転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第七話 お披露目会(12/2修正)

 家族へのお披露目が済んでから、一週間が経ち、今日は、グラシア領内の貴族や有力者に、お披露目をする日だ。

 あれから魔法の創造はしていないが、魔力操作や魔力量増強の修行は、欠かさずに行っている。あと、武神サーノスから言われてたので、庭で木剣を振っている。


「カイン様、いよいよお披露目ですね!」

 シルビアがお披露目用の服を、用意してくれる。

「そうだね。今まではこの屋敷の人たちや教会の人しか会ってないし、外についても、庭内くらいしか出ていないから、いろいろな人に会うのは緊張するよ」

「カイン様なら大丈夫ですよ。なんせ天才ですから」

「天才は言い過ぎだよ。でもありがとう」

 服も髪もセットできた。あとはお披露目だけだ。

 夕方になり、屋敷の大広間には、数十人の招待客が集まってくる。
 主催者のガルムが演台に立ち、第一声をかける。

「今日は忙しい中、集まってくれて感謝する。三男のカインが無事に五歳を迎えられ、こうしてお披露目することになった。先週洗礼も済ませ、神の加護もいただいた。では、カイン入ってこい」

 扉が開けられて、中に入る。
 ガルムの横に立ち、周りを見渡す。

 うわっ。人いっぱいじゃん。
 一度、深呼吸して、息を整える。

「ご紹介に預かりました、カイン・フォン・シルフォードでございます。皆さまのおかげで、無事に五歳を迎えられました。まだ若輩ものですので、これから皆さまのご指導によって、成長していきたいと思っております。これからもよろしくお願いいたします」

 頭を下げた。
 よし、事前に前世の知識を駆使して思い浮かべた、脳内台本通りに言い切った。

 あれ。なんも返答がない。
 周りがシーンとしてる。

 隣を見ると、ガルムもこちらを見ながら苦笑いしてる。
 数秒経ち、ポツポツと拍手が出始め、次第に大きくなっていき、盛大な拍手となった。

「五歳らしくない挨拶ではあったが、皆もよろしく頼む。では乾杯」

 ガルムが最後をしめた。


「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」

 手にもったグラスを高々とあげた。

 あ、さすがに五歳ではあの挨拶はありえないのか。
 まぁしちゃったものは仕方ないので、そのまま通そう。

 次々と挨拶にくる人が並んでいる。

「カイン。覚えておくといい。こいつがトリスだ」

 ガルムが紹介してくれる。

「トリス・フォン・サラバス子爵です。初めましてカインくん。グラシア領の東にある隣国、バイサス帝国との国境の砦の街、ラメスタの領主をしております」

 金髪で貴族服を着ているが、武人の雰囲気だ。

「トリス子爵とは昔馴染みだ。トリス子爵がラメスタを守ってるから、グラシア領は帝国と接してるが安全なんだよ、よく覚えておけ」

 ガルムが説明してくれる。

「ガルム辺境伯が色々と補助してくれるお陰で、兵士も揃えられてるし、助かってるよ。それにしても先ほどの挨拶といい、カイン君は神童かな」

「カインは本ばっかり読んでたからなぁ。もう文字も計算もできるみたいだ」

「それは素晴らしい、三男だし、婿の貰い手はいくらでもつきそうだね。うちに娘がいたら、婿にもらいたいくらいだよ」

 褒めてくれるのはうれしいが、五歳に婿の話をされても困る。

「ありがとうございます。まだまだ勉強が足りません。学園に入るまでは、家の書庫の本を読んで楽しんでいます」
「そのうちラメスタにも来るといいよ。色々と勉強になると思うし」
「わかりました。父と相談して、お伺いできるようにしてもらいます。その時はよろしくお願いします」
「ますます五歳らしくない。でも将来楽しみだね。あ、次の人が待ってるからまた後で」

 そう言って人込みに戻っていった。
 次は文官みたいな人だ。

「サライ・フォン・マクレーン男爵です。このグラシア領にて代官をしており、ガルム辺境伯が王都で留守をまかされております」
「そうそう。サライはいつも書類の山を持ってきて、なかなか逃げさせてもらえないんだよ。印を渡すから適当に押してもらっていいのに」

 ガルムがそう言ってるが、それはそれでダメだろう。
 サライさんも苦笑いしている。

「書類はガルム様に、目を通していただかないといけません。これも領主の仕事ですから」

 思わず頷いてしまった。

「わかったわかった。カイン、この領都のことは、サライに聞くのが一番だ。わからないことがあったら教えてもらえ」
「サライ男爵、グラシア領のこと色々と教えてください。よろしくお願いします」

 素直に頭を下げる。

「カイン様なら喜んで。文官になれる教育もいたしますよ」

 サライは、かなり乗り気になっている。

「待て待て。まだカインは五歳だ。成人してから自分で選ばせる。その時に文官希望だったら、その時は頼む」

「ガルム様、承りました。では私はこれにて失礼いたします」

 次に来たのは、汗をふきふきして、重そうな身体を揺らしながら、近づいてきた。商人のようで、宝石の腕輪や指輪を両手につけていた。

「カイン様ご機嫌うるわしゅう。わしは王都に本店があるナルニス商会で、グラシア領支店長をしているマティアスと言いますわ。言ってくれれば奴隷でもなんでも用意しまっせ。ご用命はわしに頼んますわ」

「奴隷はわかりませんが、お願いすることもあるかと思います。その時はよろしくお願いいたします」

「これは知的な坊ちゃんですわ」

 この商人、コロンつけすぎで臭い。
 その後、数人の挨拶を聞いたところで、挨拶を待っている人の列が落ち着いた。
 カインはガルムに告げる。

「申し訳ありません。一度席をはずします。父上よろしくお願いします」
「わかった。ここにいるから早めに戻ってくるんだぞ」

 人の合間をぬって大広間を出た。
 トイレを済ませ、大広間に戻るために向かってると、同じ年くらいの女の子が、迷っているようだった。

「君、迷ったの?」

 振り向いた女の子は、普通の人が頭にないものがついていた。
 猫耳である。


 ねこみみきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 しかも顔も目がくりくりして可愛い!!
 色々な本を読んでいて、獣人がいるとは聞いていたけど、まだ会ったことがなかった。
 街の外にも洗礼の時以外、出たこともなく、屋敷の人たちも全員人族だったこともあり、初めて会うことができた。

「うん。父さんと一緒に来たんだけど、お手洗いに行ったら、戻れなくなっちゃったの」

 不安そうに答えてくれた。

「僕、カインって言うんだ。君の名前は?」
「私、パルマ」
「じゃあ一緒に大広間に戻ろうか。あんまり戻らないと、お父さんも心配しちゃうしね」
「うんっ」

 パルマが笑顔で答えてくれた。

「大広間に戻ったら、一緒にお父さん探してあげるよ」
「ありがとうカインくん」

 やばい。可愛すぎる。猫耳撫でたい。頭に伸ばしたい手を、必死にこらえながら歩く。

 パルマを案内しながら一緒に大広間に戻った。
 大広間のあちこちでは、人々が雑談をしながらグラスを傾けていた。

「お父さん、どこらへんにいるかなー?」

 一緒に歩いてると声を掛けられた。

「あ、パルマ。戻ってこないから心配したんだよ」

 振り向くと、同じ猫耳をした優しそうな男性が立っていた。

「あ、お父さん。迷っちゃってカイン君に案内してもらったの」
「それはどうも、ありが――」

 お礼の途中で、お父さんが止まった。
 冷や汗をかきながら聞いてくる。

「もしかして、カイン様ですよね」
「はい。そうです。初めまして。カイン・フォン・シルフォードです。今日はお祝いに来てくれてありがとうございます」

 丁寧に頭を下げる。

「いえいえ。こちらこそ申し訳ありません。うちのパルマが、お世話になってしまって」

 隣でパルマは、理解できてないようで首をかしげてる。

 うわ。めっちゃ可愛い……。

「パルマ! この方は今日の主役のカイン様だぞ。失礼はなかったか??」
「えっ。カイン君って貴族様だったの? そういえば、豪華な服着てるなって思ってたけど。今日来ている人は、みんな豪華な服を着ているからわからなかった」
「パルマ! カイン君なんて呼んだらいけません。貴族様なんだからカイン様とお呼びしなさい」
「いやいや、気にしないでください。まだ、お互い子供ですから。今まで屋敷に籠っていたせいで、同年代の人と話す機会がなかったもので。よかったらパルマ、友達になってくれるかな?」
「うん! カインく……様なら喜んで」
「ありがとう」

 いつかその猫耳を、撫でさせてほしいです。

「そういえばご挨拶がまだでした。私はこのグラシア領にてサラカーン商会をしております、サビノスと申します。パルマ共々、よろしくお願いいたします」

 丁寧に頭を下げてくる。
 さっきの宝石を散りばめた商人より、ずっといい感じの人だ。

「こちらこそ。まだ子供で何もできませんが、何かありましたら、よろしくお願いしますね。そろそろ戻らないといけないので、父のところに戻ります。サビノスさん、パルマまたよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 パルマに手を振ってから、ガルムのもとに戻る。
 そのあとも何人か紹介されたが、そこまで記憶に残っていない。
 五歳に紹介しても、そこまでわからないっていうの。

 お披露目会も無事に終わり、来賓もすでに帰った。
 家族用のリビングで、のんびりと紅茶を飲んでいたら、ガルムが入ってきた。

「今日はお疲れだったな。楽しいことでもあったか? 顔がにやけてるぞ」

 ガルムはカインの対面のソファーに座った。

「はい、父上。今日初めて、猫の獣人の方と会いました。女の子がいたのですが可愛かったです」
「五歳で色気づきやがって、まったく」

 ガルムもカインの神童ぶりが発揮され、今日きた来客からの評判もよくご機嫌だった。

「色気づくなら、成人してからにしろよ。カインは三男だからうちを継ぐことはできんからな、成人したら自分の道を見つけるといい。何かするなら手助けはしてやる」

 カインのステータスを知っているガルムとすれば、どの職種につこうとも成功すると思っている。 

「はい、わかってます。僕は冒険者になりたいと思ってます」

 ガルムを見て真剣に答えた。
 ガルムは少し悩んだ顔を見せたが、すぐに笑顔になった。

「宮廷魔術師や騎士や商人ではなく、冒険者か。それもいいかもな」
「はい、冒険者になって、この国の王都や他の地域、できれば、他の国も巡ってみたいです」
「わかった。冒険者になれるのは十歳からだが、十歳になったら、カインは学園に行く必要がある。それまで剣と魔法の家庭教師をつけよう。こちらで人は探しておく」
「父上ありがとうございます」

 時間も遅くなったこともあり、ガルムに挨拶をしてから部屋に戻った。
 服を脱いで、シルビアに渡していく。寝間着に着替えてからベッドに潜り込んだ。

「カイン様、本日はお疲れさまでした。やはりカイン様は天才です! 将来楽しみです」

 シルビアも今日の挨拶を聞いていたようで、興奮している。

「シルビア、そんなに乗せないでよ。それにしても疲れたよ。今日はゆっくり休むね。おやすみ」
「おやすみなさいませ、カイン様」

 シルビアは脱いだ服を、まとめて持ち、部屋出て行った。
 それにしてもやはり猫耳最高!
 そう思いながら、ベッドの中で早々に意識を手放した。

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コメント

  • にせまんじゅう

    ふむ、カインは猫耳派か(キリッ)仲間だ〜

    0
  • リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!

    ケモさんですね!!!!!!!

    2
  • ばけねこ

    猫耳のことばっかり考えてて草

    1
  • 001

    ザビノスは、上下関係がしっかりしてて、いいけど、パルマのフレンドリーな感じも俺は、いいと思うな~

    3
  • ノベルバユーザー282808

    可愛いは正義

    3
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