあえず、帰ろっか?」
 「そ、そうね。うん」
 結局、誤解を解くことも出来ず気まずい雰囲気の中、2人で帰って行った。こうして俺にとって人生で忘れることの出来ない誕生日は終わりを迎えたのだった。
 「あれ?そういえば有紗は?」
 今まで気づかなかったが思い返せば有紗は誕生日会が始まってから喋っているところを見ていない。イヤ、有紗は一言も喋っていなかった。だからいつからいなくなったのか全く分からない。
 「有紗さんならケーキ食べた後、席を外してましたよ」
 「え?そうなの?」
 どうやらみのりは有紗がいなくなっていることに先に気づいていたらしい。
 「部屋に戻ったのかな?」
 「イヤ、部屋には居なかったぜ」
 俺は梓の質問に即答で答えた。イーリスちゃんを部屋に連れて行った時、有紗の姿は全く見えなかったからな。
 「そうなんだ。どこ行ったんだろう?」
 家に居ないことを知り梓はどこか心配そうな顔をし出した。有紗のことだから心配は要らないと思うが…
 「俺、ちょっと探してくるよ!」
 「えっ?お兄ちゃん?」
 「すぐ戻ってくるって」
 俺はそう吐き捨てるように言って家を出て行った。時間は日付が変わる0時前。別に心配している訳ではないしむしろ何も知らずに彼女に近寄る男どもの方が心配ではあるが、梓の顔を見ていると行かざるを得なかった。それに補導などされると色々と面倒なことになる。
 「…とはいってもなー」
 探すと言ったもののどこに行ったのか見当もつかない。とりあえず俺は手当たり次第で探す羽目になってしまった。
 ---探し始めて1時間、これといった成果は得られずにいた。もう帰って来てるんじゃないかと思い梓に連絡を取ってみるがまだ帰って来て居ないらしい。
 「クッソー、どこ行ったんだ!?」
 一応、目ぼしいところを何ヶ所か回って見たがどれも外れだった。
 「まさか家出とかじゃねーだろうな?」
 一瞬、不吉な予想をしてしまったが行くあてもないのに家出をするとはとても考えにくい。
 「もうちょっとだけ探してみるか?」
 家出の可能性を消した俺は半ば諦めかけていた。とりあえずはもう少しだけ探すことにした。家出じゃなければきっとふらっと帰って来るだろうと思い始めているからだ。
 「んー、有紗が行きそうな場所ってどこなんだろうな?」
 俺は有紗が行きそうな場所を模索していた。まず人気多い飲食街はないだろう。夜中だけに人気の多い飲食街に行けば酔っ払いなどが徘徊し始めるからそんなところを女の子1人で歩いていたらトラブルに巻き込まれかねない。(まあ変な男が近寄って来たらぶっ飛ばすだろうな)
 「…あそこ行ってみるかー」
 俺は人気のなさそうな場所をいくつかあげて今いる場所から近そうな場所に走って行った。
 ---走って5分程すると大きな橋がかかっている河川敷へと赴いた。夜は街灯が少なく道以外は何も見えない。その為夜中だと人気は皆無に等しい。
 「流石にこんなとこまで来ないかなー?」
 家からは大分離れているし学校とも正反対の場所にあるから実際俺はほとんどココに来たことがない。そのうえ思いの外広い為、人1人探すのにスマホのライトのみではかなり困難だ。
 「近くまで来てたとはいえこの場所をしらみ潰しに探してたら30分以上はかかるんじゃねーか?せめて有紗が明かりを点けてたら1発で分かるんだけどなー」
 愚痴を溢しながらも有紗の捜索を始めようとした時だった。
 「んん?アレは…」
 500メートルほど先にかかっている橋のところから白い光が見えた。街灯の色とは若干違っていた為、俺はその光が見えなくなってしまう前に橋のところへと駆けて行った。
 「ハア…ハア…」
 走って2分ぐらいで橋のすぐ側まで到着するとどうやら俺が見ていた光は橋の下から灯されていた。更に橋の近くまで来てみると河川敷を降りる為のコンクリート状の階段とその途中に舗装された歩行者専用の道があった。
 (あそこにいるのは…)
 その橋の下の道で誰かがスマホを見つめているのが見えた。俺が目を凝らして見てみると黒髪の長髪の女性だということが判明した。俺は階段を降り女性の横顔を見ようとした。そしてその女性は有紗であると確信した。
 「………」
 有紗は無言でただただスマホの画面を見ていた。まるで彼氏からの連絡を待っている女の子のようだ。
 「ようやく見つけた」 
 「………」
 はっきりと言ったはずだがまさかのシカト。有紗らしいといえば有紗らしいが…
 「…よくここが分かったわね」
 「えっ?あ、ああ。1時間くらいしらみ潰しに探してたからな」
 さっきのはシカトではなく何を言おうか戸惑っていただけなのだろうか?イキナリ喋りかけてくるもんだからちょっとドキッとしてしまった。
 「そっ」
 「『そっ』っておまえ…ハア」
 あっさりとし過ぎる有紗の返事にツッコミを入れようと思ったが、なにぶん1時間以上も探してもはやツッコむ気力もない。
 とりあえず俺はスッと有紗の隣に座った。殴られるのも覚悟の上だったが思いの外有紗は何もしてこなかった。(有紗を何だと思ってるんだろうな俺)
 「………」
 「………」
 探して見つけたまではよかったがここからどう話に移るべきだろうか?
 一,ナチュラルに「どうしたんだよ?」と聞いた場合、あれだけわいせつ行為を働いておいてトボけてるんじゃないかと思われぶっ飛ばされる可能性あり。
 ニ,全力で土下座して謝罪した場合、もしも出てった理由が別にあるなら余計なことを思い出させてしまいぶっ飛ばされる可能性あり。
 三,有紗から話し出すまで待った場合、多分これに関しては話が進まないと思う。
 (ぶっ飛ばされる可能性はあるがここは素直に謝罪するべきか)
 俺は意を決し土下座しようとした時だった。
 「…ごめんなさい」
 「へっ??」
 俺は有紗の唐突な発言に目を丸くした。俺が謝るのならまだしも彼女が謝る理由が俺には分からなかった。
 「本当のこと言うと私、アンタの誕生日が今日だったってこと知らなかったの」
 「は、ハア」
 思い返してみると俺と有紗ってお互い自分のことをあまり話していない気がする。俺が知っていることといえば両親が亡くなってアメリカにいる祖父に育て貰い暗殺者として裏社会の人達に一目置かれていた。俺が知ってるのはそれぐらいだろうか?
 彼女の誕生日が何時か?なんて話、考えてもみなかった。それは有紗も同じ考えだったのだろう。
 「それにあんなこともあったから余計気まずくなって…」
 「ゔっ!それは全面的に俺が悪かったです!すいませんした!!」
 有紗からあの話をされその流れで俺は土下座をした。ちょっと思っていた感じとは違ったがぶっ飛ばされることなく謝罪することが出来たからよしとするか。
 「別にいいわよ。私もあんなことされたの始めてだったからちょっと緊張しちゃって」
 緊張したら頭突きをするのはかなり危険な気がするが口にはしなかった。
 「それに…嬉しかったし…」
 「ん?今なんって?」
 「なんでもない」
 「??」
 何か小言で言っていたようだが聞き取ることが出来なかった。もう一回聞こうとしたが話してはくれなかった。
 「…ちょっと目閉じて」
 「えっ?」
 「いいから!」
 「は、はい!」
 すると有紗は急に立ち上がったかと思うと命令してきたが俺は言われるがままに目を閉じた。何されんだ?
 「…んっ♡」
 「……………ふぇ?」
 目を閉じると俺の頬に生暖かいものが触れた。触れると同時に聞こえてくる有紗の色っぽい声。頬に残る生暖かさと若干濡れているのを感じた。これってまさか…
 「これは…その…プレゼントっていうか…ほら、私…何も準備してなかったから…」
 「あ、ああ〜、そそそ、そうか。あはは…」
 自分で言っといて何が言いたかったのか分からないほどに俺の頭は混乱していた。有紗からのプレゼント、それは間違いなく『キス』であろう。頰とはいえ人生初のキスをこんなかたちで貰えるとは思ってもいなかった。多分、今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しいプレゼントかもしれない。
 「あ、あと返事は…もうちょっと…待ってもらっていい…かな?」
 「えっ!?」
 俺は有紗からのプレゼントを貰い余韻に浸っていると恥ずかしそうに話し出す有紗。そういえば俺は有紗に告白しているかたちになっている。冗談で言っていたつもりだったが完全に有紗は本気にしてしまっている。だがそんなこと今更言える訳がない。
 「ああ、うん。ゆっくり考えてくれていいから」
 ヤバいな、結局言えずに返事待ちのかたちになってしまった。まあそれでいい返事が貰えれば儲けものだがその間、俺は有紗をどういう目で見てればいいのだろうか?
 「と、とりあえず、帰ろっか?」
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