転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第二十四話 誘惑するもの
「もちろん、一気に転移魔法で……」
ティファーナもカインが伝説と言われる転移魔法を使えることは知っていた。
王国でもごく一部の者しかその事実は知らず、エスフォート王国の近衛騎士団長として上層部より説明をされていた。
しかし説明を受けたときは「カインなら仕方ないか……」と思っていたが、それは大量の魔力を消費し、数人が転移する位だと認識していた。
この檻ごと数百人を一回で転移させられると、誰もが認識などしていない。
しかし、他の生徒や教師がいる前で行うことは流石になかった。
生徒達を守るために乗せていた護送車の中から、次々と下りてきた。
数百人にものぼる襲撃者たちに、生徒達の表情は暗い。
いくら撃退して危機は終わったとはいえ、一歩間違えたら自分たちの運命は変わっていたかもしれないのだ。
護送車を降りたテレスティアたちも縛られている襲撃者たちを横目にカインの下へと移動する。
「カイン様、今回の襲撃はいったい……?」
カインはテレスティアとシルクには話さないといけないと思い、リルターナだけは少し席を外して貰った。
「実は――――」
コルジーノ侯爵とバルド子爵が王国側から、マルフ元議員が結託しイルスティン共和国側より襲撃を企てたこと。
他の生徒達はイルスティン共和国の闇ギルド側にて、奴隷として拉致される予定だったことを淡々と説明していく。
カインの説明を最後まで聞いた二人の表情は暗い。
「も、もしかしてこのままだったら戦争に……」
「うん、誰かに何かあったら戦争になるだろうね……」
「なんとか防げたけど、王国も共和国も今回の襲撃で色々と大変なことになりそうだよね……」
王国として今すぐここで回答を出すことはできない。
早々に王国へと戻り、国王を含めて結論を出すことになった。
カイン以外の生徒や教師は、ティファーナが連れてきた近衛騎士団の半分が護衛として先行して王国へと出発した。
テレスティアやシルクは不満げであったが、この大人数の捕縛をして半分となった近衛騎士団だけでは移送するのにも問題があり、渋々ながら馬車出発していった。
「よし、それでは始めるか……」
ティファーナの言葉にカインは頷くと、次々と護送車に捕らえた襲撃者たちを詰め込んでいく。
二台の護送車、そして檻にタコ詰めになりながら押し込んでいく。
「バルド子爵達やマルフたちも王都でいいんですね?」
「うん、それで構わない。流石にこの人数の監視を分けるわけにもいかぬからな」
当初はマルフ達を国境の詰め所で捕らえておく予定であったが、兵士を分割するわけにもいかず、一度王都へとまとめて連行することになった。
まずはバルド子爵たちを乗せた護送車に手を触れ、反対の手でティファーナの手を繋ぐ。
『転移』
その場から護送車一台とカイン、ティファーナの姿が消えた。
◇◇◇
王都の近衛騎士団は緊急事態で全員が武装していた。
ティファーナがつかんだ情報により、カイン達一行の襲撃事件がされると知り、ティファーナは王都を飛び出し、残った騎士団は王城の守備をしていた。
――そして訓練場にいきなり鉄の箱が現れた。
残っていた騎士は、笛を吹き緊急事態の合図を送る。
そしてゾロゾロと勢いよく武装した騎士団が訓練場へと押しかけてきた。
そこに現れたのはティファーナとカインの二人。そして護送車だ。
カインの姿を見た騎士団は「やっぱりシルフォード卿か……」とため息をつく。
「すでに襲撃者たちは捕縛されていた。あと何往復して襲撃者達を運ぶ! 牢の準備をしておけ」
「「「はいっ」」」
ティファーナの言葉に騎士団の団員はテキパキと襲撃者たちを下ろし、牢屋へと連れて行く。
カインは転移を繰り返し、全ての襲撃者たちを王都まで運ぶこととなった。
襲撃者の処理が終わり、ティファーナの前には王都に残っていた騎士団が整列する。
「それではこれより――――コルジーノ卿の捕縛へと向かう」
「「「「!?」」」」
上級貴族であるコルジーノ侯爵捕縛を言い出したティファーナに騎士団は驚きの表情をする。
「何を驚いている。今回の襲撃犯の黒幕はコルジーノだ。それでは行くぞ!」
宣言の少し前。
カインも同行するつもりであったが、ティファーナに止められた。
「これは騎士団の仕事だ。カインがいれば心強いが、それでは騎士団は意味をなさなくなる。カインは陛下に説明を頼む」
「……うん、わかった。気をつけて」
「――――うん」
ティファーナはカインの事を一度抱きしめたあと、近衛騎士団を引き連れ、コルジーノ邸へと向かい、カインは近衛騎士団一行を見送った後、国王やエリック公爵に説明するために王城へと向かった。
◇◇◇
「ちくしょう!! なんであれだけの人数がいて失敗するんじゃ!!」
派手な造りの執務室で椅子を蹴り上げて怒りをあらわにするコルジーノがいた。
その横にはマルフを丸め込んだリガンが佇んでいる。自分の手の者に王都の動きを監視させており、騎士団がこの邸宅を目指しているのをいち早く察知し、コルジーノに逃亡の助言を与えるためにきたのだった。
「仕方ありません、襲撃は失敗したものと……。それにしても何故この距離があるのに……こんなに早く連絡が……」
「そんな事は関係ないっ! まずは金を持って少し身を隠すぞ。そしてすぐに国外に迎えるように手配しろ」
「はい、仰せのままに……」
リガンが執務室を退出したのを確認すると、コルジーノは絵の額を横にずらし、そこに隠れたスイッチを操作する。
ゴゴゴゴ……と書棚が横へと動き始め、人が一人通れるほどの通路が現れた。
「とりあえず持てるだけ持っていかねばな……」
コルジーノはその開いた隙間を通っていく。
中には階段があり、そこをゆっくりと下りていき、そして厳重に閉じられた扉の鍵を開け、中へと入っていく。
そこは二十畳ほどのスペースがあり、金貨が積まれた箱がいくつも並び、宝石や希少性がある物が所狭しと置かれていた。
コルジーノの隠し部屋であり、今までため込んでいた財産が全てここに保管されていた。
「あれだけの人数で失敗するとは……。せっかく、せっかくここまで登りつめたのにっ! あんなくそガキのせいでっ! わしの計画がっ!!」
怒鳴り散らしながらもコルジーノは金貨の箱を魔法鞄へと詰めていく。
そんな中、コルジーノ一人しか知らないはずの部屋で後ろから声がかかる。
『負けたくないんだろう……。だったら――』
頭の中に直接響くような声にコルジーノは振り向き、誰もいない事を確認する。
「だ、誰じゃっ!? ここはわし一人しか知らないはずなのに……」
『――――力を貸してあげるよ』
その声は蓋が閉じられた一つの宝石が聞こえた。
「ここから声が……? この箱は一体……」
コルジーノはその声の出す宝石箱の蓋に手を掛け、勢いよく開いたのだった。
ティファーナもカインが伝説と言われる転移魔法を使えることは知っていた。
王国でもごく一部の者しかその事実は知らず、エスフォート王国の近衛騎士団長として上層部より説明をされていた。
しかし説明を受けたときは「カインなら仕方ないか……」と思っていたが、それは大量の魔力を消費し、数人が転移する位だと認識していた。
この檻ごと数百人を一回で転移させられると、誰もが認識などしていない。
しかし、他の生徒や教師がいる前で行うことは流石になかった。
生徒達を守るために乗せていた護送車の中から、次々と下りてきた。
数百人にものぼる襲撃者たちに、生徒達の表情は暗い。
いくら撃退して危機は終わったとはいえ、一歩間違えたら自分たちの運命は変わっていたかもしれないのだ。
護送車を降りたテレスティアたちも縛られている襲撃者たちを横目にカインの下へと移動する。
「カイン様、今回の襲撃はいったい……?」
カインはテレスティアとシルクには話さないといけないと思い、リルターナだけは少し席を外して貰った。
「実は――――」
コルジーノ侯爵とバルド子爵が王国側から、マルフ元議員が結託しイルスティン共和国側より襲撃を企てたこと。
他の生徒達はイルスティン共和国の闇ギルド側にて、奴隷として拉致される予定だったことを淡々と説明していく。
カインの説明を最後まで聞いた二人の表情は暗い。
「も、もしかしてこのままだったら戦争に……」
「うん、誰かに何かあったら戦争になるだろうね……」
「なんとか防げたけど、王国も共和国も今回の襲撃で色々と大変なことになりそうだよね……」
王国として今すぐここで回答を出すことはできない。
早々に王国へと戻り、国王を含めて結論を出すことになった。
カイン以外の生徒や教師は、ティファーナが連れてきた近衛騎士団の半分が護衛として先行して王国へと出発した。
テレスティアやシルクは不満げであったが、この大人数の捕縛をして半分となった近衛騎士団だけでは移送するのにも問題があり、渋々ながら馬車出発していった。
「よし、それでは始めるか……」
ティファーナの言葉にカインは頷くと、次々と護送車に捕らえた襲撃者たちを詰め込んでいく。
二台の護送車、そして檻にタコ詰めになりながら押し込んでいく。
「バルド子爵達やマルフたちも王都でいいんですね?」
「うん、それで構わない。流石にこの人数の監視を分けるわけにもいかぬからな」
当初はマルフ達を国境の詰め所で捕らえておく予定であったが、兵士を分割するわけにもいかず、一度王都へとまとめて連行することになった。
まずはバルド子爵たちを乗せた護送車に手を触れ、反対の手でティファーナの手を繋ぐ。
『転移』
その場から護送車一台とカイン、ティファーナの姿が消えた。
◇◇◇
王都の近衛騎士団は緊急事態で全員が武装していた。
ティファーナがつかんだ情報により、カイン達一行の襲撃事件がされると知り、ティファーナは王都を飛び出し、残った騎士団は王城の守備をしていた。
――そして訓練場にいきなり鉄の箱が現れた。
残っていた騎士は、笛を吹き緊急事態の合図を送る。
そしてゾロゾロと勢いよく武装した騎士団が訓練場へと押しかけてきた。
そこに現れたのはティファーナとカインの二人。そして護送車だ。
カインの姿を見た騎士団は「やっぱりシルフォード卿か……」とため息をつく。
「すでに襲撃者たちは捕縛されていた。あと何往復して襲撃者達を運ぶ! 牢の準備をしておけ」
「「「はいっ」」」
ティファーナの言葉に騎士団の団員はテキパキと襲撃者たちを下ろし、牢屋へと連れて行く。
カインは転移を繰り返し、全ての襲撃者たちを王都まで運ぶこととなった。
襲撃者の処理が終わり、ティファーナの前には王都に残っていた騎士団が整列する。
「それではこれより――――コルジーノ卿の捕縛へと向かう」
「「「「!?」」」」
上級貴族であるコルジーノ侯爵捕縛を言い出したティファーナに騎士団は驚きの表情をする。
「何を驚いている。今回の襲撃犯の黒幕はコルジーノだ。それでは行くぞ!」
宣言の少し前。
カインも同行するつもりであったが、ティファーナに止められた。
「これは騎士団の仕事だ。カインがいれば心強いが、それでは騎士団は意味をなさなくなる。カインは陛下に説明を頼む」
「……うん、わかった。気をつけて」
「――――うん」
ティファーナはカインの事を一度抱きしめたあと、近衛騎士団を引き連れ、コルジーノ邸へと向かい、カインは近衛騎士団一行を見送った後、国王やエリック公爵に説明するために王城へと向かった。
◇◇◇
「ちくしょう!! なんであれだけの人数がいて失敗するんじゃ!!」
派手な造りの執務室で椅子を蹴り上げて怒りをあらわにするコルジーノがいた。
その横にはマルフを丸め込んだリガンが佇んでいる。自分の手の者に王都の動きを監視させており、騎士団がこの邸宅を目指しているのをいち早く察知し、コルジーノに逃亡の助言を与えるためにきたのだった。
「仕方ありません、襲撃は失敗したものと……。それにしても何故この距離があるのに……こんなに早く連絡が……」
「そんな事は関係ないっ! まずは金を持って少し身を隠すぞ。そしてすぐに国外に迎えるように手配しろ」
「はい、仰せのままに……」
リガンが執務室を退出したのを確認すると、コルジーノは絵の額を横にずらし、そこに隠れたスイッチを操作する。
ゴゴゴゴ……と書棚が横へと動き始め、人が一人通れるほどの通路が現れた。
「とりあえず持てるだけ持っていかねばな……」
コルジーノはその開いた隙間を通っていく。
中には階段があり、そこをゆっくりと下りていき、そして厳重に閉じられた扉の鍵を開け、中へと入っていく。
そこは二十畳ほどのスペースがあり、金貨が積まれた箱がいくつも並び、宝石や希少性がある物が所狭しと置かれていた。
コルジーノの隠し部屋であり、今までため込んでいた財産が全てここに保管されていた。
「あれだけの人数で失敗するとは……。せっかく、せっかくここまで登りつめたのにっ! あんなくそガキのせいでっ! わしの計画がっ!!」
怒鳴り散らしながらもコルジーノは金貨の箱を魔法鞄へと詰めていく。
そんな中、コルジーノ一人しか知らないはずの部屋で後ろから声がかかる。
『負けたくないんだろう……。だったら――』
頭の中に直接響くような声にコルジーノは振り向き、誰もいない事を確認する。
「だ、誰じゃっ!? ここはわし一人しか知らないはずなのに……」
『――――力を貸してあげるよ』
その声は蓋が閉じられた一つの宝石が聞こえた。
「ここから声が……? この箱は一体……」
コルジーノはその声の出す宝石箱の蓋に手を掛け、勢いよく開いたのだった。
コメント
rain
アーロン…ごめん君のことすっかり忘れてた。
あれ?後ろから凄い殺気g………………
Kまる
でしょ?
ノベルバユーザー240999
アーケン?アーロン?でも遊戯の神でしょ?
ゆるりんX
コルジーーーーノォォォオ!!
西東 北南(さいとう ぼくなん)
応援してます!これからも頑張ってください!