引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

政治のできる女

 ーーいったいどういうこと?
 セレスティアは戦争の真っ只中であることも忘れ、ぽかんとシュンとロニンを凝視した。

 彼女だけではない。人間もモンスターも、そしてディストでさえも、あの珍妙な男女二人に驚きを隠せないでいる。

 新しい国をつくる。シュンはたしかにそう宣言した。人間とモンスターが共存する、既知のない世界を創造するのだと。
 ーーなんて無責任な。
 セレスティアは両拳を強く握った。
 一国を作り上げ、そして維持していくのがどれほど大変か、あの新入生はわかっているのか。老齢な父王でさえ、人類の行く末には常々頭を悩ませているというのに。

 シュンはロニンを片腕で抱きしめつつ、ふいにセレスティアに目を止めた。

「おう、そこにいたか」
 言いながら歩み寄ってくる。
 騎士たちは動こうとしない。さっき勇者たちを吹き飛ばした光景を見て、すっかり縮こまっている。

「……なによ。やっと助けにきたと思ったら、わけのわかんないことを言って」
「ばーか。人間は守るって言ったろ。俺のおかげで一応は戦闘が収まったじゃねえか」
「…………」

 それはたしかにそうだが、相変わらず頭にくる男だ。

「そりゃそうと、セレスティアさんよ。おまえも俺たちの国に来ねえか?」
「……は?」
「実際、政治に詳しい奴がいたほうが俺としちゃ助けるっていうか。ロニンじゃそこんとこ不安だしな」

 ロニンが唇を尖らせ、こつんとシュンの腹を叩いた。そんな魔王に、シュンは苦笑いを浮かべていた。

 ーーなんという光景だ。
 人間とモンスターが仲良くしているなんて。しかも片や魔王だというのに。

 こうして見ると、ロニンはどこにでもいる、小さな人間の女の子と変わりなかった。尻尾さえ生えていなければ、モンスターと気づけなかっただろう。そもそも、勇者に告げ口されて初めて、彼女がモンスターだと知ったのだ。

 セレスティアはふと、周囲のモンスターを見回した。ゾンビや幽霊、獣、機械仕掛け……見た目こそ醜いものの、彼らとて生きている。立派な命がある。
 それに、いまは黙りこくっているあたり、問答無用で人間に襲いかかっているわけでもないようだ。

 ーー人間の死は許せないが、人間の死はどうでもいいというのか?
 ーーじゃあ聞くが、皇女サマはモンスター側の心情を考えたことあんのかよ?

 またしても、二つの台詞がフラッシュバックする。

 私は平和を目指していた。
 なのに人類の邪魔だからと、見切り発車でモンスターに戦いを仕掛けた。
 それで本当に世界は平和になったのか? モンスターだけじゃない、人間のなかには盗賊や犯罪者だっている。彼らも問答無用で殺せば平和が訪れるのか?
 違う。私が目指しているのはそんな世界じゃないーー

 興味はあった。シュンなる男が、いったいどこまでできるのか。どうすれば、争いのない世界が作れるのか。この世から戦争さえなくなれば、きっとかわいそうな子どもたちも少なくなるから。 
 セレスティアは小さく目を閉じ、そしてーー言い放った。

「いいでしょう。《勉強》という名目でついていってあげてもいい。その代わり、学ぶことがないと判断したらすぐに徹底する。ーーいいわね?」

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コメント

  • あ

    1
  • ノベルバユーザー30469

    ちょっと無理やり感があるかな……

    2
  • ノベルバユーザー234707

    絶対そうだと思います(笑)

    2
  • ノベルバユーザー211622

    人間の死は許せないのに、人間?(モンスターでは?)の死はどうでもいいのか、ってところはミスでしょうか?
    内容、とても面白いです。これからも頑張ってください!

    6
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