引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

強くなりすぎて悩むとか中二かよ

 たっぷり数秒間、沈黙が続いた。
 誰もがぽかんと口を開けている。 

 それだけ衝撃的だったのだ。まだ六歳の子どもが、大人をたった一撃で仕留めたことに。しかも、その六歳児が明らかに手を抜いていたことは、誰の目にも明らかであった。

「しょ、勝者……トルフィン選手」
 さすがに動揺したのか、審判も震えた声で判決を下す。

 トルフィンはまた両手を合わせ、場外に落ちたアーレに一礼すると、ちょこちょこと舞台から降りた。アーレは尻餅をついたまましばらく呆然としていたが、やがて周囲の視線に耐えられなくなったのか、とぼとぼと会場から去っていった。

「では次の試合です。トーレ選手と……」

 審判のアナウンスを聞きながら、トルフィンは罪悪感に苛まれていた。
 いささかやりすぎたかもしれない。大人たちのメンツもあるだろうし、次回からはもうちょっと手を抜いたほうがいいだろう。どうやら思った以上に、俺は強くなりすぎてしまったらしい。

「おおおおおおお!」
 別のところで歓声があがった。

 振り返ってみると、リュアが対戦者をノックアウトしているところだった。どうやら彼女も圧勝してしまったらしい。勝ったリュア自身が一番当惑しており、きょろきょろと周囲を見回している。

 想像以上に修行の効果が現れているようだ。トルフィンもリュアも、もはや一般の戦士では太刀打ちできないほどに強くなっている。それはそれで嬉しいが、まだ幼い子どもとして、大人たちのプライドだけは守ってあげなければなるまい。

 そう思いながらトルフィンが視線を戻したとき――

「アルス選手! アルス選手! とどまりなさい!」

 また別の舞台から、審判の怒鳴り声が聞こえた。

 見れば、アルスと呼ばれた選手が、屈強な戦士の首を両手で持ち上げている。
 その光景を見たとき、トルフィンは全身に怖ぞ気が走るのを感じた。
 戦士のほうはだいぶ苦しそうだ。顔がずいぶんと青白い。このままでは――

「アルス選手! 辞めなさい! 殺人は失格ですよ!」
「殺人……? おかしなことを言う」
 ぎゅう、と。
 対戦者の首をさらに強く握り締めながら、アルスは落ち着き払った声を発した。
「この男はまだ二十秒耐えられる。殺しはしない。死を迎えるギリギリまで、存分に苦しんでもらうのだよ」
「し、しかし……!」
「ルールは破っていない。なにか問題があるのか?」

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