転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第三十六話 襲撃事件その後2(12/9修正)
カインは街中を通り抜け、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、昼時ということもあり、閑散としている。
冒険者たちは日中、依頼に出ているので、混む時間は朝と夕方だ。
カインは、レティアさんを見つけて、カウンター越しに声をかけた。
「レティアさん、こんにちは。これからエディンさんと会えないかな?」
レティアは、カインに気づき微笑み返す。
「カイン様、こんにちは。今日は、ギルドマスターは執務室におりますので、確認してきますね」
レティアは、隣に座っている受付嬢に一言伝言し、奥へと消えていった。
待っている間、カインは依頼の掲示板を眺める。王都ということもあり、討伐よりも護衛の依頼が主となっていた。
討伐の依頼を探していると、レティアが迎えに来た。
「カイン様、ギルドマスターがお会いになるそうです。ご案内いたします」
レティアに案内され、エディンの執務室に向かう。
ノックをし、扉越しから許可の声が聞こえると、扉を開けて中に入っていった。
「カインくん、今日はどうしたのかな」
カインは勧められたソファーに腰掛けて、前日までの出来事を説明した。
話が進むにつれ、エディンの額にはシワが寄っていく。手は怒りによって強く握られている。
「カインくん、申し訳ない。そこまでひどい状態だとは思わなかった。リキセツは脳筋だがまっすぐな性格なのは知っている。だから、優秀なサブギルドマスターをつけていれば平気だと思っていたのだが、まさかそのサブギルドマスターが不正をしていたとは……」
「それで、ギルドの立て直しで、誰か優秀な人をつけていただけないかと、相談にきました」
カインは、リキセツのことは嫌いではない。まっすぐな性格なだけで、優秀な助手がつけば、問題ないと思っていた。
「わかった。すぐに王都のギルドから手配しよう。わたしも一緒に同行する。これに関しては、王都本部のギルドマスターとしても容認できることではない。用意出来次第、今日にでも向かうことにする」
エディンさんの顔は真剣だった。それほどまでに怒っているのだろう。
「エディンさんは王都から離れても大丈夫なのですか」
王都本部のギルドマスターとは、その国で展開されている冒険者ギルドの総括でもある。そんな人がドリントルの街へ向かうにあたり、数日、王都を空けることになってしまう。
カインは秘密の話を打ち明けることにした。将来の義理の兄ということもあり、信頼をしているからだ。
「エディンさん、実は提案があります。ただし、これに関しては内密でお願いします」
「義弟くんのことだからね、それに関しては約束するよ」
エディンが納得してくれたこともあり、カインは頷いた。
「実は――」
カインは転移魔法により、一瞬でドリントルに行けることを説明した。
「それはありがたい! それにしても、伝説と言われている、転移魔法まで使えたとはね。それなら、今日中にドリントルに行ける。出来れば、新しいサブギルドマスターも連れて行ってもらえないかな? 口外禁止については徹底させる」
「わかりました。では、人選が終わったらすぐにでも」
「二時間後に、また迎えに来てくれるかな。それまでに用意しておこう」
カインは最後にエディンと握手をし、執務室を退出した。
他に用事もなかったので、一度、屋敷に戻ることにした。
扉を開けて中に入ると、コランとシルビアが恐縮した表情で立っていた。
「カイン様、さ、先ほどはすいませんでした。まさか聞かれていたとは」
「カイン様、申し訳ございません」
二人して、頭を深々と下げて謝ってくる。
「うん? 別に構わないよ。年頃だし、二人だったら問題はないよ。ただ、今は領主として大事な時なんだ。だから少し待っててね」
カインが怒っていなかったことに、二人は胸を撫で下ろす。
シルビアは、カインが産まれてまもなくしてからカインの世話をしている、カインにとって特別なメイドだ。
だからこそ、気持ちを打ち明けたことで、解雇をされるかもしれないと思っていたコランは、安心した。
「結婚していい時になったら、僕から言うよ。僕もお祝いだすから」
カインは、二人に伝えると、二人共、顔が真っ赤になっていた。
カインは執務室の机に座り、決済が必要な書類に目を通していく。
さすがにコランは優秀なので、書類が良くまとまっており、問題なく次々に印を押していった。
全ての書類に印を押し、椅子に寄りかかり、腕を上げて身体を伸ばす。
「やっと終わったぁ。そろそろギルドに行く時間かな」
決済を済ませた書類をまとめ、完了の箱に入れていく。
カインは立ち上がり、再度身体を伸ばすと、執務室を出た。
コランとシルビアには、ギルドに向かった後、今日はドリントルに泊まることを告げた。
屋敷を出て、貴族街を抜けていく。冒険者ギルドについた時には夕暮れ時となっていた。
ギルドに入ると、なぜかレティアさんが、不機嫌そうにホールで待っていた。
「カイン様、お待ちしておりました。ギルドマスターがお待ちです」
レティアの案内で、エディンの執務室に向かう。レティアはいつもと違い、無言のままだ。
ノックをし、確認したあとに扉を開けた。
カインはエディンの対面のソファーに座る。そして、なぜかレティアがエディンの横に座った。
すでに、ソファーの横には、大きな荷物が置いてあった。
「レティアにドリントルに行ってもらおうと思ってな。冒険者ギルドでもサブギルドマスターになるためには、それなりの経験が必要となる。レティアはこの王都ギルド本部のチーフも務めているくらいだから、問題はないと思ってね」
「改めて、レティアです。この度王都ギルド本部から、ドリントルのサブギルドマスターになることになりました。えぇ、わたしは独身ですし、寮住まいですからね。どこに行くのもすぐですよ」
レティアはカインに自嘲気味の挨拶したあとに、横を向き、エディンを棘のある視線で見ている。
エディンは、異動させても問題ない人を選んだみたいだな。それにしてもレティアさんがチーフだと知り、カインは驚いた。
「僕もレティアさんが、ドリントルのサブギルドマスターになってくれるなら、心強いです。知っているので話しやすいですし。レティアさんよろしくお願いしますね」
「カイン様、こちらこそよろしくお願いいたします。精一杯頑張ります」
やっと先ほどより表情が和らいできた。
「カインくん、こちらは用意できている。出来れば早く行きたいんだが」
「では、行きましょうか。レティアさんの荷物は、僕が預かりますね」
カインはアイテムボックスの中にレティアの荷物を入れる。
「カイン様はアイテムボックスまでお持ちなのですね……」
レティアの呟きを流しながら、二人に近づくように伝える。
二人の肩に手を置き、魔法を唱える。
「では、行きますね。『転移』」
一瞬で視界が変わり、気づいた時にはドリントルの門の近くだった。
二人とも初めての転移に、驚きを隠せない。
「これが伝説の転移魔法か……」
「本当に一瞬ですね。今まで馬車で移動していた時間は、なんだったんでしょうか」
「ほら、皆さん行きますよ」
カインを先頭に門に向かっていく。
門の衛兵にカインは声を掛けた。
「お疲れ様、通っていいかな」
カインを領主だと知っている衛兵は、緊張気味に答える。
「これは、領主様、後ろのお二人は……」
「後ろの二人は、王都のギルドマスターのエディン殿と、ギルド職員のレティアさんだ」
二人が身分証明書を提示する。もちろんギルドカードだ。職員用のギルドカードは、魔力を流すと名前などの他に、ギルド職員という表示が出てくる。
「確認させていただきました。ドリントルへ、ようこそ」
身分証を確認した衛兵は、礼儀正しく頭を下げる。
その横を三人が通り過ぎ、街へ入っていく。
街並みを見た二人は、思ったよりも賑やかになっていることに感心をしていた。
「やはり、冒険者の街ということもあり、賑やかだね」
「わたしも、もっと酷いのかと思っていました」
二人に街を案内しながら、冒険者ギルドまでついた。
「この街の冒険者ギルド会館は立派だね。さすが登録人数が多いだけあるな」
エディンは建物の外観を眺めながら、そう呟いた。
中に入ると、夕方ということもあり、冒険者たちで溢れていた。奥の酒場についても混んでいることが良くわかった。
扉が開いたことで、冒険者たちの視線がカインに集まる。
その中には、先日の訓練場での出来事を、観覧席で飲みながら観戦していた冒険者たちも多数いたらしく、カインの顔を見るなり腰を抜かして後ずさる。
知らない冒険者たちは、逆にその姿を見ながら、指をさして笑っている。
そして、三人を品定めする冒険者たちもいた。知らない人からすれば、子供とエルフと綺麗な女性のパーティに見えなくもない。
カインを含め、三人はそのまま中に入っていき、カウンター越しに声をかける。
対応したのは、以前にも声を掛けたことがあるオーラだ。
「すいません。ギルドマスターと面会したいのですが」
「はい。カイン様ですね、ギルドマスターにすぐに聞いてきます」
名前を名乗る前に返された言葉に、カインは驚いた。
声を掛けられたオーラは、笑顔で奥に消えていった。その姿を、他の受付嬢が悔しそうな顔をしながら見ていた。
少し待っていると、奥からすごい勢いで、ギルドマスターであるリキセツが出てきた。
「これはカイン様! お待たせいたしまし――」
カインの横には、もちろんエディンがいる。リキセツはエディンの顔を見て、一瞬にして固まった。
「と、と、統括!?」
「やぁリキセツ殿、久しぶりだね。色々と話をしにきたよ」
エディンが来たことによって、リキセツは直立不動でピクリとも動かない。
元Sランク冒険者のリキセツでさえ、エディンには頭が上がらない。
周りの冒険者や受付嬢たちも、リキセツの動揺ぶりに驚き、視線が一箇所に集まる。
「王都のギルド統括であるエディン様が、なぜドリントルまで!?」
「それはもちろん、義弟くんに聞いたからだよ」
「応接室にご案内いたします。こちらへどうぞ」
にっこりと笑うエディンに、リキセツは冷や汗をかきながら、カイン以上にエディンに対応していた。
リキセツを含めた四人が、奥へ消えていったことで、周りにいた人たちが、一斉に騒ぎ出す。
「なんだ、あいつらは!? あの、鬼のリキセツがあそこまでヘコヘコするなんて」
「あのガキ、何者なんだっ!?」
「あいつは悪魔だよ。あのガキが訓練場を、あそこまで破壊したんだぞ。まさに『銀髪の悪魔』だよ」
「「「「マジかっ!?」」」」
受付嬢たちは、リキセツではなく、エディンとカインの話になった。
「あ、あれって……。王都のギルド統括マスターのエディン様よね、王都で一度だけ見たことあるわ。それに後ろにいたのは、王都ギルドでチーフのレティアさんだったよね。そんな人と一緒にいるなんて……」
「「「「カイン様って、いったい何者!?」」」」
カインたちがいないところで、ギルド内の話は、盛り上がっていくのだった。
そしてカインの知らない間に二つ名がついた瞬間だった。
冒険者ギルドは、昼時ということもあり、閑散としている。
冒険者たちは日中、依頼に出ているので、混む時間は朝と夕方だ。
カインは、レティアさんを見つけて、カウンター越しに声をかけた。
「レティアさん、こんにちは。これからエディンさんと会えないかな?」
レティアは、カインに気づき微笑み返す。
「カイン様、こんにちは。今日は、ギルドマスターは執務室におりますので、確認してきますね」
レティアは、隣に座っている受付嬢に一言伝言し、奥へと消えていった。
待っている間、カインは依頼の掲示板を眺める。王都ということもあり、討伐よりも護衛の依頼が主となっていた。
討伐の依頼を探していると、レティアが迎えに来た。
「カイン様、ギルドマスターがお会いになるそうです。ご案内いたします」
レティアに案内され、エディンの執務室に向かう。
ノックをし、扉越しから許可の声が聞こえると、扉を開けて中に入っていった。
「カインくん、今日はどうしたのかな」
カインは勧められたソファーに腰掛けて、前日までの出来事を説明した。
話が進むにつれ、エディンの額にはシワが寄っていく。手は怒りによって強く握られている。
「カインくん、申し訳ない。そこまでひどい状態だとは思わなかった。リキセツは脳筋だがまっすぐな性格なのは知っている。だから、優秀なサブギルドマスターをつけていれば平気だと思っていたのだが、まさかそのサブギルドマスターが不正をしていたとは……」
「それで、ギルドの立て直しで、誰か優秀な人をつけていただけないかと、相談にきました」
カインは、リキセツのことは嫌いではない。まっすぐな性格なだけで、優秀な助手がつけば、問題ないと思っていた。
「わかった。すぐに王都のギルドから手配しよう。わたしも一緒に同行する。これに関しては、王都本部のギルドマスターとしても容認できることではない。用意出来次第、今日にでも向かうことにする」
エディンさんの顔は真剣だった。それほどまでに怒っているのだろう。
「エディンさんは王都から離れても大丈夫なのですか」
王都本部のギルドマスターとは、その国で展開されている冒険者ギルドの総括でもある。そんな人がドリントルの街へ向かうにあたり、数日、王都を空けることになってしまう。
カインは秘密の話を打ち明けることにした。将来の義理の兄ということもあり、信頼をしているからだ。
「エディンさん、実は提案があります。ただし、これに関しては内密でお願いします」
「義弟くんのことだからね、それに関しては約束するよ」
エディンが納得してくれたこともあり、カインは頷いた。
「実は――」
カインは転移魔法により、一瞬でドリントルに行けることを説明した。
「それはありがたい! それにしても、伝説と言われている、転移魔法まで使えたとはね。それなら、今日中にドリントルに行ける。出来れば、新しいサブギルドマスターも連れて行ってもらえないかな? 口外禁止については徹底させる」
「わかりました。では、人選が終わったらすぐにでも」
「二時間後に、また迎えに来てくれるかな。それまでに用意しておこう」
カインは最後にエディンと握手をし、執務室を退出した。
他に用事もなかったので、一度、屋敷に戻ることにした。
扉を開けて中に入ると、コランとシルビアが恐縮した表情で立っていた。
「カイン様、さ、先ほどはすいませんでした。まさか聞かれていたとは」
「カイン様、申し訳ございません」
二人して、頭を深々と下げて謝ってくる。
「うん? 別に構わないよ。年頃だし、二人だったら問題はないよ。ただ、今は領主として大事な時なんだ。だから少し待っててね」
カインが怒っていなかったことに、二人は胸を撫で下ろす。
シルビアは、カインが産まれてまもなくしてからカインの世話をしている、カインにとって特別なメイドだ。
だからこそ、気持ちを打ち明けたことで、解雇をされるかもしれないと思っていたコランは、安心した。
「結婚していい時になったら、僕から言うよ。僕もお祝いだすから」
カインは、二人に伝えると、二人共、顔が真っ赤になっていた。
カインは執務室の机に座り、決済が必要な書類に目を通していく。
さすがにコランは優秀なので、書類が良くまとまっており、問題なく次々に印を押していった。
全ての書類に印を押し、椅子に寄りかかり、腕を上げて身体を伸ばす。
「やっと終わったぁ。そろそろギルドに行く時間かな」
決済を済ませた書類をまとめ、完了の箱に入れていく。
カインは立ち上がり、再度身体を伸ばすと、執務室を出た。
コランとシルビアには、ギルドに向かった後、今日はドリントルに泊まることを告げた。
屋敷を出て、貴族街を抜けていく。冒険者ギルドについた時には夕暮れ時となっていた。
ギルドに入ると、なぜかレティアさんが、不機嫌そうにホールで待っていた。
「カイン様、お待ちしておりました。ギルドマスターがお待ちです」
レティアの案内で、エディンの執務室に向かう。レティアはいつもと違い、無言のままだ。
ノックをし、確認したあとに扉を開けた。
カインはエディンの対面のソファーに座る。そして、なぜかレティアがエディンの横に座った。
すでに、ソファーの横には、大きな荷物が置いてあった。
「レティアにドリントルに行ってもらおうと思ってな。冒険者ギルドでもサブギルドマスターになるためには、それなりの経験が必要となる。レティアはこの王都ギルド本部のチーフも務めているくらいだから、問題はないと思ってね」
「改めて、レティアです。この度王都ギルド本部から、ドリントルのサブギルドマスターになることになりました。えぇ、わたしは独身ですし、寮住まいですからね。どこに行くのもすぐですよ」
レティアはカインに自嘲気味の挨拶したあとに、横を向き、エディンを棘のある視線で見ている。
エディンは、異動させても問題ない人を選んだみたいだな。それにしてもレティアさんがチーフだと知り、カインは驚いた。
「僕もレティアさんが、ドリントルのサブギルドマスターになってくれるなら、心強いです。知っているので話しやすいですし。レティアさんよろしくお願いしますね」
「カイン様、こちらこそよろしくお願いいたします。精一杯頑張ります」
やっと先ほどより表情が和らいできた。
「カインくん、こちらは用意できている。出来れば早く行きたいんだが」
「では、行きましょうか。レティアさんの荷物は、僕が預かりますね」
カインはアイテムボックスの中にレティアの荷物を入れる。
「カイン様はアイテムボックスまでお持ちなのですね……」
レティアの呟きを流しながら、二人に近づくように伝える。
二人の肩に手を置き、魔法を唱える。
「では、行きますね。『転移』」
一瞬で視界が変わり、気づいた時にはドリントルの門の近くだった。
二人とも初めての転移に、驚きを隠せない。
「これが伝説の転移魔法か……」
「本当に一瞬ですね。今まで馬車で移動していた時間は、なんだったんでしょうか」
「ほら、皆さん行きますよ」
カインを先頭に門に向かっていく。
門の衛兵にカインは声を掛けた。
「お疲れ様、通っていいかな」
カインを領主だと知っている衛兵は、緊張気味に答える。
「これは、領主様、後ろのお二人は……」
「後ろの二人は、王都のギルドマスターのエディン殿と、ギルド職員のレティアさんだ」
二人が身分証明書を提示する。もちろんギルドカードだ。職員用のギルドカードは、魔力を流すと名前などの他に、ギルド職員という表示が出てくる。
「確認させていただきました。ドリントルへ、ようこそ」
身分証を確認した衛兵は、礼儀正しく頭を下げる。
その横を三人が通り過ぎ、街へ入っていく。
街並みを見た二人は、思ったよりも賑やかになっていることに感心をしていた。
「やはり、冒険者の街ということもあり、賑やかだね」
「わたしも、もっと酷いのかと思っていました」
二人に街を案内しながら、冒険者ギルドまでついた。
「この街の冒険者ギルド会館は立派だね。さすが登録人数が多いだけあるな」
エディンは建物の外観を眺めながら、そう呟いた。
中に入ると、夕方ということもあり、冒険者たちで溢れていた。奥の酒場についても混んでいることが良くわかった。
扉が開いたことで、冒険者たちの視線がカインに集まる。
その中には、先日の訓練場での出来事を、観覧席で飲みながら観戦していた冒険者たちも多数いたらしく、カインの顔を見るなり腰を抜かして後ずさる。
知らない冒険者たちは、逆にその姿を見ながら、指をさして笑っている。
そして、三人を品定めする冒険者たちもいた。知らない人からすれば、子供とエルフと綺麗な女性のパーティに見えなくもない。
カインを含め、三人はそのまま中に入っていき、カウンター越しに声をかける。
対応したのは、以前にも声を掛けたことがあるオーラだ。
「すいません。ギルドマスターと面会したいのですが」
「はい。カイン様ですね、ギルドマスターにすぐに聞いてきます」
名前を名乗る前に返された言葉に、カインは驚いた。
声を掛けられたオーラは、笑顔で奥に消えていった。その姿を、他の受付嬢が悔しそうな顔をしながら見ていた。
少し待っていると、奥からすごい勢いで、ギルドマスターであるリキセツが出てきた。
「これはカイン様! お待たせいたしまし――」
カインの横には、もちろんエディンがいる。リキセツはエディンの顔を見て、一瞬にして固まった。
「と、と、統括!?」
「やぁリキセツ殿、久しぶりだね。色々と話をしにきたよ」
エディンが来たことによって、リキセツは直立不動でピクリとも動かない。
元Sランク冒険者のリキセツでさえ、エディンには頭が上がらない。
周りの冒険者や受付嬢たちも、リキセツの動揺ぶりに驚き、視線が一箇所に集まる。
「王都のギルド統括であるエディン様が、なぜドリントルまで!?」
「それはもちろん、義弟くんに聞いたからだよ」
「応接室にご案内いたします。こちらへどうぞ」
にっこりと笑うエディンに、リキセツは冷や汗をかきながら、カイン以上にエディンに対応していた。
リキセツを含めた四人が、奥へ消えていったことで、周りにいた人たちが、一斉に騒ぎ出す。
「なんだ、あいつらは!? あの、鬼のリキセツがあそこまでヘコヘコするなんて」
「あのガキ、何者なんだっ!?」
「あいつは悪魔だよ。あのガキが訓練場を、あそこまで破壊したんだぞ。まさに『銀髪の悪魔』だよ」
「「「「マジかっ!?」」」」
受付嬢たちは、リキセツではなく、エディンとカインの話になった。
「あ、あれって……。王都のギルド統括マスターのエディン様よね、王都で一度だけ見たことあるわ。それに後ろにいたのは、王都ギルドでチーフのレティアさんだったよね。そんな人と一緒にいるなんて……」
「「「「カイン様って、いったい何者!?」」」」
カインたちがいないところで、ギルド内の話は、盛り上がっていくのだった。
そしてカインの知らない間に二つ名がついた瞬間だった。
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コメント
にせまんじゅう
銀髪の悪魔…言い得て妙だな…(ウンウン)
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
銀髪の悪魔…………いぃなぁー俺も黒髪の悪魔って呼ばれたいよー
スザク
「転移」にルビでルーラつけようぜ?
トクさん
ダークネススマイリング
ノベルバユーザー304999
シルバーデビル....なんか
????「スタ◯プラチナ!」
みたい