引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
国王として
弁当はそこそこのボリュームがあったが、シュンはあっという間に平らげた。
それだけに美味だった。
メイドが調理するご飯も悪くはないのだが、セレスティアと比べると見劣りしてしまう。彼女は幼少の頃から趣味で料理をしてきたから、どうしてもその差が現れてしまうのだった。
「今回はありがとな。マジでうまかったよ」
シュンが珍しく素直に礼を述べると、
「そ、そこまで喜んでくれたなら、作ってあげた甲斐があるわ」
セレスティアはそっぽを向いて顔を赤らめる。
しばしの間、静寂が流れた。
子どもたちの黄色い声が響いてくる。城下町の広場にて、たぶんボール遊びにでも興じているのだろうとシュンは思った。時折モンスターの声も聞こえるから、人間とモンスターの子どもが遊んでいるに違いあるまい。
その声を微笑ましそうに聞きながら、セレスティアは柔らかな声で言った。
「人間とモンスターの共存。ほんとにできたね……」
「ああ。色々あったもんだ」
「ねえ。シュン」
「ん」
「私も王女になってから《国王》の職に就いたんだけど……変なスキルがあってね。支配力、っていうやつ」
「ああ……」
支配力。
シュンも国王になって間もない頃、そのスキルを授かった。そのネーミングから、たぶん国民を統治するスキルだと思われる
。
統治。こう言えば聞こえはいいが、要すれば《洗脳》のためのスキルだ。便利ではあるが、同時に危険な力を秘めている。
シュンが思索に耽っていると、セレスティアが話を続けた。
「不思議なのよね。きっとエルノスにもこのスキルがあったはずなのに、私はエルノスに完全に支配されなかった。ううん、私だけじゃなくて、他の国民たちもシュロン国に流れてきて……よくわからないのよ。それってつまり、王都を捨ててシュロン国に住んだってことでしょ?」
「ん? んー」
このことについては、当時のシュンにとってもおおいに疑問だった。エルノスは長く《国王》の座に就いていたのだし、その支配力もかなり強力なはず。にも関わらず、セレスティアはエルノスに反旗を翻す決意をした。
これはいったいどういうことなのか。このスキルは架空のものなのか。
そう思いもしたが、いまのところ、シュロン国の民は反抗する素振りさえ見せない。こと政治に関して、シュンに反対意見を述べる者もまったくいないのである。誰もが《シュン様》と最上の尊敬を向けてくる。これを見れば、支配力なるスキルは確かに発動しているように思える。
以上を踏まえ、シュンはある結論に達した。
「俺も確かなことは言えねえけど……たぶんこのスキルは、国民のために尽くしてこそ発動するスキル……じゃねえかな」
「え……?」
目を開け、何気なく近寄ってくるセレスティア。
……近い近い。
そう思いながらも、シュンは言葉を続けた。 
「おまえだって、エルノスの独裁に気づいてから、忠誠心が薄れていったんだろ? だけど昔はどうだ。エルノスがちゃんと仕事してたときは、おまえは父を尊敬してたろ?」
「あ……そういえば……」
「たぶんそういうことさ。これはつまりカミサマからのお告げってことよ。私欲のために権力を使う奴は、王にはさせません……ってな」
「……カミサマ……」
セレスティアがその言葉を反芻した途端、一瞬だけ部屋の照明が強くなったーー気がした。
「だから俺たちは忘れちゃならねえ。王の座に就いたからにゃ、必ず国民を守るってことをな」
それだけに美味だった。
メイドが調理するご飯も悪くはないのだが、セレスティアと比べると見劣りしてしまう。彼女は幼少の頃から趣味で料理をしてきたから、どうしてもその差が現れてしまうのだった。
「今回はありがとな。マジでうまかったよ」
シュンが珍しく素直に礼を述べると、
「そ、そこまで喜んでくれたなら、作ってあげた甲斐があるわ」
セレスティアはそっぽを向いて顔を赤らめる。
しばしの間、静寂が流れた。
子どもたちの黄色い声が響いてくる。城下町の広場にて、たぶんボール遊びにでも興じているのだろうとシュンは思った。時折モンスターの声も聞こえるから、人間とモンスターの子どもが遊んでいるに違いあるまい。
その声を微笑ましそうに聞きながら、セレスティアは柔らかな声で言った。
「人間とモンスターの共存。ほんとにできたね……」
「ああ。色々あったもんだ」
「ねえ。シュン」
「ん」
「私も王女になってから《国王》の職に就いたんだけど……変なスキルがあってね。支配力、っていうやつ」
「ああ……」
支配力。
シュンも国王になって間もない頃、そのスキルを授かった。そのネーミングから、たぶん国民を統治するスキルだと思われる
。
統治。こう言えば聞こえはいいが、要すれば《洗脳》のためのスキルだ。便利ではあるが、同時に危険な力を秘めている。
シュンが思索に耽っていると、セレスティアが話を続けた。
「不思議なのよね。きっとエルノスにもこのスキルがあったはずなのに、私はエルノスに完全に支配されなかった。ううん、私だけじゃなくて、他の国民たちもシュロン国に流れてきて……よくわからないのよ。それってつまり、王都を捨ててシュロン国に住んだってことでしょ?」
「ん? んー」
このことについては、当時のシュンにとってもおおいに疑問だった。エルノスは長く《国王》の座に就いていたのだし、その支配力もかなり強力なはず。にも関わらず、セレスティアはエルノスに反旗を翻す決意をした。
これはいったいどういうことなのか。このスキルは架空のものなのか。
そう思いもしたが、いまのところ、シュロン国の民は反抗する素振りさえ見せない。こと政治に関して、シュンに反対意見を述べる者もまったくいないのである。誰もが《シュン様》と最上の尊敬を向けてくる。これを見れば、支配力なるスキルは確かに発動しているように思える。
以上を踏まえ、シュンはある結論に達した。
「俺も確かなことは言えねえけど……たぶんこのスキルは、国民のために尽くしてこそ発動するスキル……じゃねえかな」
「え……?」
目を開け、何気なく近寄ってくるセレスティア。
……近い近い。
そう思いながらも、シュンは言葉を続けた。 
「おまえだって、エルノスの独裁に気づいてから、忠誠心が薄れていったんだろ? だけど昔はどうだ。エルノスがちゃんと仕事してたときは、おまえは父を尊敬してたろ?」
「あ……そういえば……」
「たぶんそういうことさ。これはつまりカミサマからのお告げってことよ。私欲のために権力を使う奴は、王にはさせません……ってな」
「……カミサマ……」
セレスティアがその言葉を反芻した途端、一瞬だけ部屋の照明が強くなったーー気がした。
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