引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
必殺技
――すごい戦いだ。
控え室で待機しているトルフィンは、ぽかんと口を開けながら、ぼんやりとそう思った。
これまでの戦いとは一味も二味も違う。目にも止まらぬ剣の応酬、常人では受け止めることもできない剣戟……
そしてその感動は、トルフィンのみならず、ほとんどの観客が感じ取っていた。審判ですら、自身の立場を忘れて試合に見入っている。
一番興奮しているのはゴルムだった。「リュア! あいらぶリューア!」などとしきりに叫んでおり、近くにいるシュンが引き気味にそれを見つめている。
この大会、見にきてよかったと――誰もが思った瞬間だった。
アルスは自分の左腕をじろりと眺めていた。さきほどのやり合いの最中、リュアの剣先がわずかながら掠めたのである。垂れている血を無表情で舐めながら、アルスはリュアに視線を戻した。
「正直侮っていたよ。まさか貴様のような小娘が、これほどの実力を持っているとはね」
「あ、当たり前だよ。トルフィンくんと頑張って鍛えたし……」
「はっ。トルフィン王子か。……では、これはどうかな?」
アルスは左手を剣の柄に添えると、そのまま滑るように刀身を撫でていった。シュイイン……という音とともに、剣が漆黒に染まっていく。
「俺の昔からの必殺技、黒真剣……受けてみるがいい」
トルフィンはぴくりと眉を動かした。
黒真剣? あいつの必殺技って、そんな名前だったか? シュンの昔話を聞いている限り、たぶん違うはずなのだが……
一方、リュアはごくりと息を呑むと、改めて剣を構え直した。
アルス。
彼が強者と崇められ、勇者とまで呼ばれるようになった理由は、その剣の腕だけではない。剣と同時に魔法をも達人級に使いこなすところから、人々からは救世主として尊敬されてきた。もちろん、シュン&ロニンもどちらも使いこなすが、この二人は例外である。リュアもそれを知っているから警戒を怠らない。
「いくぞ!」
大声を張るや、アルスは剣をそのまま斜めに振り払った。瞬間、斬撃そのものが具体化し、漆黒の波動となってリュアに襲いかかる。その禍々しさたるや、さながら死神の鎌のよう。触れたが最後、生きては帰れない。
リュアも黒真剣の危険さを察知した。まともに喰らえば自分が死ぬことも。
だが、リュアとてずぶの素人ではない。
修行の最中は、ずっとトルフィンの《魔法の的》となってきた。本来の目的ではないが、知らず知らずのうちに、魔法への対処法をも身につけていた。
「せいいいいっ!」
気合いのこもった発声とともに、リュアは波動そのものを切断した。
ジュシャア! という大音響とともに黒真剣は縦に切り裂かれ、両端の部分だけが空しく宙を駆けていった。黒真剣の残滓は途中まで宙を走ったものの、徐々に薄れていき、やがて消えた。
控え室で待機しているトルフィンは、ぽかんと口を開けながら、ぼんやりとそう思った。
これまでの戦いとは一味も二味も違う。目にも止まらぬ剣の応酬、常人では受け止めることもできない剣戟……
そしてその感動は、トルフィンのみならず、ほとんどの観客が感じ取っていた。審判ですら、自身の立場を忘れて試合に見入っている。
一番興奮しているのはゴルムだった。「リュア! あいらぶリューア!」などとしきりに叫んでおり、近くにいるシュンが引き気味にそれを見つめている。
この大会、見にきてよかったと――誰もが思った瞬間だった。
アルスは自分の左腕をじろりと眺めていた。さきほどのやり合いの最中、リュアの剣先がわずかながら掠めたのである。垂れている血を無表情で舐めながら、アルスはリュアに視線を戻した。
「正直侮っていたよ。まさか貴様のような小娘が、これほどの実力を持っているとはね」
「あ、当たり前だよ。トルフィンくんと頑張って鍛えたし……」
「はっ。トルフィン王子か。……では、これはどうかな?」
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トルフィンはぴくりと眉を動かした。
黒真剣? あいつの必殺技って、そんな名前だったか? シュンの昔話を聞いている限り、たぶん違うはずなのだが……
一方、リュアはごくりと息を呑むと、改めて剣を構え直した。
アルス。
彼が強者と崇められ、勇者とまで呼ばれるようになった理由は、その剣の腕だけではない。剣と同時に魔法をも達人級に使いこなすところから、人々からは救世主として尊敬されてきた。もちろん、シュン&ロニンもどちらも使いこなすが、この二人は例外である。リュアもそれを知っているから警戒を怠らない。
「いくぞ!」
大声を張るや、アルスは剣をそのまま斜めに振り払った。瞬間、斬撃そのものが具体化し、漆黒の波動となってリュアに襲いかかる。その禍々しさたるや、さながら死神の鎌のよう。触れたが最後、生きては帰れない。
リュアも黒真剣の危険さを察知した。まともに喰らえば自分が死ぬことも。
だが、リュアとてずぶの素人ではない。
修行の最中は、ずっとトルフィンの《魔法の的》となってきた。本来の目的ではないが、知らず知らずのうちに、魔法への対処法をも身につけていた。
「せいいいいっ!」
気合いのこもった発声とともに、リュアは波動そのものを切断した。
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