転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第十六話 ルガールの遺跡2


 カインは地下十一階へと進んだ。
 長い階段を降ると目の前には森が広がっていた。
 木々は高さ十メートルを超え視界が遮られている。

「なんでこんなところに森が……しかも明るいし」

 上を見上げると天井全体が光っているように見える。カインは探査サーチを使い状況の把握に努めた。
 数キロに渡って大きな空間となっており、所々に冒険者と思われる集団や、魔物も認識できた。
 カインは慎重に光が行き届かない薄暗い森の中へと足を進めた。
 冒険者達を避けながらカインは森を進んでいく。
 途中で出会った魔物は、猿に似たような魔物で、Bランクに分類されているフォレストモンキーだった。手足が長く、二メートルにも満たないフォレストモンキーは群れでいることが多く、木の枝を飛び回りながら『岩弾ロックバレット』を放っていく。数体から同時に放たれる魔法を避けながらカインも『岩弾ロックバレット』を放ち応戦しながら魔物を殲滅していく。
 フォレストモンキー自体の戦闘能力は強くないが、群れでいることと、木の上を飛び回ることで剣では対応が難しいからこのランクに分類されている。
 探査サーチで魔物の位置を認識できているカインにとっては木々に隠れていても問題なく対応が出来ていた。

「これくらいなら問題ないかな……もっと進むか」

 カインの魔法を受け息絶えた魔物を次々とアイテムボックスに収容しながらカインは更に奥へと進んでいった。
 奥へ進むと、地面に振動が響き渡るような音がする。バキバキと枝が折られ目の前に現れたのは四メートルほどのゴリラの姿をした魔物だった。胸の筋肉ははちきれんばかりに強調され、太い手足で全身を黒い毛で覆われている。
 魔物ランクAに分類されるフォレストコングだった。
 フォレストコングは大人の胴回りはあろうかという巨木を抱えてカインを見つめた。
 心なしか敵を見つけてにやりと頬が緩んでいるようだ。
 カインはフォレストモンキーと同じく『岩弾ロックバレット』を放つ。
 フォレストコングはカインの岩弾ロックバレットを見ても動じない
 この森ではフォレストコングとフォレストモンキーは共存しており、同じ魔法だと思ったのであろう。
 ただし、カインの魔法は威力を含め桁違いである。
 フォレストコングの胸に当たった岩弾ロックバレットはそのまま背中から貫通し抜けていった。
 予想外の威力にフォレストコングは驚きの表情を浮かべ――そのまま息絶えた。
 カインは息絶えたのを確認し、アイテムボックスの中に収容していく。
 森の中では、他にフォレストウルフの群れとも遭遇したがカインの敵ではなかった。
 そして一時間ほどで森を抜けたカインは下に降りる階段を更に進んでいった。
 地下十二階は岩場のような場所で、同じように出てくる魔物を殲滅しながらカインは下階へと進んでいく。
 気づいた時にはすでにこのダンジョンの探索上位と同じ地下十五階まで降りていた。
 目の前には草原が広がっている。遮る物は何もなく、ただ草原が数キロの広さで広がっているだけだ。

「ここが今、一番深いところか……」

 カインは事前に説明を受けていたが、さすがに内容までは説明はされていない。初めて入るダンジョンでいきなり冒険者ギルドが把握している最下層まで降りるとは思っていなかったであろう。
 カインはそのまま探査サーチを使い、周りの反応を探っていく。
 進んでいくと現れたのは地竜アースドラゴンだった。
 但し、群れであったが。十メートルほどの小さい岩山を囲むように群がっている。
 基本的に地竜アースドラゴンは単独でいることが多く、群れで暮らすことはない。
 それが目の前には数十、いや、百はいるであろうか。地面が五メートルを超える地竜アースドラゴンで埋め尽くされており、その光景は圧巻であった。
 冒険者ギルドからは十五階が探索の限界というのが良くわかる。
 Aランクに分類される、地竜アースドラゴンが群れでいるのだ。普通の冒険者では対応は無理であろう。
 一体の魔物にパーティーで当たる必要があるのに、これだけの地竜アースドラゴンには何人の冒険者が必要なのだろうか。数百人のAランク冒険者達がいれば可能であろうが、常識的にそれは不可能である。
 実際に冒険者達はこの光景を目の当たりにし、命からがら逃げ出したのである。

 そして、寛いでいるであろう地竜アースドラゴンの群れが一斉に顔を上げ、カインに視線が集まる。

「えっ、なんでこんなにいるの!? まじかっ!」

 あまりの情況にカインも生唾を飲む。
 そしてカインに一番近くにいた、五体の地竜アースドラゴンがカインに向かって走り出した。
 思わず『浮遊フライ』で飛び上がった。
 地竜アースドラゴンは届かないカインに向かって顔を目一杯に上げ咆哮をあげる。
 高さ十メートルほどの高さに浮遊したカインは、地竜アースドラゴンの群れを上から眺める。

「これだけ集まると壮大だなぁ……どうやって倒そうか……獄炎地獄インフェルノなら倒せるだろうけど、素材が駄目になりそうだしな……。やっぱり岩弾ロックバレットかな」

 カインは両手に魔力を込めていく。いつも放っているよりも魔力を凝縮し、魔法を放った。

岩流星群ロックメテオ

 カインの周りには数百を超える岩弾が現れる。
 そして一斉に地竜アースドラゴンに襲いかかる。
 頭を貫通するものや、身体を貫通するもの、悲鳴にも聞こえる鳴き声が草原に響き渡った。
 カインが三度の魔法を放ち終わった頃には、動く魔物は一体もいなかった。

「素材がいっぱいだな」

 カインは冒険者ギルドで引き取ってもらう素材に目を輝かせながら、上空から降りた。
 そして死に絶えた地竜アースドラゴンを次々と収納していく。
 岩山に向かって収納しながら近づいていくと、カインの探査サーチが反応した。

 いきなり地響きが起き、地竜アースドラゴンが囲っていた小さい岩山が動き出す。
 岩山が持ち上がり手足が出て最後に首が出てくる。
 全長は二十メートルを超えるであろうか。顔はドラゴンというよりワニガメみたいな顔をし、二メートルほどの太い首をもち、岩山のような甲羅を背負った魔物であった。
 カインは知らないが、この魔物は岩竜ロックドラゴンといい、魔物のランクではSSSとされている。
 魔物の大きさもさる事ながら、分厚い岩山のような甲羅に覆われており、魔法も剣技もほとんど通用しない。カインの屋敷に飾られているレッドドラゴンよりも格上となる。
 動きはゆっくりだが、行動を遮れる者は誰もおらず、伝説級とされている魔物であった。
 もし街でこの岩竜ロックドラゴンが現れたら確実に壊滅するであろう。
 国が威信をかけ全軍で当たったとしても倒せる保証がない程の魔物である。
 岩竜ロックドラゴンは周りの惨状をゆっくりと見渡し、そしてカインに視線を送った。
 その目は憎悪に満ちたように一直線にカインを見つめ、大きな口をゆっくりと開く。
 その口からは人の頭サイズはあろうかという岩がいくつも放たれた。

「あぶねぇぇっ」

 いきなり放たれた魔法にカインは驚き転移を使い避けた。
 そして少し離れたところから、カインは岩竜ロックドラゴンの全体を見渡した。

「こんなでかいのがいるんだ……すげーな! でも……どうやって倒すんだろ……」

 転移したことで、岩竜ロックドラゴンはカインを見失いゆっくりと首を回し標的を探していく。


 そんな中、カインは背中の岩山の甲羅の上に立ち、倒し方を考えるのであった。



コメント

  • ノベルバユーザー375143

    魔物放置じゃなかった?

    0
  • スザク

    いやー、ロックバレットで貫通できるんじゃない?

    4
  • ノベルバユーザー304999

    (カインくん)ニンゲンジャネエ!.....あ、亜神だった

    3
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