引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

あっ(察し)

「消えろ……か。はっ」

 ディストは鼻で笑うと、剣を抜き、切っ先をシュンに向けた。

「そういうわけにはいかんな。すべてはあのロニン様のためだ」

「……は?」

 シュンは数秒間たっぷり目をぱちくりさせたが、そういえばあの娘は魔王の子だったかと思い直す。

「泣かせるね。あのおてんば娘のために命を張ろうってのかい」

「馬鹿者! ロニン様を悪く言うな!」

 ぎっと眉根を寄せ、ディストはすさまじい剣幕で怒鳴り込む。

「可愛そうなお方なのだ……。ロニン様は俺が守らねばならない! そしてそのあかつきにはッ、こ、婚姻を……!」

「あ、あー。そゆこと」

 なにかを察したかのように頷くシュン。
 ロニンはたしかに相当の美人だ。それに夢中になる猿がいても不思議はあるまい。

「それなのに!」

 ディストは自身の剣を抱きしめ、表情を歪めながら叫び出す。

「よもや人間なぞに誘拐されるとは! しかも相手は男だという! これを許しておけるものか! いいか村人よ、俺とロニン様は深い絆で結ばれているのだ! いまさらそれが引き裂けると思うなよ!」

「あー、うん。そうだね。その通りだ」

 なんだか馬鹿馬鹿しくなって、大げさに頷いてやるシュン。
 部下であるはずのゴブリンたちも、上司の怪奇っぷりにはいささか引いているように思えた。

 ディストはまたも剣の切っ先をシュンに向け、たったひとり、叫んだ。

「ゆえに! 村人よ、ロニン様を返してもらおうか!」

「ん、んー……」

 シュンはぼさぼさと後頭部を掻いた。
 正直なところ、ディストとわざわざ戦う理由はない。

 奴がそんなにロニンを欲しているなら、返せばいいだけの話だ。別にシュンは彼女に固執しているわけではない。

 だが。
 この問題の厄介なところは、ロニンがみずからシュンとの暮らしを望んだということ。

 なにか理由があるに違いあるまい。
 だからシュンも同じようにディストと敵対することにした。

「いや、別に返してほしいってんなら喜んで返すよ? けどな、あいつ帰りたくねえって言ってんだ。それを無理やり帰らせるわけにゃいかねえだろ」

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