引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

ほんと、くっそめんどくせぇ

 俺の発言に、ディストは一瞬だけ身を強ばらせた。

「帰りたくない……だと? 嘘を言っては困るな」

「嘘じゃねーっての。疑うんならいつか勇者に聞いてみな」

「…………」

 正直、このくだりは言う必要がなかったかもしれない。
 ディストはまたも身を震わせると、右拳を握りしめ、力強く囁いた。

「ああ……ロニン様。こんな虚言男なぞに監禁され、さぞお辛いでしょうに……」

「いや、だから嘘じゃねぇってさっきかr」

「ですがもう心配ありませぬ! ロニン様! この正義の剣で、この忌まわしい男を切り刻んでやります!」

 そしてきっと俺を睨みつけるや、剣を振り払い、戦闘の体勢を取った。

「ふー……」

 シュンは深く息を吐いた。
 駄目だ。話が通じない。くっそめんどくせぇ。

 率直なところ、シュンにロニンを守る動機はなかった。このまま返してやってもいいくらいである。

 けれど。
 シュンの脳裏には、なにかが引っかかっていた。

 ディストほど忠実な臣下がいるならば、のこのこ魔王城に帰っても良かったではないか。

 そのほうが安全のはずだ。ロニンにとっては、俺なんかよりも、ディストのほうが信頼のおける存在のはずなのだから。

 俺と彼女は出会ってまだ一週間しか経っていない。

 それなのに、いったいなぜ俺との同居を望んだのか。
 わからない。いまは考えても詮無いことだ。

 ならば、彼女を一ヶ月間守り抜いて、立派な《引きこもり》に育て上げてやる。
 その約束をやり遂げるまでだ。

「ひゅうう……」

 シュンは小さく息を吸うと、全身の魔力を解放した。
 体内に熱いものがこみ上げてくる。
 我ながら底知れない力の胎動を感じる。

 世界が揺れ始めた。
 シュンから発せられる魔力に、大地が、草が、木々が、激しく振動する。

「おおおおっ!」

 我知らずシュンは叫んでいた。
 そうでもしなければ、溢れ出る魔力に身体が押しつぶしされそうだった。

 瞬間。

 シュンの全身から、真紅の魔力が霊気となって体現した。

 それは電流のようにシュンの周囲を包み込み、ディストやゴブリンたちを圧倒させた。

「こ……これは……。馬鹿な! この力が本当に村人だと!?」

 さっきまでの威勢はどこへやら、数歩後退するディスト。
 ゴブリンたちは恐慌をきたし、一斉にシュンから離れだす。

「あーやべえやべえ」

 自分の身体を見渡しながら、シュンはとぼけた声を発した。

「すまん。魔法なんて使うの初めてだからよ。……これからどうすりゃ魔法使えるのかな?」

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