引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

魔王ロニン

 謁見の間は極めてシンプルな作りだった。
 入口から玉座まで、一直線に赤い絨毯が敷かれている。壁面には豪勢な絵画がいくつも掲げられているが、シュンにはそれらの価値がわからない。

 ぱっと見、この部屋には国王以外、誰もいないように思える。だがその実、シュンは敵意たっぷりの視線をひしひしと感じていた。
 シュンの見立てでは、二階のバルコニーにも、さまざまな武器を構えた騎士が何人もいる。彼らはみな、油断なくシュンたちを狙い澄ましている。

 だが、決してこちらから手を出してはならない。その瞬間にシュンたちの負けとなる。
 そう思いながら歩いていると、ふいに、エルノス国王が声を発した。

「止まれ。……そう、そこでよい」
 命じられるままに、シュンたちは立ち止まる。瞬間、セレスティアがさっとひざまずいたので、シュンとロニンも慌てて同じ姿勢を取る。

「そなたが……シュン殿か」
 ふううう……と息を吐きながらエルノスが言う。
「ええ……いかにも」
「聞けば、セレスティアよりも年下ではあるまいか。その歳で国を立ち上げるとはの」

 おまえに建国は早すぎるーー遠回しに皮肉を言われている気がした。隣のセレスティアがぴくりと肩を震わせる。
 ーー感情を表に出すな。
 わずかな怒りを抑え込みながら、シュンは平坦な声を発した。

「……未熟者なればこそ、国民たちと結託し、平和な世界を維持できてございます」
「……ふっ。なるほどの」
 国王は鼻で笑うと、玉座に頬杖をついた。
「余としても申し訳なく思う。一国の王に対してこの場で会談をすること、心から詫びを入れよう。会談室が使用中でな、使える部屋がないのだ」
「いえ、滅相もございません」

 ーー馬鹿馬鹿しい。
 本当に俺を一国の王と思っているのならば、なぜおまえはタメ口なんだ。
 と言いたいところであるが、いまは必死に我慢する。

 見れば、国王は気迫の溢れる出で立ちをしていた。白髪の上に、光り輝く王冠が乗っている。顔にはいくつもの皺が力強く刻まれており、顎髭もたくましく伸びている。まさに王者たる顔つきだが。
 ーー疲れてんな。
 昔は厳かであったろう両眼は、下に垂れてしまっている。口元も若干下寄りだ。長年の政治で、さぞ心労をため込んできたようなーーそんな顔つきをしている。

 エルノス国王はロニンに視線を移した。 
「あとの二人はセレスティアと……そこの者は誰かね?」
 ロニンは迷ってしまったようで、ちらとシュンに視線を寄越した。
 この場は素直に言ったほうがよかろう。シュンは黙って頷いた。
 ロニンは改めて国王に向き直ると、こちらも王たる威厳を放ちながら言い放った。

「ロニンと申します。モンスターたちの王ーー人は私を、魔王と呼びます」

「ま、魔王……!?」
 さすがに驚いたのだろう、エルノス国王がぎょっと目を見開く。潜んでいる騎士たちの警戒心もぐっと強まる。
 そういえば、この場にいる者はセレスティア以外みんな王だなーー
 そう苦笑しながら、シュンは国王の反応を楽しんだ。

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