引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
気丈なお嬢様のデレ期
もうかなり歩いた。
ざっと換算すれば四時間ほど。
なのに、景色に変化が訪れる様子はない。どこをどう見渡しても、うんざりするほどに木が広がっているだけだ。
「ふぅ……」
シュンはため息をつきながら、ひたすらに重い両足を動かし続けた。肉体的な疲労はそこまででもない。だが精神的にはかなりしんどい。そもそも、本来は寝ているはずの時間なのだ。そこを襲撃され、人類未踏の地をひたすら歩いているのである。
疲れる。
それでも、シュンとしては歩みを止めるわけにはいかなかった。王都にてひとり残されたロニンが、どんな仕打ちを受けているかーーそれを考えると、自然と歩行速度が速くなる。彼女も魔王だし、そう簡単に死んだりはしないだろうが……
その焦りが表れてしまっていたのだろう。シュンはふと、さっきまで隣を歩いていたはずのセレスティアがいないことに気づいた。
慌てて背後を振り返ると、息を切らしながら懸命に歩いている皇女の姿が。
「わり、ちょいと飛ばしすぎたわ」
言いながら、セレスティアの隣に並ぶ。
「シュン……くん……ごめんね……」
「謝ることぁねえさ。おまえは頑張ってると思うぜ」
素直に賛辞を投げかけてやる。
シュンとセレスティアでは、そもそものステータスが違うのだ。シュンにとっては余裕の距離でも、セレスティアにとってはそうではなかろう。しかも彼女は、ついさっき肉親に裏切られたばかりなのだ。
気丈なお嬢様は、シュンの言葉に弱々しく頷くと、その場に崩れ落ちてしまった。
「おうっと」
慌ててシュンがセレスティアの身体を支える。
そこに至って初めて、シュンはあることに気づいた。
「こりゃあ……馬鹿野郎、無茶しやがって……」
セレスティアの額がかなり熱くなっている。その体温から察するに、相当の高熱だろうと思われる。むしろ、よくここまで歩いてこられたものだ。
「いいの。シュンくん、私のことは気にしないで……」
「ふざけんなよ。おまえひとり、置いていけるわきゃねえだろが」
さっきのように、セレスティアを背負って歩くという選択肢もある。だがこの高熱だ。休ませたほうが無難だろう。
シュンは葉っぱをたぐり寄せると、簡易的なベッドを作成した。そこにセレスティアを寝かせると、自身も木にもたれかかり、そのまま腰を落とす。
「ここいらで休憩しよう。なにか食えるもんでもありゃあいいんだがな」
四時間の歩行の最中で、食べられそうな野草はおろか、小川さえ見当たらなかった。せめて水分くらいは確保したいところだが、なにしろ人類未到の地、どこになにがあるのかわからない。
食料確保のために、いったん離れてみるか……
しかし、さっきみたいに悪魔が唐突に現れたらセレスティアが危ない。動けない。
「シュ、シュンくん、ごめんね……私、迷惑ばっかりかけてるね……」
息も絶え絶えに、セレスティアがシュンに手を伸ばす。
シュンはその小さな手を握り締めると、優しく言ってみる。
「大丈夫だ。おまえは気にしねェで、身体を休めることに専念しろ」
「私、いまならわかるの……。あなたこそが王に相応しいって……ううん、それだけじゃない……」
「なんだ?」
「私、あなたのこと、す、き……になっちゃった……」
「はっ……?」
シュンが目を見開く間に、セレスティアはすやすやと寝息を立て始めた。疲れ果てて寝てしまったようだ。
ーーなんなんだ、いまのは……
意識が混濁していたのか、とんでもないことを言われた気がする。いつもの彼女であれば、ひっくり返っても言わなそうなことを。
ざっと換算すれば四時間ほど。
なのに、景色に変化が訪れる様子はない。どこをどう見渡しても、うんざりするほどに木が広がっているだけだ。
「ふぅ……」
シュンはため息をつきながら、ひたすらに重い両足を動かし続けた。肉体的な疲労はそこまででもない。だが精神的にはかなりしんどい。そもそも、本来は寝ているはずの時間なのだ。そこを襲撃され、人類未踏の地をひたすら歩いているのである。
疲れる。
それでも、シュンとしては歩みを止めるわけにはいかなかった。王都にてひとり残されたロニンが、どんな仕打ちを受けているかーーそれを考えると、自然と歩行速度が速くなる。彼女も魔王だし、そう簡単に死んだりはしないだろうが……
その焦りが表れてしまっていたのだろう。シュンはふと、さっきまで隣を歩いていたはずのセレスティアがいないことに気づいた。
慌てて背後を振り返ると、息を切らしながら懸命に歩いている皇女の姿が。
「わり、ちょいと飛ばしすぎたわ」
言いながら、セレスティアの隣に並ぶ。
「シュン……くん……ごめんね……」
「謝ることぁねえさ。おまえは頑張ってると思うぜ」
素直に賛辞を投げかけてやる。
シュンとセレスティアでは、そもそものステータスが違うのだ。シュンにとっては余裕の距離でも、セレスティアにとってはそうではなかろう。しかも彼女は、ついさっき肉親に裏切られたばかりなのだ。
気丈なお嬢様は、シュンの言葉に弱々しく頷くと、その場に崩れ落ちてしまった。
「おうっと」
慌ててシュンがセレスティアの身体を支える。
そこに至って初めて、シュンはあることに気づいた。
「こりゃあ……馬鹿野郎、無茶しやがって……」
セレスティアの額がかなり熱くなっている。その体温から察するに、相当の高熱だろうと思われる。むしろ、よくここまで歩いてこられたものだ。
「いいの。シュンくん、私のことは気にしないで……」
「ふざけんなよ。おまえひとり、置いていけるわきゃねえだろが」
さっきのように、セレスティアを背負って歩くという選択肢もある。だがこの高熱だ。休ませたほうが無難だろう。
シュンは葉っぱをたぐり寄せると、簡易的なベッドを作成した。そこにセレスティアを寝かせると、自身も木にもたれかかり、そのまま腰を落とす。
「ここいらで休憩しよう。なにか食えるもんでもありゃあいいんだがな」
四時間の歩行の最中で、食べられそうな野草はおろか、小川さえ見当たらなかった。せめて水分くらいは確保したいところだが、なにしろ人類未到の地、どこになにがあるのかわからない。
食料確保のために、いったん離れてみるか……
しかし、さっきみたいに悪魔が唐突に現れたらセレスティアが危ない。動けない。
「シュ、シュンくん、ごめんね……私、迷惑ばっかりかけてるね……」
息も絶え絶えに、セレスティアがシュンに手を伸ばす。
シュンはその小さな手を握り締めると、優しく言ってみる。
「大丈夫だ。おまえは気にしねェで、身体を休めることに専念しろ」
「私、いまならわかるの……。あなたこそが王に相応しいって……ううん、それだけじゃない……」
「なんだ?」
「私、あなたのこと、す、き……になっちゃった……」
「はっ……?」
シュンが目を見開く間に、セレスティアはすやすやと寝息を立て始めた。疲れ果てて寝てしまったようだ。
ーーなんなんだ、いまのは……
意識が混濁していたのか、とんでもないことを言われた気がする。いつもの彼女であれば、ひっくり返っても言わなそうなことを。
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