引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
ぱーっといこうや
「ふう……」
トルフィンたちが会場に向かうのを見届けてから、シュンはひとり、ため息をついた。
――やっぱりあのガキ、普通じゃねえな。
違和感に気づいたのは生まれて数ヶ月後だ。
トルフィンの女性を見る目。これがいかにも嫌らしい。同じ男として気持ちはわからないでもないが、さすがに一歳未満で女好きになるのは早すぎる。トルフィンがメイド達を眺める目は、明らかに変態のそれだった。幼子であることを装って女性の胸や下半身を触り、問題になったことも多々ある。
それだけではない。
トルフィンは妙に大人びている。子どもらしくはしゃぐことがあまりない。すべてにおいて礼儀正しいのだ。
それらの理由から、妙だとは思っていたのだが。
――実は俺、六歳じゃねえんだ――
これはあまりに予想外の発言だった。よもや前世の記憶でも持っているのかとカマをかけてみたが、あの慌てっぷりを見るに、どうやら正解だったようだ。彼のこういうところはまだ子どもっぽさが残っている。前世では若くして亡くなったのかもしれない。
と。
ふいに、シュンの脇の地面で、幾何学模様が発生した。見覚えのある魔法だった。
数秒後、その幾何学模様から妻ロニンが姿を現した。ここまでワープしてきたようだ。
「あ……シュンさん」
旦那を見かけたロニンが一瞬顔を緩めるが、しかし数秒後、我に返ったように周囲を見渡す。
「ト、トルフィン見なかった? 剣の打ち合いをしてるって聞いて、それで……」
慌てたようすのロニンに、シュンは肩を竦めてみせた。
「心配するな。ケツ叩いて会場に向かわせたよ」
「そう……。ならよかったけど……」
「それよりロニン、例の件はどうだ」
「…………」
ロニンはしばらくシュンの瞳を見つめ、そして首を横に振った。
「駄目、みたい。《悪魔》たちはこっちの交渉には応じないつもりだと思う」
「そうか……」
シュンはもう一回、ため息をついた。
悪魔――
かつてアグネ湿地帯にてシュンと相対した、人間でもモンスターでもない生き物である。見た目はモンスターのそれに近いが、魔王ロニンの支配下にないことから、理解不能の存在とされてきた。
そんな悪魔らに、最近、変化が訪れ始めたのである。
古来より住み着いてきたアグネ湿地帯を離れ、さらに住処を拡大しているのだ。近隣の街や村を襲い、徐々に行動範囲を広げている。
それを受け、セレスティアはシュンに助けを求めてきた。
――奴らが人間を襲う理由がわからない、と。
シュンはすぐに対策に打って出た。人間の言葉は通じなくても、モンスターと悪魔ならコミュニケーションが通じるかもしれないと思ったからだ。
かくして、ディスト率いるモンスターたちが行動に打って出た。シュンの予想通り、意思の疎通自体は成功した……のだが。
「我々は貴様らの指図など受けぬ」
こう言ってまともに取り合わなかったようだ。魔王ロニンの要求すら、悪魔たちは平気で無視したということになる。
――いずれセレスティアと手を組んで、全面的な戦争になるかもな。
そう思いながら、シュンはロニンを見下ろし、ふっと笑ってみせた。
「ま、暗い話はここまでだ。今日は入学式。ぱぁーっといこうぜ」
トルフィンたちが会場に向かうのを見届けてから、シュンはひとり、ため息をついた。
――やっぱりあのガキ、普通じゃねえな。
違和感に気づいたのは生まれて数ヶ月後だ。
トルフィンの女性を見る目。これがいかにも嫌らしい。同じ男として気持ちはわからないでもないが、さすがに一歳未満で女好きになるのは早すぎる。トルフィンがメイド達を眺める目は、明らかに変態のそれだった。幼子であることを装って女性の胸や下半身を触り、問題になったことも多々ある。
それだけではない。
トルフィンは妙に大人びている。子どもらしくはしゃぐことがあまりない。すべてにおいて礼儀正しいのだ。
それらの理由から、妙だとは思っていたのだが。
――実は俺、六歳じゃねえんだ――
これはあまりに予想外の発言だった。よもや前世の記憶でも持っているのかとカマをかけてみたが、あの慌てっぷりを見るに、どうやら正解だったようだ。彼のこういうところはまだ子どもっぽさが残っている。前世では若くして亡くなったのかもしれない。
と。
ふいに、シュンの脇の地面で、幾何学模様が発生した。見覚えのある魔法だった。
数秒後、その幾何学模様から妻ロニンが姿を現した。ここまでワープしてきたようだ。
「あ……シュンさん」
旦那を見かけたロニンが一瞬顔を緩めるが、しかし数秒後、我に返ったように周囲を見渡す。
「ト、トルフィン見なかった? 剣の打ち合いをしてるって聞いて、それで……」
慌てたようすのロニンに、シュンは肩を竦めてみせた。
「心配するな。ケツ叩いて会場に向かわせたよ」
「そう……。ならよかったけど……」
「それよりロニン、例の件はどうだ」
「…………」
ロニンはしばらくシュンの瞳を見つめ、そして首を横に振った。
「駄目、みたい。《悪魔》たちはこっちの交渉には応じないつもりだと思う」
「そうか……」
シュンはもう一回、ため息をついた。
悪魔――
かつてアグネ湿地帯にてシュンと相対した、人間でもモンスターでもない生き物である。見た目はモンスターのそれに近いが、魔王ロニンの支配下にないことから、理解不能の存在とされてきた。
そんな悪魔らに、最近、変化が訪れ始めたのである。
古来より住み着いてきたアグネ湿地帯を離れ、さらに住処を拡大しているのだ。近隣の街や村を襲い、徐々に行動範囲を広げている。
それを受け、セレスティアはシュンに助けを求めてきた。
――奴らが人間を襲う理由がわからない、と。
シュンはすぐに対策に打って出た。人間の言葉は通じなくても、モンスターと悪魔ならコミュニケーションが通じるかもしれないと思ったからだ。
かくして、ディスト率いるモンスターたちが行動に打って出た。シュンの予想通り、意思の疎通自体は成功した……のだが。
「我々は貴様らの指図など受けぬ」
こう言ってまともに取り合わなかったようだ。魔王ロニンの要求すら、悪魔たちは平気で無視したということになる。
――いずれセレスティアと手を組んで、全面的な戦争になるかもな。
そう思いながら、シュンはロニンを見下ろし、ふっと笑ってみせた。
「ま、暗い話はここまでだ。今日は入学式。ぱぁーっといこうぜ」
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