引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

自分の国をつくる

 案内されるままに広場に出た。

 広大な草原。
 遠くには校舎やその他の施設が薄く望むことができる。

 アルスが言うには、この草原までもが学園の敷地内らしい。さすがはエリートだけが集う学園だ。この設備だけでも相当の人員と金を使用したのだろうとシュンは思った。

 新入生は全員で二百人近くいるらしい。
 それを四つのグループに分け、ひとりひとり順番にデッドスライムと闘っていく形式のようだ。

 ここでのグループ分けは単なる入学式の席順であり、特に意図はない。よって、シュンとロニンはここでも同じグループに属することになったのだが。

「…………」
 ロニンはさっきからまったく喋ろうとしない。入学式の会場からこの草原に至るまで、終始うつむいていた。

 シュンにも彼女の気持ちはよくわかった。
 ロニンにしてみれば、自分の仲間を手にかけるようなもの。
 人間が殺人を忌避するように、モンスターも同種族を殺害することに抵抗があって当然だ。

 それは生物として当たり前の本能だから。

「……これが、人間の考え方、なんだね」

 ロニンは小さく言った。

「人間はモンスターをとことん嫌ってる。これじゃ……どうやったって、戦いは避けられないじゃない……」

「…………」

 シュンはなにも言えなかった。
 人間とモンスター。
 この種族間で争いが絶えないならば、新たな国をつくるしかない。すなわち、人間とモンスターが共存する、夢のような国を。

 ーーでも、そんなことできるわけねえよな……
 シュンはぼさぼさと後頭部を掻いた。一昨日からどうも、こんな面倒くさい考えが抜けない。

 暗い考えに浸っていると、勇者アルスが声を張った。

「ではこれより試験を執り行う! 各グループの新入生は構え!」

 その声によって、指名されたグループごとの生徒たちが一歩前に出る。彼らには前もって、銅で作成された剣が貸し出されている。

 四人の生徒たちが、緊張した面持ちで、なにもない空間へと剣を構える。
 すると。
 それぞれ生徒たちの眼前の地面に、幾何学模様が浮かび上がった。
 それは空に向けて筒状の光を発しーー生徒たちが瞬きした後には、そこにモンスターが現れていた。

 デッドスライム。
 その名の通り死にかけのスライムだ。

 両目のうち片目には大きな穴が穿たれ、体色も色ずんだ灰色。モンスターのなかでは、ゴブリンに匹敵するくらい弱いとされている。

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