引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
魔王への階段
魔王城の内部に、ほとんど敵兵は残っていなかった。
おそらくディストが頑張ってくれているのだろう。不気味なまでに静まりかえった魔王城内部を、シュンとロニンは無言で歩き続けた。
その装飾すべてが、シュンにとっては新鮮だった。
回廊に敷き詰められた赤い絨毯。
天井にいくつも吊されている豪華絢爛なシャンデリア。
壁面には、等間隔で金箔のキャンドルが設けられている。どういう原理なのか、炎は緑色であった。
長いこと自分の家しか知らなかったシュンにとって、目に映るものすべてが刺激的だった。
ーーたまにはこうやって外に出るのも悪くねえかもな。
すべての騒動が収まったら、すこしくらい外出するのもいいかもしれない。
まあ、自室のベッドが一番好きだという事実は変わらないが。
何分ほど歩いただろう。シュンたちは螺旋状の階段の手前で立ち止まった。
「この先に……魔王がいるのか?」
「……うん」
真紅の絨毯も、金色のシャンデリアも、装飾はいっさい変わっていない。
だが、この果てしなき階層の上から、いわく言い難い霊気のようなものを感じる。
空気そのものがどこか黒ずんでいるように見えるのも、きっと気のせいではあるまい。
ーー魔王、か。
さしものシュンも身震いせずにはいられない。
なにせ長きに渡って人類を苦しめてきたモンスターの頂点と対面するのだ。
奴に対する知識もほとんどない。魔王に挑んでいった者はすべてごとごとく殺されていったから。
だからこそ、勇者アルスが最後の希望としてもてはやされていた。
ーーまさか、その勇者さんよりも早く魔王城に到着することになるとはな。
そこまで考えて、シュンは鳥肌が立つのを感じた。
寒気、か。俺らしくもねえ。
シュンはがつんと気合いを入れ、両拳を打ち付けた。
「さあ、ロニン。行こうぜ。おりゃ早く帰って寝てえよ」
「う、うん。それはいいんだけど、あの……」
ロニンがなにかを言いたそうにモジモジしている。どこか恥ずかしがっているようだ。
「ん? どうしたよ」
「ごめん。緊張しちゃって。また手を繋いでほしい、みたいな……」
「なんだ、そんなことかよ」
ほれ、と言ってシュンは手を差し出す。
おそるおそる伸ばされたロニンの小さな手を、シュンは包み込んだ。
ーー温かい。
人間だからとか、モンスターだからとか、関係ない。
ロニンはいまを懸命に生きている。俺はその手助けをしてやるまでだ。
「さあ、行くぞ」
「うん!」
かくして、村人と魔王の娘は、手を取り合い、一段ずつ階段を昇っていった。
おそらくディストが頑張ってくれているのだろう。不気味なまでに静まりかえった魔王城内部を、シュンとロニンは無言で歩き続けた。
その装飾すべてが、シュンにとっては新鮮だった。
回廊に敷き詰められた赤い絨毯。
天井にいくつも吊されている豪華絢爛なシャンデリア。
壁面には、等間隔で金箔のキャンドルが設けられている。どういう原理なのか、炎は緑色であった。
長いこと自分の家しか知らなかったシュンにとって、目に映るものすべてが刺激的だった。
ーーたまにはこうやって外に出るのも悪くねえかもな。
すべての騒動が収まったら、すこしくらい外出するのもいいかもしれない。
まあ、自室のベッドが一番好きだという事実は変わらないが。
何分ほど歩いただろう。シュンたちは螺旋状の階段の手前で立ち止まった。
「この先に……魔王がいるのか?」
「……うん」
真紅の絨毯も、金色のシャンデリアも、装飾はいっさい変わっていない。
だが、この果てしなき階層の上から、いわく言い難い霊気のようなものを感じる。
空気そのものがどこか黒ずんでいるように見えるのも、きっと気のせいではあるまい。
ーー魔王、か。
さしものシュンも身震いせずにはいられない。
なにせ長きに渡って人類を苦しめてきたモンスターの頂点と対面するのだ。
奴に対する知識もほとんどない。魔王に挑んでいった者はすべてごとごとく殺されていったから。
だからこそ、勇者アルスが最後の希望としてもてはやされていた。
ーーまさか、その勇者さんよりも早く魔王城に到着することになるとはな。
そこまで考えて、シュンは鳥肌が立つのを感じた。
寒気、か。俺らしくもねえ。
シュンはがつんと気合いを入れ、両拳を打ち付けた。
「さあ、ロニン。行こうぜ。おりゃ早く帰って寝てえよ」
「う、うん。それはいいんだけど、あの……」
ロニンがなにかを言いたそうにモジモジしている。どこか恥ずかしがっているようだ。
「ん? どうしたよ」
「ごめん。緊張しちゃって。また手を繋いでほしい、みたいな……」
「なんだ、そんなことかよ」
ほれ、と言ってシュンは手を差し出す。
おそるおそる伸ばされたロニンの小さな手を、シュンは包み込んだ。
ーー温かい。
人間だからとか、モンスターだからとか、関係ない。
ロニンはいまを懸命に生きている。俺はその手助けをしてやるまでだ。
「さあ、行くぞ」
「うん!」
かくして、村人と魔王の娘は、手を取り合い、一段ずつ階段を昇っていった。
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