引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
魔王の無双劇
魔王と皇女の共闘。
それに適う者は誰ひとりとしていなかった。
「はっ!」
気合いの発声とともに、セレスティアは両手を前方に突き出す。
瞬間、隣にいたロニンを深緑のオーラが包み込んだ。
全ステータスを一時的に強化する魔法。セレスティアの最も得意とする補助魔法である。もともと魔王のステータスは桁外れだが、その強さにさらに拍車がかかったというわけだ。
「すごいねセレスティア……これなら負ける気しないよ」
「援護は任せて。あなたは遠慮せずに戦って」
「……うん。わかった」
といっても、騎士たちは《敵》ではない。彼らは徹底的にエルノスを信じきっているだけであり、もともとは善良な人間に過ぎない。さすがに命までは奪うつもりはない。
ただし、このまま無傷で放免してやろうとも思っていない。
エルノスの命令とはいえ、彼らはシュンを取り囲み、アグネ湿地帯に送り込もうとした。殺しまではしないまでも、すこしは痛い目を見てもらおう。
ロニンはそう心に決めると、鞘に手を添えた。
ーーもう私は弱い子どもじゃない。
モンスターを統べる魔王であり、妻であり、そして一児の母でもある。負けていられない。
ロニンは小さく一呼吸すると、右足を前に出し、戦闘の構えを取った。油断なく周囲を見据えながら、奇襲してくる者がいないか探る。
「す、隙がない……」
「魔王の名は伊達じゃないか……」
騎士たちのぼやき声が聞こえる。心なしか動揺しているようだ。
「いくよ。殺しまではしないから安心して」
ロニンが言い放った、その瞬間。
周囲に爆風が舞った。
ロニンが地を蹴ったことによる現象だった。荒野の塵埃が飛び散り、騎士たちが目を覆う。
どこかで悲鳴があがった。
それと同時に数人の騎士が膝をつき、そのまま崩れ落ちる。鎧の防御性を丸ごと無視し、ロニンの振るった剣先が、見事に騎士の足を斬りつけたのだ。
「馬鹿な!」
「魔王はどこにいった!」
いくら歴戦錬磨の騎士たちとはいえ、魔王ロニンのスピードにはついていけない。神速のごとく動きまわるロニンの姿を捉えられぬまま、騎士たちは言いように蹂躙されていく。
まるで一方的な攻撃だった。
騎士たちはロニンに一撃も浴びせることができない。あっという間に敵戦力はひとりになった。
「強すぎる……なんなんだ、貴様は!」
恐慌をきたしたのか、最後に残った騎士が空に向かって奇声を発する。
「だから言ってるじゃん。私は魔王。最初からあなたたちじゃ勝ち目なんてないよ」
言いながら、騎士の背後に回り込み、足を切り払う。いくら頑丈な鎧を身にまとっているとはいえ、魔王の、しかも強化されたステータスには関係ない。
「ま、魔王……恐るべし……」
呟きつつ、騎士ががっくり崩れる。戦う意欲も失せたようで、立ち上がろうとする様子もない。
ーー終わった。
ロニンがほっと一息ついた、その瞬間。
どこかで、紅の光線がひとつ、近くに落下した。それは地面に触れた瞬間に大爆発を起こし、業火を周囲にまき散らす。強風があたりに舞い、ロニンも思わず顔を覆う。
気づけば、その光線はひとつだけではなかった。数えるのもはばかられる無数の光線が、次々と異なる地点へ落下しては大爆発を起こしている。
「なに……これは……」
呆然とした面持ちで呟くセレスティアに、ロニンは確信を持って答えた。
「お兄ちゃんだ……。きっと」
「なんですって……?」
「この力には覚えがあるよ。三年前、お兄ちゃんはすごい力で魔王を倒した。あのときの力とまったく同じ……」
「な、なんだと……」
すると、聞き捨てならぬといった形相で騎士のひとりが訊ねてきた。
  膝を地につけたまま、顔だけをロニンに向けている。
「これはシュロン国の王の仕業だというのか……? シュンなる者はこれだけ常軌を逸しているというのか……?」
「そうだよ。正直いって、私でも適わないくらい」
「ま、魔王が適わないだと……?」
騎士が大きく目を見開いた。
それに適う者は誰ひとりとしていなかった。
「はっ!」
気合いの発声とともに、セレスティアは両手を前方に突き出す。
瞬間、隣にいたロニンを深緑のオーラが包み込んだ。
全ステータスを一時的に強化する魔法。セレスティアの最も得意とする補助魔法である。もともと魔王のステータスは桁外れだが、その強さにさらに拍車がかかったというわけだ。
「すごいねセレスティア……これなら負ける気しないよ」
「援護は任せて。あなたは遠慮せずに戦って」
「……うん。わかった」
といっても、騎士たちは《敵》ではない。彼らは徹底的にエルノスを信じきっているだけであり、もともとは善良な人間に過ぎない。さすがに命までは奪うつもりはない。
ただし、このまま無傷で放免してやろうとも思っていない。
エルノスの命令とはいえ、彼らはシュンを取り囲み、アグネ湿地帯に送り込もうとした。殺しまではしないまでも、すこしは痛い目を見てもらおう。
ロニンはそう心に決めると、鞘に手を添えた。
ーーもう私は弱い子どもじゃない。
モンスターを統べる魔王であり、妻であり、そして一児の母でもある。負けていられない。
ロニンは小さく一呼吸すると、右足を前に出し、戦闘の構えを取った。油断なく周囲を見据えながら、奇襲してくる者がいないか探る。
「す、隙がない……」
「魔王の名は伊達じゃないか……」
騎士たちのぼやき声が聞こえる。心なしか動揺しているようだ。
「いくよ。殺しまではしないから安心して」
ロニンが言い放った、その瞬間。
周囲に爆風が舞った。
ロニンが地を蹴ったことによる現象だった。荒野の塵埃が飛び散り、騎士たちが目を覆う。
どこかで悲鳴があがった。
それと同時に数人の騎士が膝をつき、そのまま崩れ落ちる。鎧の防御性を丸ごと無視し、ロニンの振るった剣先が、見事に騎士の足を斬りつけたのだ。
「馬鹿な!」
「魔王はどこにいった!」
いくら歴戦錬磨の騎士たちとはいえ、魔王ロニンのスピードにはついていけない。神速のごとく動きまわるロニンの姿を捉えられぬまま、騎士たちは言いように蹂躙されていく。
まるで一方的な攻撃だった。
騎士たちはロニンに一撃も浴びせることができない。あっという間に敵戦力はひとりになった。
「強すぎる……なんなんだ、貴様は!」
恐慌をきたしたのか、最後に残った騎士が空に向かって奇声を発する。
「だから言ってるじゃん。私は魔王。最初からあなたたちじゃ勝ち目なんてないよ」
言いながら、騎士の背後に回り込み、足を切り払う。いくら頑丈な鎧を身にまとっているとはいえ、魔王の、しかも強化されたステータスには関係ない。
「ま、魔王……恐るべし……」
呟きつつ、騎士ががっくり崩れる。戦う意欲も失せたようで、立ち上がろうとする様子もない。
ーー終わった。
ロニンがほっと一息ついた、その瞬間。
どこかで、紅の光線がひとつ、近くに落下した。それは地面に触れた瞬間に大爆発を起こし、業火を周囲にまき散らす。強風があたりに舞い、ロニンも思わず顔を覆う。
気づけば、その光線はひとつだけではなかった。数えるのもはばかられる無数の光線が、次々と異なる地点へ落下しては大爆発を起こしている。
「なに……これは……」
呆然とした面持ちで呟くセレスティアに、ロニンは確信を持って答えた。
「お兄ちゃんだ……。きっと」
「なんですって……?」
「この力には覚えがあるよ。三年前、お兄ちゃんはすごい力で魔王を倒した。あのときの力とまったく同じ……」
「な、なんだと……」
すると、聞き捨てならぬといった形相で騎士のひとりが訊ねてきた。
  膝を地につけたまま、顔だけをロニンに向けている。
「これはシュロン国の王の仕業だというのか……? シュンなる者はこれだけ常軌を逸しているというのか……?」
「そうだよ。正直いって、私でも適わないくらい」
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