引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュンの部 【アリアンヌ】
「君は……国王シュン君かな」
振り向かずにディストは言った。世界最強の男に背後を取られてもなお、ディストの余裕っぷりは消えなかった。
「話は聞いてたぜ。てめぇ……いままでなにもかも隠してやがったな」
「当然。箱のなかで泳ぐ玩具たちを眺める――これほど楽しいことはない。だが君たちはいささか繁栄しすぎたよ」
そう言ってディストは指をぱちんと鳴らす。
瞬間、シュンは大きく目を見開いた。
ほんの一瞬だけ、全身から力が抜けたからだ。ディストの肩にかけていた腕がだらりと落ちる。
ディストはなおも背を向けたまま数歩歩くと、シュンからある程度離れたところで振り向き、にたりと笑った。
「驚いただろう? これが私の力さ」
「……ちっ」
シュンは自身の右手をさすりながら舌打ちした。もう元に戻ったようだが、あの一瞬だけ、本当に身体が固まってしまった。
あれが奴の力だ。
他人のステータスをいじくる――奴がそうと望めば、世界の生物は瞬時にして消えてなくなる。シュンはまさに、あのときだけ物理攻撃力を「1」にされたのだ。
「シュン君よ。たしかに君は世界最強の男だ。この世界には、純粋なステータスで君に適う者はいない。……だが、わかるだろう? 私にとり、ステータスなど仮初めの強さでしかありえない」
物理攻撃力と物理防御力を差し引いた分析だけ、HPが減る。そしてHPが0になった瞬間、その者の命が途絶える。本来はそうしたプロセスを経て《戦い》が終わる。
だが、ディストは違う。
奴はステータスそのものに干渉できる。
いくらシュンが最強の強さをもっっていたとしても、それはまるで無意味だと――ディストは言っているのだ。
「さあ、見るがいい! 私の力を! 世界を創りし神の力を!」
ディストは高々と叫び、左右に両腕を広げてみせた。
瞬間――
世界は瞬時にして、《地獄》へと変貌した。
周辺を歩いていた者たちが、悲鳴をあげて倒れ込む。わいわいはしゃいでいた子どもたちすら、両膝をつき、苦しそうに泣き始める。老若男女問わず、シュンとロニン以外のすべての者が、倒れ、伏せた。
シュンは妻をぎっしりと片腕で守りつつ、怒鳴った。
「てめえ……いったいなにをした!」
「近くの者たちをHP1にしたのだよ。ふふ……さぞかし苦しかろう。くくく……あーはっはっは!」
「てめえ……!」
ぎりぎりと右拳を握りしめ、シュンは歯を食いしばった。
いますぐにでもあの外道野郎をぶん殴ってやりたい。だが奴のことだ、自身のHPをすぐにでも全快させることもできれば、シュンのステータスをすべて1にすることもできる。下手に突っかかってピンチになるのはシュンのほうだ。
「お、お兄ちゃん……怖いよ……ど、どどどうしよう……」
涙目で見上げてくるロニン。
いつもなら圧倒的なステータス差で蹴りをつけているものが、今回は通用しない。いったいどうすれば……
ディストは醜悪な笑みを口の端に刻むと、再びシュンたちに右腕を突きだした。
「さあ、どう抵抗する? なんなら、君たちのHPを先に0にしてもいいんだよ……」
「――そうは、させません……!」
ふいに、何者かがシュンとディストの間に割り入った。
金髪の長い髪。大人びた顔つきに、頑丈そうな銀の鎧。
あまりに一瞬のことで、シュンは《彼女》の顔がよく見えなかった。
だがディストは《彼女》の姿を見るや、一気に表情を歪ませた。
「貴様は……悪魔アリアンヌ!」
――悪魔、だと……?
シュンが目を見開いている間にも、アリアンヌはシュンとロニンの手を取った。
「アグネ湿地帯に転移しますよ! しっかり捕まっててください!」
振り向かずにディストは言った。世界最強の男に背後を取られてもなお、ディストの余裕っぷりは消えなかった。
「話は聞いてたぜ。てめぇ……いままでなにもかも隠してやがったな」
「当然。箱のなかで泳ぐ玩具たちを眺める――これほど楽しいことはない。だが君たちはいささか繁栄しすぎたよ」
そう言ってディストは指をぱちんと鳴らす。
瞬間、シュンは大きく目を見開いた。
ほんの一瞬だけ、全身から力が抜けたからだ。ディストの肩にかけていた腕がだらりと落ちる。
ディストはなおも背を向けたまま数歩歩くと、シュンからある程度離れたところで振り向き、にたりと笑った。
「驚いただろう? これが私の力さ」
「……ちっ」
シュンは自身の右手をさすりながら舌打ちした。もう元に戻ったようだが、あの一瞬だけ、本当に身体が固まってしまった。
あれが奴の力だ。
他人のステータスをいじくる――奴がそうと望めば、世界の生物は瞬時にして消えてなくなる。シュンはまさに、あのときだけ物理攻撃力を「1」にされたのだ。
「シュン君よ。たしかに君は世界最強の男だ。この世界には、純粋なステータスで君に適う者はいない。……だが、わかるだろう? 私にとり、ステータスなど仮初めの強さでしかありえない」
物理攻撃力と物理防御力を差し引いた分析だけ、HPが減る。そしてHPが0になった瞬間、その者の命が途絶える。本来はそうしたプロセスを経て《戦い》が終わる。
だが、ディストは違う。
奴はステータスそのものに干渉できる。
いくらシュンが最強の強さをもっっていたとしても、それはまるで無意味だと――ディストは言っているのだ。
「さあ、見るがいい! 私の力を! 世界を創りし神の力を!」
ディストは高々と叫び、左右に両腕を広げてみせた。
瞬間――
世界は瞬時にして、《地獄》へと変貌した。
周辺を歩いていた者たちが、悲鳴をあげて倒れ込む。わいわいはしゃいでいた子どもたちすら、両膝をつき、苦しそうに泣き始める。老若男女問わず、シュンとロニン以外のすべての者が、倒れ、伏せた。
シュンは妻をぎっしりと片腕で守りつつ、怒鳴った。
「てめえ……いったいなにをした!」
「近くの者たちをHP1にしたのだよ。ふふ……さぞかし苦しかろう。くくく……あーはっはっは!」
「てめえ……!」
ぎりぎりと右拳を握りしめ、シュンは歯を食いしばった。
いますぐにでもあの外道野郎をぶん殴ってやりたい。だが奴のことだ、自身のHPをすぐにでも全快させることもできれば、シュンのステータスをすべて1にすることもできる。下手に突っかかってピンチになるのはシュンのほうだ。
「お、お兄ちゃん……怖いよ……ど、どどどうしよう……」
涙目で見上げてくるロニン。
いつもなら圧倒的なステータス差で蹴りをつけているものが、今回は通用しない。いったいどうすれば……
ディストは醜悪な笑みを口の端に刻むと、再びシュンたちに右腕を突きだした。
「さあ、どう抵抗する? なんなら、君たちのHPを先に0にしてもいいんだよ……」
「――そうは、させません……!」
ふいに、何者かがシュンとディストの間に割り入った。
金髪の長い髪。大人びた顔つきに、頑丈そうな銀の鎧。
あまりに一瞬のことで、シュンは《彼女》の顔がよく見えなかった。
だがディストは《彼女》の姿を見るや、一気に表情を歪ませた。
「貴様は……悪魔アリアンヌ!」
――悪魔、だと……?
シュンが目を見開いている間にも、アリアンヌはシュンとロニンの手を取った。
「アグネ湿地帯に転移しますよ! しっかり捕まっててください!」
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