引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
変わらぬ友情
ーー既視感しかないな。
立て続けに振り下ろされる騎士の剣を避けながら、ディストはふと、そう思った。
三年前にも同じことがあった。
当時は《魔王の娘》だったロニンの地位を確立すべく、ディストはモンスターたちと戦うことになった。戦いの目的は陽動に過ぎず、だからディストにはモンスターを殺すことができなかった。結果的にそれは大変な精神的苦痛となった。
同じことがまた、繰り返されている。
敵は王都の凄腕騎士。
シュロン国民の人間にも、彼らの家族・友人が大勢いることだろう。
殺すことはできない。かつては人間嫌いだったディストだが、この二年半で、人間というものをすこしずつ理解し始めている。千年もの間、ずっと争ってきたけれど、それほど悪くない種族だと思っている。だから殺せない。殺したくない。
だが。
「殺せ! 殺せー! 標的はディストだけでよい!」
隊長ゴルムの指示によって、騎士たちは寸分の隙もなくディストに襲いかかってくる。彼らの命を絶つことは容易いが、峰打ちとなるとそうはいかない。心身ともに相当の苦労を強いられるからだ。
シュンほどの者であれば、一瞬で多くの敵を戦闘不能に陥らせることができる。だがディストにはそれほどの高等技術はない。一回一回の攻撃に、かなりの集中力を要するのである。
ーーどうして。
どうして我々はこうも争う必要があるのだ。
シュロン国が誕生したことで、せっかく人間とモンスターが和解できたと思っていたのに。人間も悪くない種族だと思い始めていたのに。なのに……
結局、我々はわかりあえない定めなのか。ならばいっそ、昔のように殺してしまえば……
その葛藤がディストの動きを鈍らせてしまっていたらしい。
「敵将ディスト、捕らえたり!」
騎士の振りかぶった剣先が、鬱陶しいまでに的確に、ディストの眼前にまで迫っていた。
ーーしまった……!
「デ、ディストさん!」
幼い女の声が聞こえた。名は確か、ミュウといったはずだ。こんなときに人間に名を叫ばれるとはなんとも皮肉なことか。
その瞬間だった。
「ーーったくよ、俺の領土で派手にやらかしやがって」
聞き覚えのある男の声が周囲に響き渡った。数センチの距離にまで迫っていた刀身が、ぴたりと止まる。
そして。
さきほどまではなにもなかった空間に、幾何学模様が発生した。
「おお……!」
「まさか……!」
シュロン国民にとっては何度も見た模様。国民たちが目を見開き、歓喜の声をあげる。
続いて、シュイン、という音を響かせながら、そこにシュロン国の国王ーーシュンが姿を現した。
彼を見て、幾ばくかの安堵感が発生したことは否めない。ディストは乾いた笑みを浮かべながら言った。
「まったく……貴様はいちいち来るのが遅いんだよ、村人め」
「うっせーな。俺ゃ忙しいんだ。昔と違ってな」
「……ならばせめて礼を言え。ここまで守ってやったぞ、貴様の国をな」
「おう。サンキューな」
そこで二人は、いつか魔王城でやったのと同じように、ガツンと拳を打ち付け合った。
立て続けに振り下ろされる騎士の剣を避けながら、ディストはふと、そう思った。
三年前にも同じことがあった。
当時は《魔王の娘》だったロニンの地位を確立すべく、ディストはモンスターたちと戦うことになった。戦いの目的は陽動に過ぎず、だからディストにはモンスターを殺すことができなかった。結果的にそれは大変な精神的苦痛となった。
同じことがまた、繰り返されている。
敵は王都の凄腕騎士。
シュロン国民の人間にも、彼らの家族・友人が大勢いることだろう。
殺すことはできない。かつては人間嫌いだったディストだが、この二年半で、人間というものをすこしずつ理解し始めている。千年もの間、ずっと争ってきたけれど、それほど悪くない種族だと思っている。だから殺せない。殺したくない。
だが。
「殺せ! 殺せー! 標的はディストだけでよい!」
隊長ゴルムの指示によって、騎士たちは寸分の隙もなくディストに襲いかかってくる。彼らの命を絶つことは容易いが、峰打ちとなるとそうはいかない。心身ともに相当の苦労を強いられるからだ。
シュンほどの者であれば、一瞬で多くの敵を戦闘不能に陥らせることができる。だがディストにはそれほどの高等技術はない。一回一回の攻撃に、かなりの集中力を要するのである。
ーーどうして。
どうして我々はこうも争う必要があるのだ。
シュロン国が誕生したことで、せっかく人間とモンスターが和解できたと思っていたのに。人間も悪くない種族だと思い始めていたのに。なのに……
結局、我々はわかりあえない定めなのか。ならばいっそ、昔のように殺してしまえば……
その葛藤がディストの動きを鈍らせてしまっていたらしい。
「敵将ディスト、捕らえたり!」
騎士の振りかぶった剣先が、鬱陶しいまでに的確に、ディストの眼前にまで迫っていた。
ーーしまった……!
「デ、ディストさん!」
幼い女の声が聞こえた。名は確か、ミュウといったはずだ。こんなときに人間に名を叫ばれるとはなんとも皮肉なことか。
その瞬間だった。
「ーーったくよ、俺の領土で派手にやらかしやがって」
聞き覚えのある男の声が周囲に響き渡った。数センチの距離にまで迫っていた刀身が、ぴたりと止まる。
そして。
さきほどまではなにもなかった空間に、幾何学模様が発生した。
「おお……!」
「まさか……!」
シュロン国民にとっては何度も見た模様。国民たちが目を見開き、歓喜の声をあげる。
続いて、シュイン、という音を響かせながら、そこにシュロン国の国王ーーシュンが姿を現した。
彼を見て、幾ばくかの安堵感が発生したことは否めない。ディストは乾いた笑みを浮かべながら言った。
「まったく……貴様はいちいち来るのが遅いんだよ、村人め」
「うっせーな。俺ゃ忙しいんだ。昔と違ってな」
「……ならばせめて礼を言え。ここまで守ってやったぞ、貴様の国をな」
「おう。サンキューな」
そこで二人は、いつか魔王城でやったのと同じように、ガツンと拳を打ち付け合った。
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