引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
なにかが始まっている
「そんな……あの勇者が……」
アルスに関して一番詳しいのはセレスティアだった。クローディア学園の入学式に向かう際、馬車で護衛してもらったことも記憶に新しい。
だからこそ驚きだった。勇者アルスが、対戦相手を死亡寸前まで苦しませたなんて。
「とても信じられない……。彼は不器用ではあったけれど、根は真面目だったはずよ」
「ああ、それは俺も同意する」
と首肯したのはシュン国王であった。彼とても勇者の誠実さは身に沁みてわかっている。さもなくば、ロニンを一方的に痛めつけようとしたあの男を、そのまま生かしてはおかなかったはずだ。
「でも……シュンさん」
ロニンが不安そうな瞳でシュンにすがる。
「きっと……あの人、シュンさんを良くは思ってないよね……」
「ああ。それは間違いねえだろう……な……」
村人(当時)シュンは勇者よりも強かった。それだけでもストレスになっただろうし、シュンは《人間とモンスターの共存》という、史上ありえない偉業を成し遂げてしまった。
そのことはつまり、勇者の居場所をなくしたも同然だ。
唯一魔王を倒せる男だったのに、シュンがその機会を丸ごとかっさらったのだから。
――俺はこんなもの認めない! 認めてなるものか!
数年前、勇者はそう吐き捨てて姿を消した。その後の消息については、セレスティアも把握しきれていないという。
一同がしんと静まりかえるなか、ロニンが沈鬱な声を発した。
「シュンさん……私、嫌な予感がするの……」
「……どうした」
「勇者はシュンさんを憎んでる。もしかしたら、シュンさんの故郷を襲った人物って……」
それは考えないでもなかった。
故郷の遺体は、すべて刃物によって切り裂かれていたのだ。勇者アルスが剣の達人であることも、これと見事に一致する。
だが。
「まだ推測の域を出ていねェ。いまのところはなんとも言えねえな」
「だけど……」
心配そうに見つめてくるロニン。彼女なりに、シュンの心境について配慮してくれているのだろう。
「大丈夫だ。もし勇者がくだらねえこと企んでいたとしても、俺がそうはさせねえ……」
「お、お兄ちゃん……」
「その呼び方。もう辞めるんじゃなかったのか?」
「あ、あうぅ……」
ロニンがたじろいでいる間に、セレスティアが「こほん」と咳払いして話題を変えた。
「村の襲撃で思い出したけれど……、《悪魔》の連中の動きが変わったわ」
「……ほう?」
「最近、王都に近寄ってくることが増えたの。念のために警備を厚くしてるけど、向こうも必要以上には近づいてこない」
「そうか……よくわかんねえな……」
謎はなにも明らかになっていないが、確実になにかが進展している。それに備えて、シュンもセレスティアも、自分の国を守らねばならない。
今日の予選にて、戦士たちは己の無力さを悟ったはずだ。これを機に、さらに鍛錬してくれることに期待するしかあるまい。
そう思いながら、シュンは残りの食事を平らげた。
アルスに関して一番詳しいのはセレスティアだった。クローディア学園の入学式に向かう際、馬車で護衛してもらったことも記憶に新しい。
だからこそ驚きだった。勇者アルスが、対戦相手を死亡寸前まで苦しませたなんて。
「とても信じられない……。彼は不器用ではあったけれど、根は真面目だったはずよ」
「ああ、それは俺も同意する」
と首肯したのはシュン国王であった。彼とても勇者の誠実さは身に沁みてわかっている。さもなくば、ロニンを一方的に痛めつけようとしたあの男を、そのまま生かしてはおかなかったはずだ。
「でも……シュンさん」
ロニンが不安そうな瞳でシュンにすがる。
「きっと……あの人、シュンさんを良くは思ってないよね……」
「ああ。それは間違いねえだろう……な……」
村人(当時)シュンは勇者よりも強かった。それだけでもストレスになっただろうし、シュンは《人間とモンスターの共存》という、史上ありえない偉業を成し遂げてしまった。
そのことはつまり、勇者の居場所をなくしたも同然だ。
唯一魔王を倒せる男だったのに、シュンがその機会を丸ごとかっさらったのだから。
――俺はこんなもの認めない! 認めてなるものか!
数年前、勇者はそう吐き捨てて姿を消した。その後の消息については、セレスティアも把握しきれていないという。
一同がしんと静まりかえるなか、ロニンが沈鬱な声を発した。
「シュンさん……私、嫌な予感がするの……」
「……どうした」
「勇者はシュンさんを憎んでる。もしかしたら、シュンさんの故郷を襲った人物って……」
それは考えないでもなかった。
故郷の遺体は、すべて刃物によって切り裂かれていたのだ。勇者アルスが剣の達人であることも、これと見事に一致する。
だが。
「まだ推測の域を出ていねェ。いまのところはなんとも言えねえな」
「だけど……」
心配そうに見つめてくるロニン。彼女なりに、シュンの心境について配慮してくれているのだろう。
「大丈夫だ。もし勇者がくだらねえこと企んでいたとしても、俺がそうはさせねえ……」
「お、お兄ちゃん……」
「その呼び方。もう辞めるんじゃなかったのか?」
「あ、あうぅ……」
ロニンがたじろいでいる間に、セレスティアが「こほん」と咳払いして話題を変えた。
「村の襲撃で思い出したけれど……、《悪魔》の連中の動きが変わったわ」
「……ほう?」
「最近、王都に近寄ってくることが増えたの。念のために警備を厚くしてるけど、向こうも必要以上には近づいてこない」
「そうか……よくわかんねえな……」
謎はなにも明らかになっていないが、確実になにかが進展している。それに備えて、シュンもセレスティアも、自分の国を守らねばならない。
今日の予選にて、戦士たちは己の無力さを悟ったはずだ。これを機に、さらに鍛錬してくれることに期待するしかあるまい。
そう思いながら、シュンは残りの食事を平らげた。
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