引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
深まっていく謎
「……ちっ」
アルスは不愉快そうに服を叩く。いまの魔法は完全に予想外だったのだろう、腕の部分がただれてしまっている。
――なんとか生き延びられたか。
トルフィンは大きく息を吐き、そして再び戦闘に意識を集中した。いまのところはなんとか戦えている。だが素のステータスで負けている以上、それもいつまで続くかわからない。
「ふん。油断したか」
アルスの表情が若干険しさを増した。さっきまでの余裕っぷりはもう窺えない。
「いい気になるなよ小僧。この焼けた服の分は仕返しさせてもらう」
「……その前にひとつ聞かせてくれ。おまえは元勇者だろ? なんで人類滅亡なんて企むんだ」
そこでアルスはうんざりしたように息を吐いた。
「またその質問か。何度も言っているだろう。答える義理はないとな」
「違う! 本当のことを言え!」
いきなり声を荒らげたトルフィンに、アルスは
「なんだと?」
と眉をひくつかせた。
「おまえはただ、《答えられない》だけだ! なぜ自分がこんなに強くなっているのか、どうして人類を滅ぼそうとしているのか……本当はわからないんだ!」
アルスの表情が一瞬だけ揺らぐ。
「……さあな。なにを言っているんだ貴様は」
「答えてみろ。おまえの必殺技は本当に黒真剣なのか? 他の技じゃなかったのか?」
「…………」
「なのに、父上への恨みだけはリアルに覚えているようだな。答えろ。これはいったいどういうことだ!?」
「やかましい!」
唐突にアルスが激しく顔を歪め、騒いだ。
「さっきも言ったろう! 俺の目的は村人に復讐し、人類を滅ぼすことだ! それ以外はどうでもよい!」
「そんなことないでしょう」
ふいに会話に割り入ってくる者がいた。
いつの間にかシュンの隣に並んでいた王女セレスティアが、胸元に手を添えながら言った。
「あなたは不器用なれど、誠実で真っ直ぐな人だった。人類を滅ぼしたいだなんて……そんなことを言う人ではなかった!」
しかしアルスの返答は冷ややかだった。ちらりとセレスティアを一瞥すると、たった一言、
「誰だ貴様は」
と言い放った。
これにはセレスティアも、そしてシュンも驚愕せざるをえなかった。目を丸くし、アルスに問いかける。
「……私のことを忘れたのですか? 昔、何度も護衛してくれたではありませんか!」
「……馬鹿馬鹿しい。俺は過去に興味がない」
嘘だ――とトルフィンは思った。
アルスは演技が下手だ。さっきから動揺が顔に出ている。そこのところも、セレスティアの言う《不器用なれど誠実な人》にぴたりと当てはまる。
この戦い……アルスを倒しただけでは終わりそうもない。
「さあいくぞ勇者! ステータスの差なんか、俺がひっくり返してやる!」
アルスは不愉快そうに服を叩く。いまの魔法は完全に予想外だったのだろう、腕の部分がただれてしまっている。
――なんとか生き延びられたか。
トルフィンは大きく息を吐き、そして再び戦闘に意識を集中した。いまのところはなんとか戦えている。だが素のステータスで負けている以上、それもいつまで続くかわからない。
「ふん。油断したか」
アルスの表情が若干険しさを増した。さっきまでの余裕っぷりはもう窺えない。
「いい気になるなよ小僧。この焼けた服の分は仕返しさせてもらう」
「……その前にひとつ聞かせてくれ。おまえは元勇者だろ? なんで人類滅亡なんて企むんだ」
そこでアルスはうんざりしたように息を吐いた。
「またその質問か。何度も言っているだろう。答える義理はないとな」
「違う! 本当のことを言え!」
いきなり声を荒らげたトルフィンに、アルスは
「なんだと?」
と眉をひくつかせた。
「おまえはただ、《答えられない》だけだ! なぜ自分がこんなに強くなっているのか、どうして人類を滅ぼそうとしているのか……本当はわからないんだ!」
アルスの表情が一瞬だけ揺らぐ。
「……さあな。なにを言っているんだ貴様は」
「答えてみろ。おまえの必殺技は本当に黒真剣なのか? 他の技じゃなかったのか?」
「…………」
「なのに、父上への恨みだけはリアルに覚えているようだな。答えろ。これはいったいどういうことだ!?」
「やかましい!」
唐突にアルスが激しく顔を歪め、騒いだ。
「さっきも言ったろう! 俺の目的は村人に復讐し、人類を滅ぼすことだ! それ以外はどうでもよい!」
「そんなことないでしょう」
ふいに会話に割り入ってくる者がいた。
いつの間にかシュンの隣に並んでいた王女セレスティアが、胸元に手を添えながら言った。
「あなたは不器用なれど、誠実で真っ直ぐな人だった。人類を滅ぼしたいだなんて……そんなことを言う人ではなかった!」
しかしアルスの返答は冷ややかだった。ちらりとセレスティアを一瞥すると、たった一言、
「誰だ貴様は」
と言い放った。
これにはセレスティアも、そしてシュンも驚愕せざるをえなかった。目を丸くし、アルスに問いかける。
「……私のことを忘れたのですか? 昔、何度も護衛してくれたではありませんか!」
「……馬鹿馬鹿しい。俺は過去に興味がない」
嘘だ――とトルフィンは思った。
アルスは演技が下手だ。さっきから動揺が顔に出ている。そこのところも、セレスティアの言う《不器用なれど誠実な人》にぴたりと当てはまる。
この戦い……アルスを倒しただけでは終わりそうもない。
「さあいくぞ勇者! ステータスの差なんか、俺がひっくり返してやる!」
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