引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
魔王失格
カキン!
すさまじい金属音がセレスティアの耳をつんざいた。
顔を上げると、ひとりの騎士がディストの剣を弾いたのが見て取れた。セレスティアが殺される寸前に、剣を差し込んだのである。
「ぐ……」
ディストは顔をしかめ、大きく後退した。防がれたのがよほど予想外だったようだ。
騎士は痺れた腕を片腕で支えながら、ディストに向けて強く言い放った。
「姫様を悪く言うな! ご自身で孤児院をお作りになるほど優しいお方なのだぞ!」
「こ、孤児院……だと」
ディストが小さく呟き返す。
「そうだ! 貴様らモンスターのせいで生き場所をなくした子どもたちが大勢いるんだよ!」
騎士のその発言が契機になった。
王都の兵士たちは、セレスティアを守るべく、ディストの前に立ちふさがった。全員が剣を構え、油断なく人型モンスターを睨んでいる。
「みんな……」
部下たちの忠誠心に、思わず目頭が熱くなるセレスティア。
だがまだ安心はできない。戦いは終わっていない。
それなら。
セレスティアは両腕を天に突き出し、魔法を発動した。
「フォースレイン!」
途端、青い筒状の輝きが、騎士のひとりひとりを取り囲んでいく。
「おおおおおお!」
「この力は……!」
歓声をあげる部下たちに、セレスティアは凛然と告げた。
「あなたたちの物理攻撃力・物理防御力はこれで大幅に高まった。援護は私に任せて、あなたたちは存分に戦いなさい!」
「「はい!」」
人間とモンスターとの戦争は、こうしてさらに激しさを増していくのだった。
ーー死んでいる。みんな。
魔王城から戦場を見下ろしながら、ロニンは両拳を握りしめた。
あのディストがだいぶ苦戦しているようだ。敵兵がもともと多いうえ、ひとりひとりの戦闘力が大幅に高められている。
見る限り、セレスティア皇女の補助魔法のようだ。さしものディストも、これは厳しい戦いと言わざるをえない。
ロニンが全力で広範囲の魔法を放てば、戦地の人間なぞ一瞬で灰にできる。けれどそれではディストたちも巻き添えにしてしまう。
それに……たとえ相手が人間だとしても、私はやっぱり殺したくない。敵だって同じ生き物なのだから。
私は魔王失格なのだろうか。
魔王とは残忍で冷酷でなければならないのだろうか。
「……あ」
ロニンは息を呑んだ。
ステータス強化された騎士たちに対し、さしものディストも対応しきれなくなったようだ。徐々に攻撃を受け始めてしまっている。
それだけではない。
好機と見た人間たちが、続々と魔王城に向かいつつある。そのなかには、勇者がいると思わしき馬車もある。
ーーディスト。
もう嫌だ。誰も死んでほしくない。誰もいなくならないでほしい。
ロニンは最近習得した魔法、《ワープ》を用いた。その名の通り、魔術によって、指定した場所に転移することができる。引きこもりにふさましいスキルといえよう。
そして魔王ロニンは、まさに唐突に、勇者たちの前に姿を現したのだった。
すさまじい金属音がセレスティアの耳をつんざいた。
顔を上げると、ひとりの騎士がディストの剣を弾いたのが見て取れた。セレスティアが殺される寸前に、剣を差し込んだのである。
「ぐ……」
ディストは顔をしかめ、大きく後退した。防がれたのがよほど予想外だったようだ。
騎士は痺れた腕を片腕で支えながら、ディストに向けて強く言い放った。
「姫様を悪く言うな! ご自身で孤児院をお作りになるほど優しいお方なのだぞ!」
「こ、孤児院……だと」
ディストが小さく呟き返す。
「そうだ! 貴様らモンスターのせいで生き場所をなくした子どもたちが大勢いるんだよ!」
騎士のその発言が契機になった。
王都の兵士たちは、セレスティアを守るべく、ディストの前に立ちふさがった。全員が剣を構え、油断なく人型モンスターを睨んでいる。
「みんな……」
部下たちの忠誠心に、思わず目頭が熱くなるセレスティア。
だがまだ安心はできない。戦いは終わっていない。
それなら。
セレスティアは両腕を天に突き出し、魔法を発動した。
「フォースレイン!」
途端、青い筒状の輝きが、騎士のひとりひとりを取り囲んでいく。
「おおおおおお!」
「この力は……!」
歓声をあげる部下たちに、セレスティアは凛然と告げた。
「あなたたちの物理攻撃力・物理防御力はこれで大幅に高まった。援護は私に任せて、あなたたちは存分に戦いなさい!」
「「はい!」」
人間とモンスターとの戦争は、こうしてさらに激しさを増していくのだった。
ーー死んでいる。みんな。
魔王城から戦場を見下ろしながら、ロニンは両拳を握りしめた。
あのディストがだいぶ苦戦しているようだ。敵兵がもともと多いうえ、ひとりひとりの戦闘力が大幅に高められている。
見る限り、セレスティア皇女の補助魔法のようだ。さしものディストも、これは厳しい戦いと言わざるをえない。
ロニンが全力で広範囲の魔法を放てば、戦地の人間なぞ一瞬で灰にできる。けれどそれではディストたちも巻き添えにしてしまう。
それに……たとえ相手が人間だとしても、私はやっぱり殺したくない。敵だって同じ生き物なのだから。
私は魔王失格なのだろうか。
魔王とは残忍で冷酷でなければならないのだろうか。
「……あ」
ロニンは息を呑んだ。
ステータス強化された騎士たちに対し、さしものディストも対応しきれなくなったようだ。徐々に攻撃を受け始めてしまっている。
それだけではない。
好機と見た人間たちが、続々と魔王城に向かいつつある。そのなかには、勇者がいると思わしき馬車もある。
ーーディスト。
もう嫌だ。誰も死んでほしくない。誰もいなくならないでほしい。
ロニンは最近習得した魔法、《ワープ》を用いた。その名の通り、魔術によって、指定した場所に転移することができる。引きこもりにふさましいスキルといえよう。
そして魔王ロニンは、まさに唐突に、勇者たちの前に姿を現したのだった。
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