引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュンの部 【神の食事】
神の食事……
いったいどんなものかとシュンは思ったが、結論から言うと、野菜中心の食事であった。
ただし、その見た目は異質極まるものだ。
虹色に発光している怪しげな葉っぱ、虫に食われたのか穴だらけの山菜。正直あまり食欲をそそらなかったものの、たしかに一口頬張るごとに自身の内側でなにかが高まっていくのを感じた。
それらの野菜を、アリアンヌとロニンは実に上手に調理した。こんがり焼いたパンとのサンドイッチや、特製のドレッシングを絡めたりして、一同は不思議な食事を堪能した。なぜパンやドレッシングの用意があるのか不思議だったが、実はこっそり湿地帯を抜け出して、人間界から調達してきたのだという。
「うめえ。うめえじゃねえか」
サンドイッチを大口に噛み砕きながら、シュンは素直な感想を述べた。
「アグネ湿地帯で長い間育ててきた野菜ですから。味も品質ももちろんピカイチです」
そう語るアリアンヌは、ちょっとだけ鼻を伸ばしているように見えた。
「ぴきー」
「うきゃー」
五十三体の悪魔たちも、大テーブルに集まり、それぞれの《鳴き声》を発しながら食事を口に取り込み続ける。シュンに彼らの言葉はわからないが、みんな喜んでいることだけは何となくわかった。
「そういやよ」
シュンはごくんとサンドイッチを飲み込んでから、真向かいに座るアリアンヌに問いかけた。
「あんただけ言葉も喋れるし、見た目もフツーだよな。なんでだ?」
「…………」
「ぴきー、ぴきー」
黙りこくるアリアンヌの代わりに、その隣に座る巨大蜘蛛が解読不能の声で答える。
が、もちろん意味はわからない。
脇のロニンに目を向けると、魔王も野菜を呑み込んでから、
「それは聞いてはならないことですわシュン殿、と言ってるよ」
と翻訳した。
聞いてはならない……なにか事情があるのだろうか。
数秒後、アリアンヌは変わらぬ真顔でぼそりと言った。
「私の事情はその内わかります。ですが……きっと貴方たちがそれを理解したとき、私はすでにこの世を去っているでしょう」
「……そうか」
よくわからないが、シュンはとりあえず頷いておく。
「けど、この世から去るなんてさせねえぜ。みんなでディストを倒すんだ」
「……ありがとう。優しいんですね」
このとき、初めて。
ほんの一瞬だけ、アリアンヌの顔にハッキリとした感情が浮かんだ――ような気がした。
「ま、なんにしてもこのままディストを放ってはおけねえ。早いとこ強くなって、奴をぶっ飛ばさないとな」
「そうですね」
いつもの真顔に戻ったアリアンヌが、ぱくりと野菜を食べてから言う。
「あなたたちの成長スピードは本当にすごいと思います。このままいけば、一週間で創造神とも張り合えるようになるでしょう」
「一週間……」
シュンにとって長すぎることこの上ないが、仕方あるまい。アリアンヌは当初、修業に数年はかかると言っていた。それが一週間に短縮されているのだから、これで文句を言ってはなるまい。
それまで頑張ってくれよ、トルフィン……
シュンは空を見上げ、どこかで戦っている息子へと思考を飛翔させた。
いったいどんなものかとシュンは思ったが、結論から言うと、野菜中心の食事であった。
ただし、その見た目は異質極まるものだ。
虹色に発光している怪しげな葉っぱ、虫に食われたのか穴だらけの山菜。正直あまり食欲をそそらなかったものの、たしかに一口頬張るごとに自身の内側でなにかが高まっていくのを感じた。
それらの野菜を、アリアンヌとロニンは実に上手に調理した。こんがり焼いたパンとのサンドイッチや、特製のドレッシングを絡めたりして、一同は不思議な食事を堪能した。なぜパンやドレッシングの用意があるのか不思議だったが、実はこっそり湿地帯を抜け出して、人間界から調達してきたのだという。
「うめえ。うめえじゃねえか」
サンドイッチを大口に噛み砕きながら、シュンは素直な感想を述べた。
「アグネ湿地帯で長い間育ててきた野菜ですから。味も品質ももちろんピカイチです」
そう語るアリアンヌは、ちょっとだけ鼻を伸ばしているように見えた。
「ぴきー」
「うきゃー」
五十三体の悪魔たちも、大テーブルに集まり、それぞれの《鳴き声》を発しながら食事を口に取り込み続ける。シュンに彼らの言葉はわからないが、みんな喜んでいることだけは何となくわかった。
「そういやよ」
シュンはごくんとサンドイッチを飲み込んでから、真向かいに座るアリアンヌに問いかけた。
「あんただけ言葉も喋れるし、見た目もフツーだよな。なんでだ?」
「…………」
「ぴきー、ぴきー」
黙りこくるアリアンヌの代わりに、その隣に座る巨大蜘蛛が解読不能の声で答える。
が、もちろん意味はわからない。
脇のロニンに目を向けると、魔王も野菜を呑み込んでから、
「それは聞いてはならないことですわシュン殿、と言ってるよ」
と翻訳した。
聞いてはならない……なにか事情があるのだろうか。
数秒後、アリアンヌは変わらぬ真顔でぼそりと言った。
「私の事情はその内わかります。ですが……きっと貴方たちがそれを理解したとき、私はすでにこの世を去っているでしょう」
「……そうか」
よくわからないが、シュンはとりあえず頷いておく。
「けど、この世から去るなんてさせねえぜ。みんなでディストを倒すんだ」
「……ありがとう。優しいんですね」
このとき、初めて。
ほんの一瞬だけ、アリアンヌの顔にハッキリとした感情が浮かんだ――ような気がした。
「ま、なんにしてもこのままディストを放ってはおけねえ。早いとこ強くなって、奴をぶっ飛ばさないとな」
「そうですね」
いつもの真顔に戻ったアリアンヌが、ぱくりと野菜を食べてから言う。
「あなたたちの成長スピードは本当にすごいと思います。このままいけば、一週間で創造神とも張り合えるようになるでしょう」
「一週間……」
シュンにとって長すぎることこの上ないが、仕方あるまい。アリアンヌは当初、修業に数年はかかると言っていた。それが一週間に短縮されているのだから、これで文句を言ってはなるまい。
それまで頑張ってくれよ、トルフィン……
シュンは空を見上げ、どこかで戦っている息子へと思考を飛翔させた。
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