引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

これが俺にできる唯一のこと

 やっと家に着いた。

 ふわあっと大きな欠伸をしながら、シュンは自宅の前で背伸びした。

 ーー疲れた。マジで。

 先の戦いを除けば、ほとんど外出などしなかったシュンである。

 それがロニンにねだられたからとはいえ、自分から外に出るとは。

 口の端に自嘲の笑みを刻みながら、シュンは扉の取っ手を掴む。

 瞬間。
 シュンはぴくりと動きを止めた。

 ーーこの気配。

 まさか。

 シュンは険しい表情を浮かべたまま、沈鬱な声を発した。

「ロニン。先に入ってろ」

「……え?」

 目をぱちくりさせるロニン。

「大事な用を思い出してな。すぐに帰ってくる。先に入ってな」

「う……うん」

 ロニンには否やのあろうはずもなかった。

 むしろ、一刻も早く帰宅しなければ、せっかくの引きこもり生活が無駄になる。

 言われるままに、ロニンはひとり家に入った。

 ーーでも、変だ。

 シュンが《大事な用》だって?
 ほとんど村民と交流がないくせに、いったいなんの用があるというのか。

 さっきまであんなに帰りたがっていたのに。

 それら不審な点はあったものの、ロニンは素直に自室に戻った。

 妙な胸さわぎを、無理やりに抑えつけながら。

    ★

 ーーやはり来たか。

 妙な胸さわぎを無理やりに抑えつけながら、シュンは走っていた。

 途中、驚いたように村人たちが振り返ってくるが、気にしていられるほどの余裕はない。

 ーー急がなければ。
 ーー急がなければ。

 さっき感じた悪寒。
 あれは気のせいなどではない。

 間違いなく、大量のモンスターが村に向かってきている。

 そして、その原因も明らかすぎるほどに明らかだった。

 魔王の娘、ロニン。
 モンスター中でも地位の高い彼女を、魔王側が放っておくはずがないのだ。

 きっとこの一週間、死にもの狂いで捜索していたに違いない。

 こうなることはわかっていた。
 魔王の娘をかくまうということは、これだけの危険が伴うのである。

 しかし、それでも約束したのだ。

 最低でも彼女が《引きこもり》を取得するまでは守ってやると。

 たかだか一ヶ月間。
 彼女には冷たい男だと思われたかもしれない。
 だがシュンにとっては途方もなく長い日数でもあるのだ。

 それでも構わない。
 そもそも良いイメージを持ってもらおうとも思っていない。

 ただ、ロニンという少女のため。
 シュンは村から遠く離れた場所へとひたすらに走った。

 それが、分かちあえるはずもない彼女のためになると信じて。

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