引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
いらない男
「さて、いつまでもこんな所にいるのもなんだ。早速、新しい国に向かおうぜ」
馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩を脇に押しのけ、シュンは新国民たちに問いかけた。騎士もモンスターも、相当疲れているだろうから。
「で、でもお兄ちゃん、その国ってどこにあるの? いまからみんなで行くのは大変じゃない?」
「ばーか。俺とおまえがいるだろが」
「え……?」
「《ワープ》を使うんだっての。おまえ、もう出来るようになってんだろ?」
「で、できるけど……」
自信なさげに呟きながら、ロニンは眉を八の字にした。
スキル《ワープ》。
多くのMPを代償に、指定した場所に一瞬で転移できる。残念ながらどこでも行き放題ではなく、一度行った場所にしか転移できないが。
望み努力すれば、この《ワープ》は他人ごと転移することが可能だ。
だが、さすがにここまでの大人数を運ぶことなどできるのだろうか。それを問うてみると、
「できるさ、たぶんな」
などと無責任なことを言う。
「まあできなかったらそんときだ。別の方法を考えようぜ」
「むう……」
ロニンは唇を尖らせた。釈然としないが、それしか方法がないのも事実。新天地まで徒歩で向かうのも絶対に嫌である。
ロニンが頷くと、シュンは片手をあげ、魔法を使用としたーー
のだが。
「待て……ッ!」
辺り一帯に、鋭い声が響きわたった。
シュンが目を向けると、やっと身体を動かせるようになったのか、剣を杖代わりにしている勇者アルスの姿があった。
「なんだでけェ声だして。おまえも来いよ。歓迎するぜ?」
「愚か者が……! 誰がそんなものに行くか!」
アルスはそこで騎士たちを見渡し、悲痛に叫んだ。
「貴様らどうかしてしまったのか! 生まれ故郷を擲ってまで、なぜそんな得体の知れない国に行こうとする!」
「アルス!」
叫び返したのはセレスティアだった。
「私たちだってまだ完全に信用できたわけじゃない! もしなにかあったら、すぐに帰ーー」
「皇女様までいったいどうしてしまったのですか! モンスターとの争いはどうなってしまったんです!」
「アルス、私は……!」
「俺はこんなもの認めない! 認めてなるものか!」
セレスティアの口上など聞く耳を持たず、アルスは森林のなかへ取って返していった。彼を追う人間はひとりもいなかった。
「お、お兄ちゃん……」
ロニンが不安そうにシュンを見上げた。
「行かせとけ。あんな奴、やっぱいらねーや」
「う、うん……」
かくして、人間とモンスターたちは一瞬にして新天地へと転移していくのだった。
【第二章 終】
馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩を脇に押しのけ、シュンは新国民たちに問いかけた。騎士もモンスターも、相当疲れているだろうから。
「で、でもお兄ちゃん、その国ってどこにあるの? いまからみんなで行くのは大変じゃない?」
「ばーか。俺とおまえがいるだろが」
「え……?」
「《ワープ》を使うんだっての。おまえ、もう出来るようになってんだろ?」
「で、できるけど……」
自信なさげに呟きながら、ロニンは眉を八の字にした。
スキル《ワープ》。
多くのMPを代償に、指定した場所に一瞬で転移できる。残念ながらどこでも行き放題ではなく、一度行った場所にしか転移できないが。
望み努力すれば、この《ワープ》は他人ごと転移することが可能だ。
だが、さすがにここまでの大人数を運ぶことなどできるのだろうか。それを問うてみると、
「できるさ、たぶんな」
などと無責任なことを言う。
「まあできなかったらそんときだ。別の方法を考えようぜ」
「むう……」
ロニンは唇を尖らせた。釈然としないが、それしか方法がないのも事実。新天地まで徒歩で向かうのも絶対に嫌である。
ロニンが頷くと、シュンは片手をあげ、魔法を使用としたーー
のだが。
「待て……ッ!」
辺り一帯に、鋭い声が響きわたった。
シュンが目を向けると、やっと身体を動かせるようになったのか、剣を杖代わりにしている勇者アルスの姿があった。
「なんだでけェ声だして。おまえも来いよ。歓迎するぜ?」
「愚か者が……! 誰がそんなものに行くか!」
アルスはそこで騎士たちを見渡し、悲痛に叫んだ。
「貴様らどうかしてしまったのか! 生まれ故郷を擲ってまで、なぜそんな得体の知れない国に行こうとする!」
「アルス!」
叫び返したのはセレスティアだった。
「私たちだってまだ完全に信用できたわけじゃない! もしなにかあったら、すぐに帰ーー」
「皇女様までいったいどうしてしまったのですか! モンスターとの争いはどうなってしまったんです!」
「アルス、私は……!」
「俺はこんなもの認めない! 認めてなるものか!」
セレスティアの口上など聞く耳を持たず、アルスは森林のなかへ取って返していった。彼を追う人間はひとりもいなかった。
「お、お兄ちゃん……」
ロニンが不安そうにシュンを見上げた。
「行かせとけ。あんな奴、やっぱいらねーや」
「う、うん……」
かくして、人間とモンスターたちは一瞬にして新天地へと転移していくのだった。
【第二章 終】
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