引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
一回戦 2
トルフィンたちが姿を見せると、観客たちの歓声がいっそう強くなった。トルフィンはもちろん、相手の魔術師もそこそこ名の通った実力者なのだ。興奮するのも無理はない。
「あれが……トルフィン様……」
「シュン国王に似て、ものすごく強いんだとか……」
「きゃートルフィン様ー!」
女の声援にぎょっとした。振り向くと、シュロン学園の女生徒たちが黄色い声をあげている。手の込んだことに、「トルフィン王子」と書かれた垂れ幕まで作ってくれたようだ。
乾いた笑みを浮かべつつ、トルフィンは手を振って応じる。するとまた、キャーなどという声援が上がる。
「ずいぶん人気者ですな。トルフィン殿」
「僕が王子だからですよ。みんな玉の輿に乗りたいんだ」
「……はて、私にはそれだけじゃないように思えますがね」
「さあ、なんのことだかさっぱり」
肩をすくめるトルフィンに、魔術師も苦い笑いを浮かべる。
ちらりと視線をずらすと、ある一カ所のみ、一般席からは隔絶された観客席があった。そこにシュンとロニン、セレスティアが座っている。ロニンがぶんぶん両手を振ってきているので、トルフィンも手を振り返した。
「さあ、では選手の紹介を致しましょう! まずはご存知、トルフィン選手です!」 
またしてもキャーという声援。
「トルフィン選手はシュロン国の王子であり、六歳児ながらも予選を勝ち抜きました! しかもほぼ一発ノックアウト! これは期待が持てそうです!」
トルフィン様ー! と、また女児たちが叫んでくる。こんなに好かれるのは正直悪い気がしないが、すこし恥ずかしい。
「続いて、こちらはレクス選手です! 現在、セレスティア王女様の護衛を勤めておられ、実力は確かです!」
審判の紹介と同時に、緑のローブを着た人間たちが盛大な拍手をかましてきた。しかもかなりの人数だ。やはりこのレクスという男、魔術師のなかでも有名人に違いあるまい。
「さあ、両者かまえー!」
審判の声が響くや、トルフィンは気を引き締め、戦闘の構えを取った。レクスもやや腰を落とし、こちらからの攻撃に備えている。
ドン、ドン、と聞こえてくるのは、ゴングの音だろうか。
なんでもいい。いまはレクスの動きに注意していたい。
「はじめー!」
審判の声と同時に、ガーン! という金属音が鳴り響いた。試合開始の合図だ。
トルフィンは全力で地を蹴った。
地面に足をつけず、ほぼ飛んでいるに等しいスピード。視界がみるみるうちに流れていく。
そのまま抜きざまの一撃を、レクスに見舞う。
が――
「……!?」
攻撃が命中するギリギリのところで、トルフィンは引かざるをえなかった。細い水流が、いくつもの柱となってレクスを包みだしたからだ。初めて見る技だが、触れればただでは済まないことが容易に想像できる。
「こ、これは……?」
目を見開くトルフィンに、レクスは片頬を吊り上げて答えた。
「ウォーター・ベール。その名の通り水の壁です。攻防一体のこの技……トルフィン殿は突破できますかな?」
「あれが……トルフィン様……」
「シュン国王に似て、ものすごく強いんだとか……」
「きゃートルフィン様ー!」
女の声援にぎょっとした。振り向くと、シュロン学園の女生徒たちが黄色い声をあげている。手の込んだことに、「トルフィン王子」と書かれた垂れ幕まで作ってくれたようだ。
乾いた笑みを浮かべつつ、トルフィンは手を振って応じる。するとまた、キャーなどという声援が上がる。
「ずいぶん人気者ですな。トルフィン殿」
「僕が王子だからですよ。みんな玉の輿に乗りたいんだ」
「……はて、私にはそれだけじゃないように思えますがね」
「さあ、なんのことだかさっぱり」
肩をすくめるトルフィンに、魔術師も苦い笑いを浮かべる。
ちらりと視線をずらすと、ある一カ所のみ、一般席からは隔絶された観客席があった。そこにシュンとロニン、セレスティアが座っている。ロニンがぶんぶん両手を振ってきているので、トルフィンも手を振り返した。
「さあ、では選手の紹介を致しましょう! まずはご存知、トルフィン選手です!」 
またしてもキャーという声援。
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トルフィン様ー! と、また女児たちが叫んでくる。こんなに好かれるのは正直悪い気がしないが、すこし恥ずかしい。
「続いて、こちらはレクス選手です! 現在、セレスティア王女様の護衛を勤めておられ、実力は確かです!」
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「さあ、両者かまえー!」
審判の声が響くや、トルフィンは気を引き締め、戦闘の構えを取った。レクスもやや腰を落とし、こちらからの攻撃に備えている。
ドン、ドン、と聞こえてくるのは、ゴングの音だろうか。
なんでもいい。いまはレクスの動きに注意していたい。
「はじめー!」
審判の声と同時に、ガーン! という金属音が鳴り響いた。試合開始の合図だ。
トルフィンは全力で地を蹴った。
地面に足をつけず、ほぼ飛んでいるに等しいスピード。視界がみるみるうちに流れていく。
そのまま抜きざまの一撃を、レクスに見舞う。
が――
「……!?」
攻撃が命中するギリギリのところで、トルフィンは引かざるをえなかった。細い水流が、いくつもの柱となってレクスを包みだしたからだ。初めて見る技だが、触れればただでは済まないことが容易に想像できる。
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目を見開くトルフィンに、レクスは片頬を吊り上げて答えた。
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